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COVID-19・第3波に続く感染波(1)

 2021年4月1日となりました。データベースを基にして、都道府県単位のCOVID-19の検討を主にした当シリーズも、はや2ケ月を迎えようとしています。感染症は専門外の私ですが、それなりに納得することも多く有意義な2ケ月でした。変異株の出現で新たな局面を迎えつつあります。事態を慎重に見極めねばとの思う一方、事実を知ることこそ最大の感染防御と思い、現実がもたらす課題に対処していかねばと思うこの頃です。

 今日は、以下の3課題について検討することにします。
  1:都道府県単位の発症が目立つこと。
  2:関西圏、特に大阪府、兵庫県に感染者数が急増していること。
     3:1、2とも、感染者数推移グラフ上に共通点があること。

 1は、それぞれの繋がりが明らかでないものの、私の知る限りでは宮城県に始まって、沖縄、山形、愛媛、長野、岐阜、新潟等の各県で認められている共通したCOVID-19・感染の現在です。燎原に火がついたようなあるいはゲリラ戦のように烽火を上げた感染症を感じ、新たな感染の広がりを予感させます。詳細に詰めれば、そういった個々の都道府県間になんらかの関連がある可能性は否定できないと思いますが、今のところ不明という点では、隣県同士の宮城県と山形県でさえも、近いという関係以外にその発症の共通因とおもわれるような出来事や交流が指摘されているわけではありません。
 実は上記の7都道府県以外にもその予備軍のような県がいくつかあり、そんな都道府県の感染情報をデータベースで毎日確認しているところです。感染はより広範に移行すると思われますから、そんな時もあったなと済む一時的現象かもしれません。けれども、これが3番目の項目に関連するとなりますと、検討する余地があると思っています。

   図1:都道府県単独型発症に共通した湾状波形(上)、死亡者数推移(下)

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 先に挙げた7都道府県の感染者数推移グラフの全てを載せるわけにはいきませんので、宮城県、沖縄県、長野県3県に代表してもらい、その感染者数、死亡者数推移グラフを図1としました。各波形の補足的説明は、グラフに盛り込むとグラフが見づらくなるので、これまでのCOVID-19シリーズを参考にして頂ければと思います。

 波形の簡単な説明をします。日付けスケールは3県とも同じですが、感染者数スケールはそれぞれで異なります。ゲノム解析の有無は不詳ですが、定型的な空白の湾状波形(以下、湾状空白)の右側が変異株が疑われているものです。湾状空白の左側波形は、感染爆発を引き起こした波形成分ですが、当シリーズでは新たな波形成分として北海道発の第3波と区別しています。最近、変異株の出現をもって第4波との声を聞きますが、第3波の病原性は多数の死者をもたらした毒性であり、新たな波形成分は感染性と思われますから、両者を合わせて第3波としてまとめてしまうのは不自然に思われます。順序から言えば、感染爆発をもたらした新たな波形成分が第4波で、変異株は第5波とするのが妥当ではないでしょうか。

 問題は、新たな波形成分もj変異株も共に感染性を病原性とすることです。しかしながら、死亡者数は、新たな波形成分より変異株が疑われる波形にはるかに少ない傾向があります。従って、感染性を主とする両者の病原性が、全く同じものと即断するわけにもいきません。COVID-19の今までの波形経過から見ますと、同種異型の2波形成分が出会うと、その瞬間覇権争いが生じ短期間に何れかの波形に移行するものでした。同極の磁石が反発し合っているかに見えるのは、程度の差こそあれ同じ病原性であることが原因なのか、それとも共通した時間的経過が背景にあった故なのか、その判断に迷います。一つ一つ見ていながら気づかなかったことが、並べて気づくことがあったのは、このシリーズで私が学んだことなので、慎重に見極めたいと思っています。

 2の関西圏の大阪府、兵庫県の現状について検討したいと思います。
 関西圏では、変異株が疑われるCOVID-19感染症が猛威を極めています。図2に両府県の感染者、死亡者数推移グラフを示しました。単発の地方県が示す2021/3/30から60日以内の湾状空白を、大阪府兵庫県も同様に示しています。違いは大阪、兵庫県では単発でなく、京都府、奈良県を予備軍とした圏全体に湾状空白が認められることです。単発県の死亡者数推移は、その少なさが共通していますが、関西圏でも死亡者数推移は低く経過し、これからは更に低くな傾向があります。2021/3/30日現在の湾状空白も変異株波形もむ発展途上を思わせますが、いずれ図1の宮城県のようにその波形成分は急速に発達することが予測されます。

       図2:大阪府、兵庫県の感染者数、死亡者数推移

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 首都圏の感染者数推移グラフも、関西圏と同じ条件にして東京都と神奈川県の2都県を対象としました。首都圏の感染者数推移を見ますと、東京都は勿論それ以外の3県でも湾状空白は認めず、代わりに底上げ層3が依然として存在します。関西圏ほどではないのですか、首都圏でも東京都を始め3県で、早くから変異株の侵入が指摘されていました。けれども、感染者数推移グラフにはその存在を疑う湾状空白は認めません。将来は兎も角、今は変異株に侵入を妨げる何かを首都圏にあると思わざるを得ません。

     図3:東京都、神奈川県の感染者数、死亡者数推移

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 2021/3/30の東京都と大阪府の感染者数、死亡者数推移の決定的な違いは、死亡者数推移グラフの右側を占める死亡者数の一群が、両者で背景を全く異にしていることにあると思われます。大阪府の死亡者数群は、感染爆発辺りより以前にピークがあり、その一群の波形を生み出したのは主として第3波にあると判断されます。その第3波は、真逆の病原性を持つ感染爆発の勢いを抑えたこともあって、関西圏では感染爆発による死亡者数の押さえ込みに功があったと思われます。一方、東京都のグラフの死亡者数は、明らかに感染爆発以後に急増したもので、その後の東京都に time lag を含めて死亡者数推移に与えた影響は大でした。2021/3/30になっても、まだその time lag が続いていることがグラフから推測されます。そんな大阪府と東京都との死亡者群の違いは、両者を縦に並べた図7を見れば明らかと思われます。

       図4:大阪府と東京都の死亡者数推移の相違

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 両者の違いの発生は、グラフ上のスケール375辺りの2021/1/20頃となります。大阪府では、第3波が感染爆破の影響を阻んだ結果、感染爆発による死亡者数増を防いだのは幸いでした。しかしながら、それで勢力を削がれた感染爆発は、変異株の関西圏への侵入を容易にしたのではと私は推測しています。一方首都圏では、感染爆発の残る影響で、現在も変異株の侵入を遅らせているのではと思われます。
 問題は、感染爆発の影響が東京では思った以上に長引き、従って東京都の死亡者数も思ったほど減少せず、その病原性を感染性と決め付けることに疑問符が付いたことでしょうか。底上げ層3では致死率は4.7%で、第2波の1.4%よりは3倍高いものの、病原性が毒性の第1波の14.8%よりは低かったは前回述べた通りです。感染爆発の源である新たな波形成分は、第3波との比較で病原性が感染性であることを明らかにしてきましたが、変異株の死亡率は更に低めの移行が推測されますから、感染性と毒性だけでは病原性を充分に満たさない可能性を残したと思われます。

 これから一週間もすると、感染状況は更に変わると思われます。警戒すべきことは、浸透率が75%とされる変異株に、首都圏がいつまで耐えられるかと私は思っています。その間の都道府県の感染者数、死亡者数推移グラフは、いろんな事実を私どもに提供してくれるに違いないと思っています。

                            2021/4/1
                              精神科 木暮龍雄

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