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赤道反流上フロートのコンビナート化

本文中アンダーラインを引いてあるところは出典を明らかにしたり、詳細な内容や関連事項の説明をするために外部にリンクしていることを示しています。ご利用ください。

赤道反流上の300㎞×20㎞(6,000km2 ※茨城県の面積とほぼ同じ)という広大な面積を想定するフロートには太陽光発電やH2製造だけでない多くの利用法があり、それらの利用法を相互に連携させることで、フロートの機能を効率化すると共に多くの可能性が生まれます。                                繰り返し述べているように、赤道反流上のフロートには(完成すれば)無料・無限の太陽光と太陽熱そして海水といった自然環境に加えて、それらを利用して得られる無料無制限の電力、H2がインフラとしてあります。                  赤道反流上のフロートで得られる太陽光のエネルギーはソーラーパネルで電力に姿を変え、更に主に太陽熱で淡水化した海水を、電気分解を通じてH2とO2にしてH2を利用可能なエネルギーとします。しかし、そこから先が問題です。いくらローコストの電力が得られても、それを陸上に輸送しエネルギー原料とするためには赤道から需要地までH2を輸送する必要があります。 人類が消費しているエネルギーは膨大です。本構想のフロートがフル稼働すれば年間4000万トン以上のH2を生産できますが、それとて中国の化石燃料消費量をエネルギー換算すれば、その20~30%を置き換えることができるに過ぎません。

さて、年間4千万トンのH2が生産できる態勢が出来たとして、その4千万トンは(仮定では)日本や中国の沿岸部に運ばなければなりません。
現在、H2の輸送方法については下記のような手段が考えられており、
1)2)については一部実用化されようとしています。                       1)H2を液化して専用タンカーで運ぶ                2)フロートエリア内でH2を溶解できるトルエンにH2を化合させ、有機ハイドライド(MCHメタシクロヘキサン)にした上で、コンテナー船で需要地まで輸送し、オンサイトで脱水素をして利用に供する。         ただし、特に2)については幅広い用途が期待されるものの、その特性から考えて多数の拠点での少量利用に向いており、発電燃料として少数の拠点で大量に消費するのには不向きです。                  本構想ではフロートからのH2輸送について、一部に手段2)を利用するとしていますが、これはフロートに下記3)4)のシステムが稼動する以前のH2の取敢えずの輸送手段として発電燃料以外の用途を考えているものです。

本構想においては、フロートからのH2大量輸送は下記3)及び4)を実用化することによって行います。

                                                                 3)水素キャリアとしての合成メタンガス               フロートエリアでふんだんに得られる熱エネルギーを利用し、H2とCO2をサバティエ反応により合成してカーボンニュートラルな再生メタンガスCH4を作り、それをLNGタンカーで需要地まで輸送する。この場合、LNGの配給インフラをそのまま使えるという利点があります。LNGを産地から運ぶ場合との相違点はフロートでのCH4合成に必要なCO2の一部をLNGタンカーで運べるため、コストを増大させることなくCO2を削減できることです。    詳細はリンクページでごらんください。

4)水素キャリアとしてのアンモニア                3)と同様にフロートエリアでふんだんに得られる熱エネルギーを利用し、ハーバーボッシュ法によりH2と大気中のN2を反応させてアンモニアNH3を作り、それをNH3タンカーで需要地まで輸送する。           詳細は下記ページでごらんください。

CO2はフロートからメタンガスやアンモニアを運ぶタンカーの復路(陸上から赤道フロートまで)を利用して運搬することができます。アンモニアを作るのにCO2は必要ありませんが、メタンガスを合成するのに必要なCO2を冷却しドライアイスにしてメタンガスタンカーで運ぼうとしてもCO2の方が圧倒的に重いために、重量がメタンガスの3倍近くになってしまいます。アンモニアタンカーの復路でもCO2を運ぶようにすればメタンガスを作るのに不足するCO2の埋め合わせに利用することができます。                            ただ、CO2の回収と貯蔵はいろいろ言われている割にはなかなか具体化していません。ですから、CO2回収を進めるには天然ガス(LNG)火力発電所などが排出するCO2を回収して港まで運び、停泊するタンカーに積み込むまでの設備一式と作業とそれらをカバーする費用が必要になります。LNG火力発電所であれば、その辺りに既存のインフラを利用できます。従来のLNGの代わりに合成メタンを燃料とすれば、燃焼後の排ガスにSOxやNOxは含まれませんから、CO2の回収に手間が省け、CO2をこれ以上増やさないCO2循環が成立します。フロートではほとんど無制限に、しかも簡単にCO2を貯蔵することが出来ます。(赤道反流フロートを利用した10億㌧ 単位のCO2水中貯蔵と再利用)                           また、石炭火力発電所も排出するCO2や硫黄酸化物、窒素酸化物などを回収できることを前提にすれば、自然エネルギー発電と同じ立場に立つことができます。自然エネルギー発電に負けない「CO2を排出しない」石炭火力発電所

