反流上でのフロートのコントロール
赤道反流にフロートを浮かべ、そこで得られる太陽光や太陽熱エネルギーからH2を作り、すでに投稿をしているような二次製品を作ることは現在実用されている産業技術を大規模化すればすべて可能である(可能な企画しか掲載していない)と考えられますが、このプロジェクトの具体化のためには一点だけ、「赤道反流上に浮遊するフロートをどのようにコントロールするか?」という重要課題を解決しなければなりません。
この問題の解決の見込みがなければ、本稿で述べるすべての構想は画餅に帰してしまいます。
「赤道反流上に浮遊するフロートをどのようにコントロールするか?」という課題は本プロジェクトの一丁目一番地です。西から東に向かって流れる赤道反流の上にフロートを浮かべてそのまま何もしなければ、フロートは遅かれ早かれ反流の東端に達してしまいます。
反流の海水はその東端で南北赤道海流に合流し反転してこれまでとは逆方向に流れることになるので、フロートの設計時にセルとセルの間などに「遊び」を入れて、竹細工の玩具の蛇のように動くようにしておけば、フロートも逆方向の流れに乗って西に向かって戻ることになるかもしれませんが、ことはそう簡単ではありません。もしフロートがそのまま反流の東端まで達してしまうと、そこには寒流であるペルー海流が湧昇していて世界最大の漁場のひとつになっています。それに反流の東端流域付近にはこの海域で唯一の島であるガラパゴス諸島もあります。どうしても、何らかの方法によってフロートの動きを止めるか、浮遊させるにしてもガラパゴス諸島から200㎞程度離れたところで方向を変えて引き帰させることが必要になります。
赤道反流上のフロートは浮体とはいっても海底に係留されない浮遊体であり、あらゆる意味で現在日本などが推進している洋上浮体風力発電とは異なります。洋上風力発電は洋上といっても設置するのは せいぜい水深100~200mの浅い海で陸地からも近距離な場所に限られます。現在構想されている風力発電設備は浮体ではあっても浮遊体ではなく、海上の発電部分をワイヤーなどで海底に係留しなければならない関係で、深い海に設置するのは困難なために自ずから設置可能場所が限られるということです。
もちろん、陸上に近い浅い海で風も吹いてくれる場所が十分にあれば、わざわざ深海に設置する必要はありません。陸地に近いということは発電された電力をそのまま送電できるというメリットもあります。但し、大型の発電装置を作ることには向いていません。海底から海上の浮体を係留するといっても、浮体は風力によって流されないようにしなければなりませんし、浮体が影響を受けるのは海上の風力だけではなく、浮体に働く潮流や海流の圧力もあります。そんなことから洋上風力発電は小規模発電を多数作ることに向いています。現在日本で稼働している洋上風力発電所はメガワット規模ですから、よほど数を作らない限り「脱炭素」への貢献度はしれています。
一方で本原稿にあるPec-cePは同じ洋上発電でも風力ではなく太陽光発電ですが、洋上大規模太陽光発電というPec-cePの構想を実現するにはまず諸般の条件から設置場所は太平洋と大西洋の赤道反流上に限られます。Pec-ceP構想では赤道の中心から需要地大陸の沿岸までは数千㎞も離れていて電線による送電ができないため、得られた電力エネルギーをH2に変換し、さらにそのH2をメタンやアンモニアに製造して輸送する設備などが必要ですから、経済的にどうやっても引き合わないように感じられますが、いくら赤道上とはいっても太陽からの単位当たりの光エネルギーは知れていますから、大量のH2を作るための出発点であるソーラーパネルは必然的に巨大な面積を必要とすることになります。洋上風力発電が数百㎡であるのに対し、Pec-cePの構想では一つの浮体が「幅2㎞長さ50㎞高さ0.04㎞(内水面下1m)程度になり、それが複数設置されます。(比較のためにm単位で表すと赤道反流上のフロート面積は100㎢=100,000,000㎡、洋上風力発電はせいぜい10,000㎡(100m四方)ですから、面積だけで言えば10,000倍の差があります。しかも、Pec-cePのフロートは有り体に言えば巨大なイカダ(筏)にすぎず、特別に高度な技術などを詰め込む必要は全くありません。陸上のソーラーパネルを集中設置したメガソーラーに比べても規模の差は歴然としています。
