定点観測下のコロナ感染 まとめ(1)
Ⅰ:定点観測下のコロナ患者数変化
オミクロンコロナ感染下の定点観測は、基本数式である定点数×定点患者数=平均患者数と、感染モードの「患者数の人口数比化」という二大原則に加え、「不可解な患者数変化」が加わり、三位一体となった複雑な感染経過を示している、と当シリーズは推測しています。医療面で得られた諸々の結果もその影響を受け、事実としての相関性、整合性が常に求められるに至り、表計算Excelによる検証が欠かせないのが現状です。
冒頭ですが、引用回数の多いExcel表計算シートを未完ながら載せます。
表1:基本数式の表計算シート
基本数式には、定義の表現に違いがあり、厚労省は以下の数式に従っているものと当シリーズは推測します。
定点数×一定点の平均患者数=患者数
数式左側の一定点数の平均患者数は、平均患者数として使用され、数式右の患者数は、定点範囲内の全患者数を意味するものと推測されます。
一方、当シリーズで利用される基本数式は、
定点数×定点患者数=平均患者数
となります。上段数式の一定点の平均患者数は、定点患者数に言い換えられ、患者数は平均患者数に言い換えられています。どちらの数式を使うかは各人の自由ですが、当シリーズの使用する後者の場合は、以上の言い換えの周知が必要となります。
定点数、定点患者数、平均患者数等の似たような言葉の連続で混乱しますが、それぞれの意味する処の違いは大きく、常に注意する必要があります。
当シリーズが使用する基本数式では、平均患者数は、定点範囲内の全患者数/日を意味し、具体的には、全国患者数/日(もしくはそれに準するもの)となります。定点数は、コロナ感染下では、全国の総定点数5000を各都道府県に応分したものになり、定点患者数は、平均患者数を定点数で除した計算値であって、実測値ではないことに要注意です。
一般的によく見かけるのは、基本数式右項の平均患者数(厚労省基本数式の場合は患者数)ですが、謂わばpublic dataですから、感染 watcher が最初に確かめるのは定点数となります。
コロナ感染の定点観測では、原則である基本数式に加え、患者数に関して以下の二つの変化加わっている、と当シリーズは考えます。
一つは、オミクロン波後半から認められる 「患者数の人口数比化」 という感染モードです。この変化はA:項で詳述しますが、偶然現れたものではなく、コロナ感染が、アルファ波、デルタ波等の大都市圏優位型感染を経てオミクロン波に至り、中小都市圏に波及した究極の感染モードで、現状では原則に近い決まり事になった感染様式と、当シリーズは判断しています。
二つは、定点観測下では、不可解な患者数を示す幾つかの都道府県があることです。正直な処、この数値に悩まされましたが、自然経過によるものか基本数式の誤用、表計算に伴うartifact 等によるかの判断に苦慮し、検討課題になりました。
感染モードをA、不可解な患者数示す都道府県をBとして以下に説明しますが。基本数式は原則ですのでそのまま受け入れることになります。
A:感染モードについて
「患者数の人口数比化」という感染モードは、感染状況に特別な異変を認めない限り、オミクロン波後半期から認められ、2024/11/17現在に至って未だに進行形の状態になる時もあると思われます。
定点観測になってから、生の加工されない患者数報告はありませんので、感染モードでは、オミクロン波後期の加工されない患者数で代用しますが、この感染モードは、定点観測の現状でも基本的認めるものですから、状況判断の鍵になるもの当シリーズは評価しています。
定点観測下の「患者数の人口数比化」は、全都道府県の患者数が、一定の人口数比の=患者数/人口数を示して、日々現れます。グラフで示しますと、図1左右となります。左図は、オープンデータ終了前6ヶ月の、都道府県人口数と平均患者数/日の相関図で、右図はその両者の散布図となります。
図1:都道府県人口数とオープンデータ患者数
左グラフは、コロナ感染の患者数(赤い線グラフ)と人口数(同灰色の棒グラフ)が、ぴったり重なり合って比例併行し、この状態が定常化していることを示しています。オミクロン波初期に始まり、その後半過ぎ頃から明らかになった波形ですが、オミクロン波の全体波形に見慣れている方は、信じ難い波形かもしれません。けれどもこれが現実であり、現在も進行中の感染モードとなります。
オープンデータ時の患者数データベースをお持ちの方は、図1左の再現確認は容易ですから、是非確かめられることをお勧めします。お持ちでない場合も多いと思われますので、図1は人によっては路傍の石に過ぎない運命を背負っていると、当シリーズは思っています。
