「海水」の電気分解でできること
赤道反流上のフロートではほぼ無料かつ無尽蔵な電力が得られますから、陸上で電気代や敷地代を計算に入れていたらまったく成り立たないCO2のリサイクル事業が可能になります。そのいくつかは他のページで紹介していますが、このページではフロートの周り一面にある「海水」の電気分解をCO2リサイクルに利用する方法について説明させてもらいます。
フロートでは海水の塩分などを取り除き淡水を作り、それを電気分解して水素H2を作ります。フロート上であれば太陽熱を利用して海水から蒸留水を作るのに費用は掛かりません。しかし、水素だけを作っていたのではもったいないこともあります。蒸留水を作った残りの鹹水(かん水)にもいろいろな利用法がありますが、それとは別に海水を直接電気分解すればまた別のCO2を使った利用法があるからです。児童向け実験動画「塩水の電気分解」 海水の水以外の成分でずば抜けて多いのは塩分NaClです。海水は塩分NaClの水溶液と考えて差し支えありません。そのNaCl水溶液を電気分解すると陽極には水のH2とNaClのClイオンが集まりますが、Clは水の中でHClつまり塩酸の形で存在します。このHCLを取り出してアンモニアNH3に混ぜます。そうすると両者は合体してNH4Clという化合物を作ります。塩化アンモニウムです。これはそのまま塩安肥料として広く使われていますし、量として多くはありませんが他にもいろいろな用途に供されています。常温で固体ですからフロートからの運搬は簡単です。陸上で作っても安いものですが、フロートで作れば電気代がかからない分更に安く作ることができます。
もう一方の電極にはNaOHが発生します。NaOHは中学生の理科実験などでお馴染みの苛性ソーダです。こうして出来た苛性ソーダも安いものですし大量に作って運んでも意味はないのですが、フロートでNaOHにCO2を通すとNa2CO3とH2Oができます。これは炭酸ソーダで、ガラス(ソーダガラス)を作るのにはなくてはならない材料です。炭酸ソーダは天然の鉱石から精製できますし、これも安いものですから日本まで運んで引き合うものであるかどうかは分かりませんが、この話のミソは製造でCO2を消費するのでCO2のリサイクルに貢献するということです。ガラス工業は主原料である珪石の精錬に化石燃料由来のH2を使っている現状ではCO2を発生する代表的な産業になっています。それはそれで解決しなければならない問題なのですが、同時に使う炭酸ソーダだけでもフロートで作った化石燃料を熱源に使わない炭酸ソーダはガラス産業の脱炭素化に一役かうことができます。また、事業として引き合わなければ、固めて海に捨ててしまっても炭酸ソーダであれば炭酸ソーダの岩石が自然に存在するくらいですから環境の汚染にはならないだろうと思われます。もし、塩化アンモニウムの方で多少なりとも利益が出るようであれば、塩化アンモニウムを作ると否応なしに発生するNaOHを炭酸ソーダNa2CO3にすることでCO2を鉱物の中に固定してしまうことになります。また、フロートで生産されるアンモニアの一部であっても塩化アンモニウムにして運ぶことができれば液体で運ぶアンモニアの輸送コストを下げることができそうです。
CO2の貯留・再利用センターとしての赤道反流フロートの機能 十億㌧単位で可能なCO2の水中貯蔵 電解で得たH2とCO2のサバティエ反応による合成メタンの生産 CO2濃度を増した環境下で植物性プランクトンの大量集中栽培
フロートの多目的利用 フロートでのアンモニア製造 海水からのリチウム採取 海水からの水素マグネシウム製造 工場船&補給船
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