2020年現在日本最大のメガソーラーは美作にある施設ですが、その敷地面積は4.1㎢ですから反流上の敷地面積の1/25程度です。(もちろん、発電効率から言えば日本と赤道上では300%程度の差があると思われるので発電規模は1/75程度になると思われます。但しこの比較にはあまり意味がありません。陸上でのソーラー発電は送電が簡単ですから周辺の民生用電力供給に向いています。発電能力だけで見れば日本最大のメガソーラーでも260MW,それに対してフロート一基での発電能力は20000MW程度になります。)
大型船でメタンやアンモニアなどH2の二次製品を運べるようになれば輸送距離はたいした問題になりません。たしかに遠距離ですが、太平洋の真ん中からなら沿岸のどこの国にもほぼ直線距離で運べるからです。
あらためて言うまでもないことですが、赤道反流流域のさまざまな自然環境は人類が太陽光を利用してエネルギーの大量生産をするのにこれ以上ないというほどの恵まれた条件を備えています。
赤道反流とは何か?をご一読ください。
赤道反流上の赤道反流上に巨大な筏のような浮遊体(フロート)を浮かべてエネルギー基地にすれば、そこは台風もなく晴天期間が続き、日照時間・量は日本の3~4倍に上る効率が期待され、また電気分解に使う水も無尽蔵にあることから理想的な発電環境が確保されることは再三申し上げている通りです。
しかし海の上でほぼ無料の太陽光発電をしても送電線を敷くことなどできませんから、赤道反流の持つ資源を獲得するには反流上にエネルギー基地を作り「太陽光由来の再生自然エネルギー」を使って搬送可能な物質に変え、それを輸送するという回りくどい手段を作る必要があります。
このことも別のページで申し上げている通りです。
フロートでのエネルギー獲得の主力になる太陽光発電では多数のソーラーパネルを海面のフロート上に平面的に置かなければなりませんから、やたらに広い面積が必要になりますが、ソーラーパネルやその他の機材を置いてもフロートの重さ(排水量)は知れたものです。フロート水面下の海中に船の船腹にあたる平均1m程度の空間があればフロートの浮力は確保できることになります。(この空間の大部分は多数のエアバッグにCO2または大気を充填して作ります。)
この巨大なフロートを実用化するには、フロートを赤道反流上のどこか一点に浮かべて固定することが必要になるのですが、一番簡単なのはフロートで得られた電力エネルギーの一部を使ってフロートを海流と逆方向に同じ速度を与えて速度を相殺し固定させることです。海流の速度は適当な場所を選べばせいぜい0.5~1.0ノットくらいでしょうから、フロートの排水量がいくら巨大であっても動かす電気エネルギーは充分に確保できます。
しかし、100㎢にも及ぶフロートを浮かすために平均1メートルの水深が必要だとすると排水量は1億トンになり、これは現在就航している最大級のタンカー50万㌧の200隻分に相当しますが、フロートの速度は2knot程度で済むのですから200個のスクリューを備える必要はありません。しかしフロートにはタンカーのような速度は不要だとはいえ、せっかく発電したエネルギーをフロート固定の動力に使うのは出来れば避けたいところです。というのも、海流は24時間休みなく流れているのに、太陽光発電をフロートの主要な移動エネルギーにする場合、夜間に消費するエネルギーを蓄電するとか、昼間のうちに動力を使って反流の上流(西方向)に移動させ、夜間は浮遊させることで元の位置に戻すことなどを考えなければならないのでいずれにせよ余分なエネルギーを消費するだけでなく、推進装置や蓄電池を用意しなければならなくなりフロートのエネルギー効率を低めてしまうと思われるからです。