右グラフは、プロット=患者数/人口数が、近似曲線Y=0.4362x+153.11になぞる様に併行しています。近似直線というべきかもしれませんが、近似曲線なる表現は、表計算エクセルの決まり事であることをご了解下さい。相関性は、プロットが直線になぞる様に位置していることが大事で、気ままにばらついていないことが大事です。
図1左右は、コロナ感染の都道府県別発症率=患者数(縦軸)/人口数(横軸)が、全都道府県でほぼ等しいことを示しています。左の相関図を見ますと、患者数推移が横一線に現れる現象が説明され、感染モードになって患者数がゼロとなる都道府県を見ないことを説明しています。このグラフ波形を、厚労省の週ごとの患者数報告時に、実感として頂けることを期待しています。
図1左右は、オミクロン波後期のコロナ感染が、日本国内余すところ無く浸透した結果を推測させます。感染性が強まればそれだけ重篤性が低下するのがウイルスの宿命ですから、今や感染しても、生命にかかわる度合いは考えられないほど少なくなりました。パンデミックコロナの現状は、増減を繰り返しながら感染モードを維持し、大局的には収束を迎えつつある、と当シリーズは推測しています。
B:不可解な患者数を示す大都市圏
定点観測では、生の加工しない都道府県患者数報告がありません。それは 全患者数を意味する raw data ともいうべきものです。統計的結果の正誤を確認し、疑問が生じれば raw data に立ち戻って検討するのは必至ですし、試し算の際にも欠かせないものです。
当シリーズとしても、サンプルとしての raw data を用意しておく必要がありました。オープンデータ時のように全国津々浦々を網羅する必要はありませんが、前後に関連性を持つ47都道府県患者数であれば、定点数に従ったものでも良しとするものです。
幾つかの週の都道府県ホームページを調べ、47都道府県の“患者数”を一覧可能な2024/2/19~2024/2/25週の資料を得ることが出来ました。” “ で括ったのは、同週のみに限定した患者数であることを意味します。各都道府県は、一定点の平均患者数である定点患者数を厚労省に報告すれば済みますので、raw data は、本来なら使用済みデータとも言えるものですから、47都道府県揃った患者数は貴重な資料となりました。けれども、いろいろ問題をはらむ資料でもありました。
”患者数“は、厚労省が命ずる定点数に基づいて各都道府県が算定する一定点の平均患者数に、定点数を積算したものになります。感染モード下にあれば、そのグラフ波形は、図1左のオープンデータ時の患者数(もしくは人口数)と同じ筈でした。図1左を図2左に再掲して左右を比較しますと、両者の波形は著しく異なり、右波形の大都市圏を中心にして、激しい上下変動を認めます、この違いが、②の課題である「不可解な患者数を示す大都市圏」となりますが、看過できない事実を突きつけられ、検討することになります。
図2:都道府県人口数とオープンデータ平均患者数(左)及び“患者数“(右)
図2左右波形の違いの要因は、図2右の大都市圏で主に見られる深い切れ込みが主に関係すると推測されました。図2右を散布図にした図3右を見ますと、その深い切れ込みは、東京都、大阪府、兵庫県、広島県の4都府県の大都市圏患者数を中心にして減少もしくは増加し、プロットのバラツキに関連しています。
図3で問題となるのは、”患者数”にプロットのばらつきが多いことで、都道府県人口数、オープンデータ患者数両者の相関性を著しく低く表していることです。と言うことは、”患者数“は、感染モードとは無関係な次元の感染状況を示していると判断されます。
図3:“患者数”と感染モード(都道府県人口数右と患者数左)の散布図
図3左右で、プロット位置が僅かながら違っているのは、患者数と人口数との比が僅かな相違であることを示していると思われます。けれども、”患者数“が、感染モードの中核となる都道府県の人口数、患者数とは全くの別物であることは、深刻な事態を示すものと思われました。
図2右の患者数波形が、オープンデータ終了を契機にして、一夜で突如図3に豹変するのは、自然現象としては理解し難いことですから、基本数式の誤用、表計算上の artifact 、操作的処理等の何れに基づくものかの判断を促すものでした。厚労省の”患者数“報告を見直す必要に迫られました。
幾つかの都道府県に、この不可解な患者数変化が見られる原因として、表1の最上段行にある項目欄に、基本数式に従えば定点患者数とすべきところを、厚労省が”平均患者数“としていることが推測されました。その横の項目に、厚労省が報告した定点数がありますが、定点数は厚労省が各都道府県に下達し、各都道府県は、その定点数に従って一定点の平均患者数(=定点患者数)を求めて厚労省に報告し、厚労省はその患者数を国民に報告することになっているものです。基本数式の平均患者数=定点数×定点患者数に従いますと、東京都の場合、2221=419×5.30ですから、5.30は一定点の平均患者数である定点患者数を意味し、東京都以下都道府県もそれにならって、5.30以下を定点患者数として厚労省に報告していることになります。その定点患者数を、厚労省は”平均患者数“として報告していることになります。
