定点観測下のコロナ感染 まとめ(2)
Ⅰ:定点数と定点患者数
A:基本数式3項の見た目順は、定点数、定点患者数、平均患者数ですが、求める順は定点数、平均患者数、定点患者数の順であることを留意する必要があります。何故かと言いますと、平均患者数は、定点領域内の全患者数(又はそれに準ずる)を表する public data となり、定点数が明らかになれば、定点患者数=平均患者数/定点数ですから、定点患者数は自動的に計算されるからです。つまり、定点患者数は計算値であって、自然界にそれ自体が意味を持って実測される数値ではないことになります。
従って、感染 watcher としては、定点数を知ることが最初の仕事になります。定点数の前に定点患者数を求めようとしても、無いものねだりになります。定点数を得ても、もし定点数に信頼性がないと、続く定点患者数、平均患者数は、お互いに縁も所縁もないものになる可能性があります。また定点数は、各都道府県固有の定数であることが必須です。
B:定点数を求める
B-1:当シリーズによる定点数
当シリーズも、全国総定点数5000を如何にして47都道府県に応分するかは、重要な関心課題でした。丁度、感染モードが明らかになり始めた時期に定点数が決められる聞き、感染モードが配慮されない定点数が決まると、その定点数が平均患者数や定点患者数に関与する可能性があり、基本数式の全てに影響するのではと危惧しました。
応分とは当シリーズの表現ですが、定点数が単に都道府県数47で5000を割って得られるものではなく、各都道府県の人口数及び患者数にも応じた配分を意味したことによる表現です。結構大変な作業になると思われましたが、当シリーズとしては、幸いに「患者数の人口数比化」なる感染モードを確信した時期でもあったので、患者数比=人口数比ですから、人口数による定点数配分で済むのではと思ったのです。結果は、不可解な患者数変化を示す都道府県の存在に至ります。
図1は再掲ですが、患者数が人口数比化する感染モードを表現するグラフとして、当シリーズが汎用するもので、右はその散布図です。
図1:患者数が人口数比化する感染モード
左図の赤い線グラフと灰色の棒グラフ先端の両者が、隙間なく併行しているのは患者数の人口数比化を表するからですが、コロナ感染末期に象徴的で特異な感染モードであると、当シリーズは推測しています。平均患者数/日は、赤い線グラフが微細な上下動をすることで日ごとの変動を示しますが、感染モードに波形変化はありませんから、都道府県患者数の変化は併行する人口数比の定数で求めることを可能にすると推測しました。
ところが、感染モードで得た定点数3940を、5000の総定点数に応分する数式に苦労することになり、表計算に詳しい知人の知恵を借りて、下記のAK数式を得て定点数求めることが出来ました。
=(5000-かさ増し分×47)×人口比率+かさ増し分
簡単に数式の計算手順を述べますと、まず、東京都の定点数419を各都道府県に人口数比で割り当て、総定点数3490を求めます。上記数式は、その3490を、定点観測が定めた総点数5000にかさ増し補正することを意図したものです。この数式の長所は、患者数の変化を人口数の変化に捉えている処にあります。
以後、この数式で得た都道府県定点数をAK数式定点数とし、再掲ですが表1に赤い項目として記載しました。
表1:AK数式定点数(赤の数字欄)記載の表計算シート
B-2:AK数式定点数の信頼性
このかさ増し分で得られた定点数が、信頼に値するものであるかを確かめておく必要があります。定点数を始めとした基本数式は、数値や数式のそれぞれが関連性を有しますから、その整合性は、その都度表計算Excelで確かめることになります。
表計算で検討される数や数式が、信頼されると確認されたら、常時使用に耐える確定値としての評価を得ることになります。現在、確定値は人口数、人口数比、実測値であるオープンデータ患者数の3種類だけです。AK数式定点数、“患者数“の確定値としての信頼性はこれから確認することになりますが、定点患者数、平均患者数は、多面的な検討を要し、未確認となります。それらをまとめたものが表1になります。
AK数式で得た定点数(表1右から2列目赤数字)が、信頼できるか否かは、確定値である都道府県人口数、オープンデータ平均患者数との相関関係で確かめることになります。AK定点数と両者との相関が高度であれば、感染の過程で緊密な関係が維持されていることになります。
