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かつて推しがいた場所
推しが高校時代を過ごした鍋屋敷。
10年前と変わらぬグラウンド。
違うのは、推しがいないという事実だけ。
私の推しこと福岡ソフトバンクホークスの
松本裕樹投手。
高校時代は盛岡大学附属高校野球部に所属していた松本くん。
グラウンドは盛岡駅から車で20分ほど北上した所にある屋外のグラウンド。雪が降る地域なのになぜか室内練習場は無い。(なぜ…)
この夏久しぶりに盛岡へ旅行へ行ったのだが、当初盛附グラウンドに行く予定はなかった。
ところが、最終日に新幹線の時間まで1時間ほど空きが出来てしまったのだ。
10年ぶりに行きたい気持ちと、一緒に旅行に来てくれた人をそんなマニアックな所へ連れて行くわけにはいかないという気持ちがあり、申し訳ない気持ちが勝ちそうだったところを
「せっかくなら行こう!」ととんでもなく優しい言葉をかけられ、久しぶりに見に行くことにした。
↓前回行った時の話
車でグラウンドに向かっていると、盛附のユニフォームを着て自転車に乗っている球児たちが大量に同じ方向へ向かっていくのが見えた。
その日は平日で時間は15時ごろ。丁度授業が終わって練習に向かう時間だということに気が付いてしまった。
なんてこった。練習してるのをちょこっと見る予定だったのに。これじゃ普段の練習を待機してまで見るヤバいやつじゃないか。
そう思いグラウンドの近くで車を止めて待機していたのだが、野球部に見つかっては挨拶をされ、見つかっては挨拶をされた。
この時ほど「スカウトっぽくしてくれば良かった」と思ったことはない。
球団のストラップをつけ、使い古した革の手帳とスピードガンを片手に持っていればそれっぽく見えたのに。
ひと通り野球部がグラウンドに入ったことを確認し、徒歩でグラウンドまで向かった。
あの時自転車で駆け降りた坂。
10年ぶりの坂で、その時の緊張が甦った。
心臓がバクバクいう中グラウンドに辿り着くと、そこにはほとんど変わらない盛附の鍋屋敷グラウンドがあった。
広々としたグラウンド、「一瞬懸命」の立て看板、相当年季が入った何かしらに使っている小屋。10年前に見た光景と何も変わらない。
違うところといえばただ一つ。
松本くんがいない ということだけだった。
当たり前だけどあの時の選手たちはもういない。
グラウンドの前で待っていてくれた先輩もいなければ、その先輩に聞いてなのか、きりーがくることを知っていた松本くんの同期もいない。
何も変わらないのに、懐かしいのに、何かピースが足りない気がする。
毎年速報や中継を見て変わっていく盛附を知っているはずなのに、松本くんがいた頃と違う雰囲気の盛附をどう受け止めたら良いのか分からなかった。
今考えると、松本くんがいなくなった盛附を直接見るのはこの時が初めてだった。
しばらくグラウンドをぼーっと眺めていたが、アップが始まり、選手が外へわらわらと出てきたので気まずくなりグラウンドを離れた。
ばかでかい感情を整理出来ず、盛岡駅に向かう間とめどなく10年前の話をしていた。
松本くんを初めて見た時のこと、甲子園に行った時のこと、話すたびに思い出して話が止まらなかった。
無性に盛附時代の松本くんを見たくなった私は、家に帰ってDVDを引っ張り出した。
松本くんが高校2年生の夏の大会、vs水沢高校の再試合。何度も何度も見た試合。
あの頃の松本くんはもういない。
あの頃の盛附ももうない。
でも、あの頃の松本くんを忘れたくないと思った。