一般の大洋を対象に考えれば、海流に対して浮遊体を停める効率的な手立てがなく、おまけに悪天候による大波や日照時間の低下などの不適条件が重なる広大な大洋中で自然エネルギー発電設備をするためのフロートを浮かべることなど到底不可能ですが、唯一の例外になるのが赤道反流上の海域です。
赤道反流上のフロートであれば並行して逆方向に流れる赤道反流と南北赤道海流のもつ動力エネルギーを相殺させてフロートを停止状態にすることができるはずなので、浮体式風力発電などのようにフロートを海底から係留して固定する必要がありません。(固定とはフロートを一定の経度に固定することを意味します。ですから、反流の水面に対しては常に反流の流速と同速度で逆方向に遡って見えることになります。) 赤道反流の説明については別ページ「赤道反流とは何か?」を読んでいただくとして、ここで反流の特徴を簡単に繰り返せば、反流は地球の自転や大気の大循環その他の要素によって太平洋の西に寄せられて上昇した海水が陸地に遮られて南北の赤道海流に合流する際、反流の中央部の海水が行き場を失って南北赤道海流の上を覆いかぶさるように西から東に滑り落ちる現象と言えますから、反流の下、水深100m~200mの海中には多少であっても南北赤道海流の側面が沈み込む形で流れているとされています。赤道反流は西端の周辺で熱帯低気圧の発生状況などによる影響を受けて、その流量は季節や年毎に変動し反流の海水が届く東端の位置も伸びたり縮んだりします。(赤道反流の変化はエルニーニョやラニーニャの発生や発達原因の一つです。)
反流の流域が一定しないのは困りものですが、反流が消失してしまうことはまずありません。流れが停滞してしまうくらいであればフロートの固定には却って好都合です。(反流の消失は百年ほど昔に一度あったと言われていますが、おそらく観測密度か精度の不足によるものでしょう。) また、反流は東西に伸縮しますが、その流域は南北にも緯度にして1~2°移動します。この現象を専門用語で南北振動というそうですが、フロートはこの南北振動に対しては浮かんだまま一緒に動くことになるので問題はありません。
ここまで説明すれば容易に推測いただけると思いますが、フロートを固定するのには反流水面下で逆方向に流れている赤道北流か南流がフロートのブレーキ役になるように、何らかの制御物(舵のような抵抗版やドラッグシュートなど)を設置すれば人工の動力源使う必要がなくなります。排水量1億トンに達するフロートにブレーキを掛けようというのですからもとより制御物も巨大になります。文字通り一筋縄では手に負えませんが、海流という無料・無尽蔵・環境破壊ゼロの動力エネルギーを利用しない手はありません。
フロートを設置するのには先ず海流の条件の良いところ(反流の流速が遅く反流下の海流の方が速く、制御物を設置すればフロートを反流とは逆方向に牽引できる地点)を選びます。使用する制御物はおそらく風が吹いた時に雨傘を開いた経験で分かるように、抵抗の大きいパラシュートの形をしたものをちょうどトロール船がトロール網を投げ入れるように適当な深度とフロートの距離を考えてたくさん設置することになります。フロート幅は2000メートルありますからそのためのスペースは無理なく確保できます。
抵抗力の調整はパラシュート形ではなく、傾斜を調節することで抵抗力を増減できる船の舵のようなものをパラシュートと併用することになります。もちろん、フロートの底面も水の抵抗が最小になるような形状にしておきます。この方法でフロートをコントロールできれば太陽光発電で得たエネルギーを消費することもなく、無料無尽蔵の海流エネルギーだけで24時間フロートを固定することが出来ます。 とは言え、反流の流速や流域が不規則に変化することも事実ですから、一回セッティングをすればあとはそのままというわけにはいきません。そのために多数のタグボートを常時用意するわけにもいかないので、やはりフロートを時速1.8㎞(1海里)程度で動かせる程度のスクリューか水流ジェットの駆動装置をフロートに取り付ける必要があるかもしれません。その時に必要な動力はフロートの生産設備を一時休業にして駆動装置に振り向ければ充当することが出来ます。
