「ラストマイル」

※ネタバレを含みます。

映画を観て丸24時間以上が経っても未だに言葉がまとまらないので、とりあえず殴り書きをしたい。

感情がぐちゃぐちゃになってボロボロになって、生きるってなんでこんなにしんどいんだろうかと思った。

舞台は物流倉庫。
今を生きる人なら誰もが触れる機会のあるもの。
普段インターネットで買い物をしない人だって触れる。
例えば病院に通えば、病気を治すために、生きるために薬を飲んだり手術をしたりする。
薬や手術のための薬剤はどうやって届くか。
物流によって病院へ届けられる。
メディカル便は人の命に関わるから最優先だ。

普段買い物をしているスーパーにある商品だって、誰かがその場に届けている。

全ては人が届ける。

注文したものが届く。当たり前のようで全く当たり前ではない。

なぜならそこには多くの人が関わっているから。

「止めませんよ。絶対」

予告でエレナが発したこの言葉の重みが映画を観る前と後では変わってくる。
重いなんて言葉だけで表現しきれないほど重い。
上手な表現が見つけられなくて結局軽い言葉になってしまうことが悔しい。

「馬鹿なことをした」

倉庫の中で飛び降り頭から血を流しながら発した山崎のこの言葉。
こうするしか思い浮かばないほど酷使された人間の放つ、一瞬の気の迷いを行動に移した直後の正気。
人が1人飛び降りた。頭から血が出ている。段ボール箱が流れてくる場所に着地したことで多くの物の流れが止まる。
止まってから、すぐ動く。
物の流れを遮る山崎は「物」のようにすぐに降ろされたからだ。
飛び降りることで、これで全てすぐ止まると思っていたのに、これでも全てすぐ動いた。
これを目の前で見た山崎は一体どんな気持ちだったか。
「馬鹿なことをした」
これは本心から出た言葉なんだろう。

荷物に爆弾が仕掛けられた。
全部で12個。
荷物を開けたら即爆発。
巨大な物流倉庫。
どこに爆弾があるかなんてわからない。

誰が、どんな目的で爆弾を仕掛けたのか?

これは映画を宣伝するときの表向きの大きな目的。

しかし映画が始まってから徐々に、問題はもっと複雑であることがわかる。

誰が、どんな目的で爆弾を「仕掛けなければならなくなった」のか?

単なるテロじゃない。
罪を贖うには、これしかないと思ったんだろう。

ただ、許されることではない。
それも辛い。

誰かが死んでも所詮他人。
全く知らないその他大勢が死ぬのと、大事な人1人が死ぬのでは重みが違うのは否めない。

私だったらその他大勢が死んでもいいから大事な人1人を救いたい。

大事な人1人がいなくなった後だったらどうだろう。

いなくなったきっかけとなったものに関わったその他大勢を消したいと思うだろう。
多すぎるのならランダムでもいい。
というのが筧まりかの考えなのではないか。

然るべき機関に助けを求めていたら。
山﨑が。筧まりかが。

ラストマイル。
荷物を届ける最後の区間で人のために必死になって寝る時間もなく働いた山﨑は、自分を救う最後の手段を見失っていた。

物語はフィクション。
でもここで描かれているのは今もどこかで起きている。

自分を犠牲にして働き、眠れず、正常な判断ができなくなる人がいる。

生きるのはなんて難しいんだろう。そう思って泣きそうになる。

アンナチュラルの登場人物もMIU404の登場人物も、ラストマイルと同じ世界線で生きている。

いろんな過去を背負っている。
夢ならばどれほどと思う記憶も、幸運を僕らに祈りをと言いたくなるほど辛い現実に向き合うこともある。

あなたがずっと壊れていても、二度と戻れはしなくても構わないと思えるほどの人に出会って、二度とその人には会えない事実に打ちのめされることも。

生きることは辛い。働いて頑張って生きても報われないことがいっぱいあって、それでも生きなければならない。

死は救済じゃない。でも死は救済だと思う瞬間や時間は幾度となく訪れる。

それに向き合い続けて日々を這いつくばって生きている。

生きなければいけない。

映画のラスト、全てのフィクションの終わりに付けられるあの文言の後に付けられた、通常のフィクションでは見慣れない言葉。

あれはラストマイルで特に伝えたかった事実なのではないだろうか。

間に合った人も間に合わなかった人もいる。
間に合わせようとして最後まで足掻いて、助かった命がある。

羊急便で働く親子は、最後まで諦めなかったから人を救えた。

映画はフィクションだけど、他人事じゃない。
最初から最後まで自分事だ。

"What do you want?"

無機質な音で繰り返されるこの英文に無意識の刃を感じる。

人が本当に必要とするものはなんだろうか。

1番そばにいてほしい存在がいなくなってしまったら、人はそれをわからなくなってしまうだろう。

誰もがこの映画の登場人物になり得る。

エレナにも孔にも。
侑にもまりかにも。

私はどう生きるべきか、ラストマイルが記憶に入ってきてからからずっと、決めかねている。


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