厚労省は、各都都道府県に一定点の平均患者数(=定点患者数)算定を義務付けておきながら、何故その定点患者数を”平均患者数”としたのでしょうか。他人の仕事の良し悪しを評するのは、気分良いものではありませんが、この“平均患者数”が、基本数式の各項に影響を与えるとあれば、問題点を整理しておかねばと思うことになります。
定点患者数を、厚労省が“平均患者数”に変えたことで生じる問題点を、以下に述べます。
①:定点患者数とは、平均患者数を定点数で除した計算値である一定点の平均患者数を意味します。東京都の5.30の意味するものは、一定点数の平均患者数という定点患者数ですが、東京都の“平均患者数”は、一定点の平均患者数に、定点数419を積算して2210となったものです。
東京都の感染状況は、患者数 2221 なら分かり易いのですが、一定点の平均患者数である 5.30 で患者数をイメージしますと、=東京都定点数419×一定点平均患者数 530 の積算をしなければいけません。これでは、患者数を素早く正確に知りたいという定点観測の主旨は、無理な望みです。
けれども、たとえ定点患者数が計算値であっても、世の中の感染推移に大まかには反応しますから、見慣れてくれば一定点の平均患者数でも、感染推移を量ることが全く不可能というわけではありません。だからといって、計算値である定点患者数を平均患者数として押し付けられるのは、納得しない当シリーズ如き国民がいても不思議ではありません。むしろ納得しないのが当たり前と当シリーズは判断するものです。
②:基本数式の定点数×定点患者数=平均患者数に従いますと、定点患者数=平均患者数/定点数になりますから、厚労省の“平均患者数”下で定点患者数を計算しますと、0.01265となります。常識的には、この数値を定点患者数として、表1に載せる気分にはとてもなれません。原因は、本来は定点患者数である項目名を”平均患者数“に変えただけで、項目以下の数値列まで変えたわけではありませんので、定点患者数列の計算値のままなのが原因と思われます。
③:おそらくこれは、コロナ感染 watcher にとって定点観測の最大の問題点になると、当シリーズは推測するものです。多くのコロナ感染 watcherは、厚労省の”平均患者数“を言葉通りに信じて、当シリーズ同様に”平均患者数“データベースとして保存している可能性を推測します。それを基にして各種統計的成果を疑いもなく得ているに違いないと思いますのです。しかし、それが定点患者数データベースだとすると、統計的意味が異なりますし、その評価は一変することになります。これは、お役人にはどうでもよいことでしょうが、真面目な watcher にとっては悲惨な結末を迎えることを意味します。
④:項目の定点患者数を”平均患者数“に変えたことによる最大の不都合は、以下に述べることになります。
表1は、厚生省の”平均患者数”列と定点数列が、表計算を不可能とする循環参照に至っていることを警告し、表計算時にエラー発生を告知することになっているのです。循環参照とは、「数式が直接的または間接的に自身のセルを参照している状態」にあるときに起こる、とされています。項目名の変更にある”平均患者数”と定点数ではなく、本体の定点患者数列と定点数列の間に起きたエラーですから、そのどちらかに原因が推測されます。
本来、計算値である定点患者数を、何故、厚労省は都道府県に求めたのかは不明です。おそらく厚労省は、定点患者数の定義である「一定点の平均患者数」を、平均患者数として都道府県に求め、その平均患者数で”患者数”を除して定点数を求めたのではと推測しています。理由は簡単です。複雑な定点数波形を定数化することが出来なかったからと思われます。
定点患者数と平均患者数は、両者の意味を全く異にするものです。前者は計算値であり、後者は実測値です。前者は、後者が分かった時点で、自ずと明らかになる計算値を意味します。となりますと、厚労省は求める順を逆にしている可能性があります。つまり、一定点の平均患者数である定点患者数を”平均患者数”として都道府県に算定を命じ、その”平均患者数”で”患者数”を除して定点数を求め、その定点数で再度”患者数”を除して定点患者数を求めようとして循環参照のエラーを招くことになります。定点数で”患者数”を除して”平均患者数”求めようとしても、表計算はつれなくも循環参照のエラーを告げることになります。定点患者数が計算値であることから、エラーの根源は、”平均患者数”で求めた定点数にあることを示しています。
