「昔の音楽は良かったけど、今の音楽は〜」について
私はよく昔の音楽をYouTubeで聴くのだが、その度にコメント欄で「この時代の音楽は良かったのに、今の音楽は終わってる」、「こういう本当の音楽が今はない」などといった辛辣な意見を見かける。
「昔の音楽は良かった」
これは正しいと思う。しかし、
「今の音楽は終わってる」
これは間違っていると思う。
山下達郎氏の見解
「最近、音楽の質が低くなった、昔の音楽は良かった、という人がいますが、それは違います。昔も質の低い音楽はたくさんあった。低質の方が多かった。でもそれらは時と共に忘れ去られ良いものだけが残ってる今だから昔の音楽は良質のものばかりという印象を受けるのです」
これは音楽に限らず、いろんなことにおいて言えるなあと感じた。少し話が逸れてしまうが、私はしばしば親に「かつてのバブル時代を生きてみたかった」というどうしようもない願望を口にする。すると親は「確かにいい時代だったけど、セクハラ・パワハラが今以上に当たり前にあったし、今ほど個性を尊重してくれる時代ではなかった」と返すのだ。
私が現代を嘆いてバブルに憧れを抱くのも、結局バブルの長所ばかりが後世に伝えられていることが原因なのだろうと思った。
「今の音楽は終わってる」の「今」がおかしい
辛辣なコメントの中には「ジャニーズとかAKBばっか売れている今の音楽シーンはおかしい」といったコメントがちらほらある。
私はこれを見るたびに「それっていつの時代よ」と思ってしまう。多分、彼らの指している「今」は、2000年代後半からせいぜい2010年代前半、明らかにズレている。
もし、令和において「ジャニーズやAKBばっか売れていておかしい」と言っているのであれば、それは間違っていると思う。確かにジャニーズやAKB(最近だと乃木坂?)が売れているのは事実だが、歌手やシンガーソングライターもちゃんと売れているし、評価されている、これは間違いない。パラレルワールドからコメントをしているのなら、話は別だが。
良い音楽が埋もれてしまう時代は終わった
先述の「2000年代後半から2010年代前半」において、良い音楽が埋もれてしまうということは多々あったと個人的には思っている。だから、この時代の音楽シーンを指して「おかしい」と言うのは一理あるのかもしれない。
原因はいくつかあるが、一つは「テレビ」である。テレビ受けの良くない音楽のなかに良い音楽はきっとたくさんあったと思うが、それらはテレビ受けするかどうかのふるいにかけられて埋もれてしまった。もちろん、救世主としてラジオがあったりするわけだが。
しかし、今はこんなにネットが普及している。昔であれば埋もれてしまうような音楽にスポットライトが当たる時代、それが今だと思う。
もう一つの原因は思い切って言ってしまうと、「握手券付きCD」だ。もちろん、あのアイドルの音楽が悪いとは思っていない、むしろ良いと思っている。しかし、握手券が付いていなかったら、あそこまでチャートを独占していなかっただろうと思う。本来ならチャート入りするような良い音楽が、あの独占によってチャートから追放されたりすることが多少はあったような気がする。
しかし、この問題もネットやサブスクがある程度解決してくれたと思う。
いつの時代も良い音楽はあるはず。「ない」あるいは「少ない」と感じているのであれば、それは気づいていないだけだと私は思う。
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