ただ、実際に使うかどうか分からない駆動装置に巨額の投資をするのは極めて不合理ですから他の方法を検討する必要があります。
以上のようなやや複雑な行程を経なくても、フロートを流れに任せて浮遊させれば、フロートが反流の東西端に近づいた時点でちょっとした操作を行い、反流の両側に隣接して逆方向(東→西)に流れる北赤道海流または南赤道海流にフロートを移し反流の出発点である西端に戻すこともできそうです。 浮体(フロート)を停めることをせずに潮の流れに任せてしまい、フロートが東西の端近くに達した時点で、赤道反流の両側の逆方向に(東から西に)流れる赤道海流に乗り換えさせる(スイッチバックする)という方法です。赤道反流はその年の気象条件や南北赤道流の流路の変化などによってその流路が南北に大きく振動することが知られていますが、もともと赤道海流の流れによって作られたものですからどの位置にあっても赤道海流に近接していることは間違いありません。フロートは反流の東端近くで南側に寄り赤道海流に近づくようにします。反流の流速はその中央が早く両側は遅くなっています。ですから数百キロをかけて徐々にフロートをほんの数キロ反流の南側に寄せることはフロートの底辺に多数の舵をつけるだけでできます。フロートが南赤道海流側に寄ったところで、今度はフロートの後部から多数の抵抗版を南赤道海流に伸ばします。フロートから赤道海流北端までの距離は十キロメートル程度でしょう。フロートとワイヤーロープで結ばれた抵抗版はフロートでの諸作業用に作られたタグボートを利用するのが一番簡単かと思われます。抵抗版は赤道海流に流されて南西方向に進むように作りますから、それに引き寄せられてフロート一部が南赤道に引き込まれ、後は自分の抵抗力によって徐々に全体が南赤道海流の上に移ることになり、そのまま西に進むようになります。この方法だとフロートの前後は入れ替わりますが、そのことでの不都合はありません。面積100㎢のフロートをそう簡単に引っ張れるの?と疑問が出るでしょうが、フロートの面積がどれだけ広くても、排水量は1億㌧しかありません。また、スイッチバックをする地点では両方(反流の南端と南赤道海流の北端)の海流の流速は非常に遅くなっているので、東西方向のベクトルを合わせてもせいぜい3knots程度でしょう。このようにして南赤道を西方向に浮遊するようになったフロートは赤道反流と南赤道反流が分かれる前の地点で同様の方法(この時はフロートの東側北端を使う)によって赤道反流にスイッチバックすることになります。フロートの長さは何十キロもありますから、ワイヤーをたくさん繋げばお互いの引っ張り張力に耐えられますし、抵抗版の面積も自由に変えられます。この方法の優れた点は反流下の海流を利用せず、代わりにすでに知られている南北どちらかの海流のエネルギーを利用する海水面だけの動作でフロートの流れを逆方向に変換できることです。
一方でスイッチバックをしてフロートの進行方向を逆転する方法をとる場合はフロートが反流と南赤道上を常に移動することになりますから、どうしても赤道を縦断して行き交う船舶の航行を邪魔してしまいます。
したがって、長さ50㎞のフロートは難しいでしょうから、フロートを2㎞×25㎞×2あるいは2km×10㎞×5とかいうふうに分割するなどの対策が必要になります。この規模に分割しても二次製品の製造は複数のメタン工場船やアンモニア工場船を使うのでフロートの機能に基本的な障害は生じないものと思われます。