エラーの原因が定点数にあるとしますと、そのエラーは表計算の結果、基本数式の他項全てに波及し、その全てが相関性を失うとい致命的な欠陥を負うことになります。従って各種の医療統計結果も、当然整合性を失うことになります。エラーの対応は厚労省自身が対応することですから、当シリーズが云々するものではありません。
以上のことは、定点患者数を“平均患者数”に変えたことの問題点を指摘しますが、④にあるように、“平均患者数”を定点患者数に戻せば、全てが解決するというわけにもいかないのです。
Ⅱ:定点観測がもたらす都市伝説
厚労省の”平均患者数“が、定点患者数であったとしますと、当シリーズの”平均患者数“データベースも定点患者数データベースとして見直すことになります。”平均患者数“なる表現を、必要に応じて定点患者数に訂正し、Ⅱ表題について述べることになります。
定点観測開始以来、どうにも馴染めないことがあります。それは、毎週の厚労省平均患者数報告で、東京都や大阪府等の大都市圏平均患者数が、島根県や福井県等の小都市圏平均患者数より少ないことです。例えば、2024/9/22~2024/9/29の報告では、東京都と大阪府の平均患者数が3.04、1.93であるのに対し、島根県と福井県の平均患者数は3.51、2.64であることに示されます。人口が20倍近くある大都市圏都道府県患者数が、その1/20の小都市よりも常に少ないのです。
この状況下では、コロナ感染収束は大都市圏から始まり、最後を小都市圏が見守ることを示唆するものです。大都市圏にしてみれば歓迎すべきことかもしれませんが、中小都市圏にしてみれば、コロナウイルスが大都市圏で収束しても地方に居残る最後を予測させ、はなはだ迷惑な事態を予告するものになります。
もしこれが日本国の平均患者数だとすると、ウイルスは人込み激しい街並みよりも、閑静な田舎町を好んで繁殖することになります。そんなことを信じる人は日本国だけと思うのですが、異議を唱える人を見聞きしないのも事実です。ハイレベルの定点観測がもたらした結果だと言われれば、信じてしまうからでしょうか。
それどころか、大都会は田舎より環境衛生が整っているから患者数が少ないのだという、都市伝説まがいの妄想を信じている人もいるようです。その要因の一つに、大都市圏患者数が少ない厚労省の“平均患者数”報告が、一役買っている気がしないではありません。強い問題意識をもって、Ⅱの課題となったわけです。
当シリーズの、”平均患者数“データベースの右端最後の列は、定点観測開始以来の平均患者数”の平均値欄としていますが、おそらく多くのコロナ感染watcherのデータベースも、同様の平均値欄を作っておられるのでは推測します。その平均値欄を、表1の都道府県名、人口数欄の横に並べ、その3列を切り離し表2左とし、“平均点患者数”データベースを小型化して検討しました。
表2:厚労省報告の”平均患者数“が大都市圏で少ない理由
表2左は、人口数を降順にして、感染モード下の厚労省“平均患者数“を表したものです。東京都の厚労省”平均患者数“は、都道府県患者数中の最小値を示し、その他の大都市圏都道府県の多数が東京都以下に続きます。
表2の右側は、内容は左側と全く同じで、”平均患者数”を降順に並べ替えたもので、患者数最大の都道府県は最下段の佐賀県となります。おそらく佐賀県はびっくりするに違いないと想像します。
表2を要約しますと、定点観測下では、“平均患者数”は都道府県人口数に全く関係ないことを示し、佐賀県を筆頭にして東京都まで続きます。”平均患者数“最大の都道府県は、佐賀県となります。
厚労省は、佐賀県に“平均患者数“は定点患者数でしたと釈明すれば済むことですから、目くじらたてるつもりはありません。けれども、厚労省が、表1定点の平均患者数を“平均患者数”として固執するならば、定点観測の“平均患者数”最高の都道府県の佐賀県に説明する必要があると思われます。佐賀県にしてみれば寝耳に水のことでしょうが、
厚労省は、知ってか知らずか分かりませんが、気遣っている気配はないのは、”平均患者数“は定点患者数であることを既にご存じで、今さら何を言わんやの心境かもしれません。
かくて家人なんぞは、厚労省患者数報告に、印象操作も甚だしいと憤ることになるのです。
批判ばかりしていても、面白いものではありませんし、責任も感じます。次回まとめ(2)は、当シリーズのコロナ感染に関する基本的視点を基に、当シリーズなりに把握した感染実態について述べる予定です。
2024/11/22 精神科木暮龍雄