生誕130年 武井武雄の世界〜幻想の世界へようこそ〜
2024年8月22日(木) くもり 31.3℃ (MCJ013)
展覧会「生誕130年 武井武雄の世界〜幻想の世界へようこそ〜」を鑑賞するため、中目黒駅から途中で2つの郵便局に寄りつつ目黒区美術館まで20分の道のりを歩いて行った。あぁ、気温が30℃とはなんて楽なんだろう。深く呼吸ができる。身体が軽くなったようで歩くのも容易い。湿度は相変わらず高いので汗だくにはなったけれど。
絵本をたくさん手掛けていた武井武雄の作品、はっきりとは思い出せなかったけれど子どものころに接していたに違いない風情を感じた。カラフルな色遣いに心がときめく。鳥の連作は見ていて楽しく、気に入った。
人生切手
武井武雄氏は想像の切手を作っていた。その類まれなるデザイン! 本当に切手になったらどんなに良いだろう。あぁ、すてき。一つ一つの切手に言葉があるのだが、それがまた良い。それらが一冊の本になっていたのが素敵すぎて、何度もその展示の前をうろうろしてしまう。帰ってからネットで古本販売を見てみたがどこも売り切れで手に入れるのは難しそうだ。
この風合い、その色合い
たとえば、毎年こんな年賀状が送られてくるとしたら、年賀状をやめるなんていう人はいなくなるのではないだろうか。木版画で刷られた年賀状の魅力に圧倒される。武井武雄は年賀状を送り合う「榛の会」を主催していたそうで、棟方志功などの名だたる芸術家たちが参加していたらしい。武井武雄の年賀状のずっと眺めていたくなるような温かさ、美しさ、面白さ。これまた目に焼き付けたくて、年賀状の展示コーナーを何度も行ったり来たりしてしまう。
やっぱり、版画の年賀状っていいな。私もやってみたいとまた強く思う。今年を振り返り来年に想いを馳せながら、彫刻刀で版を彫る自分の姿が脳裏に浮かんだ。手間をかけないで簡単にしてしまうから、気持ちを込めないから、年賀状の意味を見いだせない世の中になったのだ。年賀状に向き合うことで年の境目に向けて区切りをつけて、また前に進む。本来、年賀状とはそういうものなのかもしれない。ちゃんと手間暇かけてすることで見える景色があるに違いない。武井武雄の年賀状を眺めながら確信めいたものを感じた。
全体を通して、胸の高鳴りが終始鳴り止まない展示で、観にいかれて本当に良かった。武井武雄の豊かな想像と幻想の世界が扉を開き、私の手を引いていざなってくれたように感じた展覧会だった。
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