COVID-19・感染変化の兆し
関西圏を仕切ってきたN501Y変異株は、衰えを見せ始めたようです。N501Y変異株が全感染者の90%を超えた大阪府、兵庫県の、2021/5/14現在の感染者数推移グラフを図1に示します。注目するのは、青の感染者数グラフ右端にピークを持つ巨大なN501波形成分が、大阪府、兵庫県共に下降線を辿っていることです。上昇と下降あってこそのピークですから当たり前と言えばそれまでですが、2ヶ月以上待ち望んでいた感染者数減ですから、その下降部分を見るだけで肩の荷が軽くなろうというものです。
図1:大阪府、兵庫県のCOID-19感染の現況
大阪府と兵庫県の波形は、左右に並べるとまるで双子のようです。一日遅れの首都圏の東京都と神奈川県を並べますと、図2の如くこの両者も双子のように似ています。共有する隣接面も広く、経済的文化的交流が活発になれば、ウイルスの浸透度は高まりますから酷似は当たり前と言うことでしょう。けれども、図1と図2の波形相違は鮮明で、一見して関西圏と首都圏では全く異質なものを感じさせます。その異質さの中核は、N501Y変異株波形と感染爆発(2021/12/31)を境にした出自を異にする左右の波形成分であることは明らかと思います。ウイルスの盛衰に係る経緯がその個々の波形形成の基本となっているわけですから、波形の命名にその基本の相違が反映されないのは、命名の意義を損なうものではないでしょうか。後者をまとめて第3波としたがる一連の報道に、くどいようですが私としては違和感を覚えます。
図2:東京都、神奈川県のCOID-19感染の現況
首都圏でも、N501Yは感染者の75%を占めるに至りました。誰もが、いずれ関西圏並みの90%に達し、巨大なピーク形成を待つ気分だったに違いないと思います。しかしながら、波形上はともかくデータベース上では、感染者数は関西圏に遅ればせながらも減りつつあるのを確認するようになりました。関西圏並みの感染率に達しなければピーク形成もなく、次に進めないのではと危惧していましたが、両圏とも新たな要因が出現したわけでもないのに感染者数が減りつつあるのは、生き物であるウイルスとて衰え始めると一律に衰えるからではと推測されます。同じN501Yに苛まされていたドイツやフランスでも、その感染者数、死亡者数の減少が見られているのです。
問題は今後です。首都圏、関西圏の感染を予測すると次の3通りが考えられます。
1:感染者数が0に向かう。
2:底上げ層4の形成
3:他変異株(インド株等)の新たな感染支配
大阪府や兵庫県のN501Yが、これから爆発的に再活性化する可能性は、感染者数0になる可能性と同じくらい有り得ないと思われます。COVID-19の日本における今までの経過を見ますと、次なる感染状況は、関西圏も首都圏も共に底上げ層4に向かう可能性が推測されます。底上げ層期は、ワクチン投与の最適期と私は思っていますが、2の時期を経て3の事態が生じる前にワクチン普及効果が及べば1の可能性が、及ばざるとあれば3の可能性も覚悟しなければと思っています。
一方、過去の底上げ層1~3を顧みますと、繰り返す度にその層は厚くなっています。高い感染持続は重症感染者蓄積をもたらすでしょうし、関西圏も首都圏も死亡者数のtime lag の山場はこれからで、感染爆発後の2021年1~3月の首都圏を顧みれば明らかです。底上げ層は感染爆発の如き新たな変異を生み出す温床であることも注意する必要があります。
それにしても、世界的なワクチン接種の流れから日本が遅れていることが気がかりです。加えて第二回非常事態宣言後の大阪府、兵庫県の死亡者数激増もただ事ではありません。感染対策への基本が、どこかで道筋を外れてしまった気がします。政権交代もあったし、北海道発第3波の重点攻撃を受けた関西圏の特殊感染事情を差し引いても、尚人為的背景を感じ、詳細な事実経過が明らかになることを願っています。
イギリスからは、緩んだ感染予防の隙を狙ってインド型変異株が侵入し、地域によっては再びロックダウンの手綱を引き締めているニュースが伝わってきています。未だ山あり谷ありの今後を、右往左往の日本が切り抜けられるのか不安です。
2021/5/18
精神科 木暮龍雄
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