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定点患者数と平均患者数 新たな展開

 前回シリーズの「”平均患者数”の罠」で、厚労省報告による”平均患者数”なるものは、本来定点患者数を意味し、定点観測下での平均患者数は、定点患者数を人口数比で補正したものと推測しました。

 患者数を定点数で割れば、取りも直さずそれは定点患者数になる、というのは道理に適ったものと思います。その定点患者数に人口数比を掛けますと平均患者数になりますが、それは元の定点患者数とは全く別な意味を持つものになります。従って、定点患者数を大中小都市圏比で図形的に表示しますと、平均患者数の大中小都市圏比は、形は似ていても全く別なものと推測されます。けれども、その全く別なものとは具体的に何を意味するのか、図形から読み取ることは出来ません。

 図1として前回シリーズ図1の上部分を再掲します。変異株波形なる共通成分もあって、左右の定点患者数と平均患者数波形が、連続的な関連性を維持している錯覚に陥ってしまいます。当然、その関連性を表計算的に証明せねばと努力することになります。

    図1:B定点患者数とB平均患者数の都市圏別患者数

    *上図の大元は、前回シリーズ「平均患者数の罠」の図1上段図です。
*大小都市圏患者数が左右図で逆転しているかに見えるのが、図1の最大特徴で、
*定点患者数と平均患者数が別物であることを、波形からの証明は困難です。

 統計学専門家なら、両者が別物であるとは直ぐ気づくのでしょうが、若くない脳は、左右グラフを見比べては一年余を過ごしました。

 定点患者数と平均患者数が別物と推測されますと、用語の意味の再検討もさることながら、波形的にも左右の大中小都市圏患者数比が異なることに気づきます。左右波形を比較する上で、患者数、都市圏別のほかに、波形を構成する都道府県も同時に見られないものかと思ったのがきっかけで、試行錯誤してたどり着いたのが表2でした。
 定点患者数と平均患者数を、都道府県名と患者数の大小順を同時的に見ることで、両者の違いを包括的に見ることが可能になり、おかげで思わぬ成果を得て以下に述べることになります。

      表2:定点患者数と平均患者数で患者数が逆転する背景 
           2023/5/19~2024/8/18  

 *定点患者数も平均患者数も、枠上=小都市圏、枠内=中都市圏、枠下=大都市圏を表し、
 *下段の都市圏に順じた定点患者数、平均患者数は、左右で逆転することを示しています。
*定点患者数と平均患者数では、大都市圏患者都道府県が異なることにご注意ください。
*中都市圏と小都市圏の都道府県も、定点患者数と平均患者数では異なることになります。 

 先ずは、表2を理解する上で基本になりますので、上記キャプション4項目をご覧頂ければと思います。

 細かなことながら注目するいくつかを挙げます。
 平均患者数(右)の大中小都市圏別都道府県は、人口数から見た都市圏別都道府県順と若干異なることです。例えば、愛知県患者数が東京都より上位に位置することです。3都市圏問題を知れば想定外ではなかったのですが、同一カテゴリー内に限る都道府県患者数変化は、日々変化する感染状況では起こり得るものとして考慮されるとしました。
 幸いなことは、平均患者数の大中小都道府県カテゴリーは、人口数上のカテゴリーを満たし、定点患者数のカテゴリーも同様でした。
 定点患者数(左)の大中小都市圏別比は、人口数に関係なく患者数だけの構成になりますから、そこでの都道府県の立ち位置は複雑になります。それでも、神奈川県の患者数の少なさ(左上5番目)は想定外でした。
 3都府県患者数問題は、その後3都府県に限らないことが推測され、今回は補正しておりませんのでご了解頂きたく思います。
 
 次に、重要と思われる幾つかを箇条書きします。 
 ①:表1下段に、定点患者数と平均患者数の大中小都道府県患者数比の要約を示しました。患者数だけを見るならば、両者は逆転していることになります。
 ②:定点患者数と平均患者数とでは、大中小都市圏を構成する都道府県が全く異なることです。平均患者数で見られた人口数比別都道府県は、定点患者数ではバラバラでまとまらなくなります。
 ③:平均患者数における大都市圏は、兵庫県から愛知県にかけての9都道府県で人口数による都市圏比に一致しますが、定点患者数における大都市圏は、患者数の少ない千葉県から多い佐賀県の9県となります。
 ④:小都市圏の定点患者数は、患者数の少ない順に福井県から奈良県の22都府県が対象になりますが、その中に大都会である東京都から北海道の6都道府県が入ることになり当然患者数が多くなり、逆に大都市圏での患者数は小都市圏よりも少なくなります。
 ⑤:振り返って図1左右の大中小都市圏患者数を見ますと、両者は同じものではなく、全く異なった都道府県で構成されていることになります。

 結論は、定点患者数と平均患者数とでは、見るものが異なっていることと思われます。つまり、前者は一定点から感染を見て、後者は全体から感染を見るという違いが認められることです。

 図2は、表題や波形は図1と変わりませんが、左右のグラフ表題、凡例が異なりことになります。当然のことながらキャプションも変わります。図1の変わりようを図2で示しました。
 厚労省の”平均患者数”は、図2の左グラフに相当しますが、そこにとどまり続けることになるのです。

     図2:B定点患者数とB平均患者数の都市圏別患者数

    *定点患者数の大都市圏は、千葉、石川、熊本、茨城、宮崎、岐阜、愛知、沖縄、佐賀の9県と なり、平均患者数の大都市圏は、兵庫、福岡、北海道、大阪、千葉、神奈川、埼玉、東京、愛知県の9都道府県となります。中小都市圏も、その都道府県はそれぞれで異なることになります。

 定点患者数と平均患者数の基本的な相違は 大中小都市圏都道府県との整合性をクリアしたと思っています。おかげで、両者の患者数があたかも逆転するかに見えた図1の錯覚が理解できます。他にもクリアすべき感染状況はあると思われますが、それらとの整合性についても一つ一つ確かめていかねばと思っています。

 本稿が、遅きに失したことを認めます。けれども、当シリーズにとっては新たな展開の始まりになりました。

                   2024/8/26 精神科木暮龍雄





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