参考までに、上記のスペック(幅2km×長さ50㎞=100㎢)のフロートを設置した場合のフロートの能力について概略数字とそのイメージを記しておきます。詳細はフロートの敷設方法、生産能力などをご覧ください。
A)ソーラーパネルの積載能力は大きめの市販製品の広さ(1600㎜×800㎜=1.28㎡)に換算してフロートの1セル(20m×30m)に約500枚。 重量にして約60トン セル全体の重量は約80トン(支柱・架台などパネルの設置設備 セルフレーム本体など約20㌧)
したがってセルを浮遊させるための必要浮力80㌧=80㎥ セルの面積は600㎡なので水深換算にして約13㎝で必要な浮力を得られる。(但し、この浮力をCO2のエアバッグで得ようとすると、CO2は大気より10倍程度重いのでその分だけ大きめのエアバッグを用意する必要がある。)
ソーラーパネル(100cm×200cm=2㎡と仮定)をフロート面積の80%強(100㎢=2,000m×50,000m=100,000,000㎡)に積載するとして50,000,000枚。
フロートでは電解設備や貯蔵スペースなどは全部ソーラーパネル下の水中に収納されるのでフロート面積のほとんどをソーラーパネルの設置に使える。
B)上記による発電能力
ソーラーパネル1枚あたりの発電量が0.4㎾として5000万枚では平均で20,000㎾/h、1日10時間稼働として200,000㎾/day、年間300日では60,000,000㎾=60,000mW(60,000メガワット)
また、日本の太陽光発電量は世界第三位だそうですが、赤道反流上に同規模のものを作ればその発電能力は3~5倍に向上させることができます。
太陽光発電の弱点はとにかく太陽光を受光するのに広い面積が必要なことで、日本ではもう既に乱開発による環境破壊が問題になっていますが、乱開発が進むのは太陽光発電電力に対して経済原則を無視した固定買い上げ制度があったからです。そのためにCO2排出を節減して地球環境を守ろうとする試みよりも、利益追求第一の太陽光発電事業が増えてしまいました。電力は直接海外から輸入することが出来ず国産で賄うしかない数少ない不動産連動商品ですから海外価格と競合する必要がありません。それでいて事業開始には許可や税制などに様々な優遇処置がありますから、事業が利権化する条件をすべて兼ね備えています。
赤道反流上では環境破壊の心配はありません。赤道反流の流域はフロートの敷設に適すると思われる部分だけで20㎞×10,000㎞=20万平方キロメートル=日本国土の半分以上の面積があります。そこには陸上や他の海に見られるような豊かな自然体系が存在せず、特定の生物に悪影響を与えることも考えられません。フロートを浮かべて太陽光を取り入れるのは人間から見れば大きな事業ですが、自然からみればその規模は空の雲が少し増えれば同じことになってしまう規模です。
加えて、この海域は公海であり、南極や月面などと同様にどこの国家のものでもありません。赤道反流々域はすべての人類や生き物が共同所有する財産だとも言えます。赤道反流上で発電をしても、決まった地主がいないのですから発電事業の初期費用が土地購入費用に充てられたり立ち退き賠償に無駄に使われることもありません。それらの分、利権の発生は少ないと言えます。
しかし、赤道反流上ででしかできない構想ということは、そこから送電線を引いて電力を送ることが出来ないということです。6,000㎞の距離は陸上なら克服できないものでもありませんが、赤道反流からは水深4000メートルの深海に海底送電線を敷くことなどはどんな誇大妄想の人でも主張しないでしょう。
電力として送れないのであれば形を変えて送らなければなりません。
それにはフロートで得られた電力を、これもまた無料無尽蔵の太陽光で淡水化した無料無尽蔵の海水を電気分解してH2を生産し、そのままでは輸送しずらいH2を更にフロートで原料が調達できる物質(例えば合成メタンCH4アンモニアNH3など)に加工して送ることが考えられます。