現状では、石炭火力発電所などからCO2を経済的に回収する技術は未だ確立していないので、再生メタン製造に必要なCO2はフロート上で直接大気中から採取することになるかと思われます。その場合のCO2は排出原因がはっきりしないので、「産廃」として費用を請求する相手がいなくなってしまい、フロート事業としては経営的に痛手になってしまう恐れがありますが、実際のCO2調達コストとしては運賃が皆無ですからどちらが有利かは不明です。

水素キャリアとしてメタンからプロパンを作り運搬する方法もあります。プロパンは重量単位あたりの熱量もメタンより高く、その分重量あたりのエネルギーの輸送単価を下げることになります。液化温度もメタンよりずっと高くなる(-42℃、常温でも8気圧で液化する)ので扱い易いということもあります。プロパンの主な用途は燃料です。都市ガスの主成分はメタンですが、プロパンが添加されているそうです。もちろん家庭用などではボンベに充填して直接燃焼させることもできます。

==以下「日本LPガス協会 グリーンLPG研究会資料より引用==     メタネーションの欠点はメタンしか出来ないことであり、メタンは他の燃料との混和なく 100%で使われることは少ない。都市ガス⽤途でも LP ガスを熱量調整で使うことが必要である。
プロパン、ブタンはメタノール/エタノールを経由してでも、エチレン/プロピレンからでもプロパン、ブタンの様な C3、C4 を作ることも出来るが、高付加価値なものから低付加価値のものを作ることには抵抗がある。二酸化炭素を分解して得られた一酸化炭素をと水素から FT 合成で作るという可能性もある。FT合成資料2<従来の定説を覆す新規なFT合成触媒>
FT 合成も古い技術であり第一次世界大戦に開発され、メタンから WAX まで合成可能な反応であるが、重合反応であるだけに炭化水素を特定し、選択的に作るのはむつかしく、軽油を選択的に合成できるのも 35〜40%である。 プロパン、ブタンを作ろうとしても選択性は連鎖成⻑確率を 0.3 にする必要があり、メタンも同時に出来てしまう。
FT 法は二酸化炭素やバイオマスからの合成で再エネとして様々な炭化水素が作れる利点はあるものの、欠点は採算をとるためには大規模な設備投資が必要となることである。==引用終わり==

5)CO2の水中貯蔵                         フロートではCO2は活用できる資源になります。最初の用途はフロートの浮力を確保するためのエアバッグです。CO2は大気より重いとはいえ水よりはずっと軽いですから、CO2を充填したエアバッグをフロートの下に置けばフロートを浮かせることが出来ます。充填したCO2を消費することがあっても、フロートの浮力は大気を充填したエアバッグを少量用意してその空気を出し入れすることで簡単に調整することが出来ます。エアバッグには水圧がかかりますから、多少加圧しても空気中に比べれば負担が少ないので、バッグの強度はその分少なくて済みます。
産業廃棄物として排出されたCO2はドライアイスにしてメタンやアンモニアタンカーの復路を利用して輸送することができます。フロートでは常温保存になるので、液化CO2にして運ぶ必要はありません。また、不足するCO2については大気中からいくらでも採取できます。それにはエネルギーが必要なので、他の場所では利用できませんがフロートであればエネルギーコストは無料です。

⑥海水中のリチウム採取                       今後の社会において広範な用途を持つレアメタルの需要は増加していくものと思われます。多くのレアメタルには当分の間の採掘可能埋蔵量はあるようですが、それらを採掘するにはかなりの自然破壊を覚悟しなければなりません。何しろ「レア」というくらいですから鉱石自体での含有量が極めてレアであり、1gのレアメタルを得るのに数トンの鉱石を採掘しなければならないみたいなことが発生します。リサイクルは今以上に普及するでしょうが、全体の需要量が増えるのですからリサイクルだけでは賄えません。その中でリチウムは海水に多く溶け込んでいることで知られています。現在でもリチウムの多くはウユニ湖などの鹹水から採取されています。鹹水は昔の海や塩湖がもたらしたものですから、現在でも海水を濃縮すればどこででも作ることができ、その中には一定量のリチウムが含まれるので製塩の副産物として採取できそうですが、技術的には可能でもコスト的に競争できないのが現状のようです。
この十年で価格は十倍に高騰。リチウムの知識(外部リンク)                            ところでおもしろいことがあります。フロートでは電気分解のための水は太陽熱によって海水を淡水化して使用しますが、そうすると否応なしに鹹水が出来てしまいます。だったら、海に戻す前にリチウム採取に利用できないものでしょうか? <内部リンク>海水からのリチウム採取

⑦電解廃液を利用した重水・三重水の精製

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