これらの技術ーー太陽光発電から二次製品の製造までーーはすべて周知の技術であり、新しい技術開発を前提としないで事業化することができます。
『脱炭素社会の構築』という人間に課せられた全地球的課題が存在する中で既存の技術でCO2削減に広範に対応できる赤道反流上の言わば『脱炭素基地建設』はひとつの具体的な回答を供するものと思います。
ここで繰り返し強調したいのは海底への係留なしに巨大な浮遊物の建設を可能にするのは太平洋赤道反流とおそらくは大西洋赤道反流だけであり、そこはほとんど無料の(建設費の償却と維持費だけで)電力が無尽蔵に手に入る地域です。そしてそこは同じく無料無尽蔵の海水に囲まれた地域であり、無料の電力と既存の技術の利用によってほとんど無料のH2を無尽蔵に作れる地域です。環境破壊を起こすこともないこの赤道反流を利用して安価で大量のH2とその派生物を供給できることは他の地域の環境破壊を防ぐことにもなります。
技術面の問題がないからといって万事が順調に進むものではありません。
化石燃料の濫用という炭素社会の問題の解決には水素社会の構築というビジョンがあります。しかし、私達の住む資本主義社会では利潤追求に出口がありません。これは儲からないけど環境保全に役立った(自分の利潤にはならないけれど心の満足という利益を得たんだから儲かった)が成り立たないのが資本主義社会です。「まず手を付けられるところから」ということで、利潤の追求と両立する形で二酸化炭素の削減に取り組むしても、「原発ならCO2が出ないからみんなの利益になる」というふうにいろいろ理屈をつけて原発の再開を目論む勢力などのようにそれが自分たちの利潤に繋がるものでなければ行動に繋がりません。「原発は儲からないけど気候温暖化から地球環境を守るためにやらなければならない」などという勢力は存在しません。
原発は軍需産業と似ているところがあって、技術面でも専門性が高く外部の一般人に肝心の所は分かりませんから施工費や運営費が妥当かどうかも分かりません。赤道反流の場合は事業対象が多岐に渉るので一つの会社や組織では見積もりも難しいでしょうが、それぞれの分野の技術者の見積もりを合計すれば透明な予算組みが出来ます。
しかし、国がこの話に乗り気になったとしても、赤道反流の話は上手くいかなければ大事なお金を溝に捨てるようなもので、万一上手くいったとしても原発に比べれば事業予算規模も知れていて、莫大な利益が見込める原発産業の今後を脅かしてしまいます。
先ほどの技術面の話とは百八十度異なって事業面での可能性は解決不能に見える悲観的な話ばかりだと言えるでしょう。
しかし、それでも可能性がないわけではありません。今まで話してきたことは対象を日本にしているからで、例えば中国であれば原発勢力との軋轢は深刻になりません。日本と違って、中国では電力不足が切実な問題ですから原発も赤道反流も同時進行することができます。赤道反流の計画は技術的な問題がないだけに短期間で稼働にこぎつけられそうだという利点もありますし、日本とは違って赤道直下のエネルギー供給基地は中国にとっては一帯一路の南方への延長の意味合いもあり、そのシーレーンの安全確保は中国海軍を南進させるのにまさしく渡りに船といった側面もあります。
目下のところ、赤道反流にフロートを浮かべてエネルギー基地を作れる可能性について科学的な結論が出ないのは赤道反流のデータが圧倒的に不足しているからです。
赤道反流が巨大なエネルギー源になるかもしれないという発想がなかったのですから、漁業や気象、あるいは軍事的側面から見たデータしかないのも無理もありませんし、何もしなければ今後もデータが集まる可能性は少ないでしょう。
私達は実地調査だけでもやってみる価値があると考えていますが、みなさんはどうお思いでしょうか?
赤道反流にエネルギー供給基地を作る案(Pec-ceP)の事業予算
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