図2:AK数式定点数と都道府県人口数、オープンデータ平均患者数との相関
図2左は、感染モードの患者数の人口数比化を基礎にしており、プロットが直線状に位置し、相関関係より比例関係が推測されそうです。右図のAK数式定点数とオープンデータ平均患者数との散布図は、時期的を異にした感染状況との相関を示すので貴重です。不可解な患者数変化を示す”患者数”との相関は図4で後述します。プロットのバラツキは、直線に沿って上下に併行しますと相関性は高いと判断されます。どちらかと言えば、AK数式は、患者数より人口数との相関で強い傾向を推測させるものでした。
AK数式定点が、確定値として汎用に耐え得るものと判断しました。
B-3:AK数式定点数と厚労省定点数の比較
厚労省が、定点数を得た背景を自ら明らかにしてくれれば済むことですが、それはコロナ感染の一市井観察者が要請するものではありません。都道府県人口数を基にして、“患者数“と厚労省定点数を比較しますと図3上段の2グラフとなります。
両者に明らかな波形上の違いを認めます。けれども、厚労省の定点数は、右図を基にしたものですが、右図波形が如何にして求められたのかは明らかにしていません。相関図である左右を、散布図として一つのグラフで表し、下段に示しました。
図3:AK数式定点数と厚労定点数の相関図比較
定点数を、もしかして下段近似曲線で求めたとすると、中都市圏から大都市圏に至るプロットのバラツキはかなり高度ですから相関性の低下する度合いは増し、その信頼性は表計算の度に低下することは必至です。相関性無しといっても過言ではない下段波形の近似曲線ですが、定点数設定の緊急性を前にして仕方なかったかもしれません。定点数合計が5164であることに、その可能性が無きにしも有らずを推測します。
前回シリーズの、B:不可解な患者数を示す大都市圏で、平均患者数で”患者数”を除して定点数を求めた可能性を推測しましたが、図4右波形を、前回シリーズの“患者数”波形に置き換えて頂ければ、エラーを伴う不可解な患者数発生の背景を、より説明し得るのではと思います。
厚労省の”患者数“は、その出発点である定点数設定に問題があり、“患者数“と厚労省定点数との乖離は、厚労省が示す基本数式全てに及んだ可能性を当シリーズは推測します。
Ⅱ:平均患者数を求める
A:試行錯誤の平均患者数
冒頭のA:基本数式で留意することで、定点数の次に定点患者数を求めるのは、無駄努力と述べましたが、それは平均患者数を求めれば、定点患者数は自ずと判明することになるからです。けれども、平均患者数の前に定点患者数を知るのは、本末転倒となって無理な願いを意味することになります。
従って、定点数があれば、平均患者数を知ることは同時に定点患者数を知ることにもなります。平均患者数は、公的機関が定点数を基にして求めるものですから public data となります。その定点数が如何にして決められたかは、Ⅱ:B-3で述べた通りなのを知らなければなりません。
当シリーズとしては、AK数式で定点数を得たからには、当然次は平均患者数を求め、AK数式による定点患者数を求めることになります。簡単なことではありませんので、試行錯誤をくりかえすことになります。
図4:AK定点数と“患者数“、オープンデータ平均患者数
図4左は、“患者数”とAK数式定点数との散布図ですが、大都市圏に向かうにつれてバラツキが増え、結果的に両者はほぼ相関関係無しとす結論する以外にありませんでした。
AK数式定点数は、“患者数”との相関が不十分となりますと、public dataから定点患者数をもとめることは困難になります。一方、図4右のAK数式定点数は、都道府県人口数との相関を示し、過去のオープンデータ平均患者数との相関も示します。
AK数式定点数による定点患者数は、図4右で、AK数式定点数がオープンデータ平均患者数と高い相関性を示すことから、AK数式定点数で除して、オープンデータ定点患者数を求めることになります。表1にその結果得たオープンデータ定点患者数を加え、表1改訂版としました。
表1改訂版:オープンデータ平均患者数から求めたオープンデータ平均患者数
表1改訂版に、オープンデータ平均患者数とそれをAK数式定点数で除したオープンデータ定点患者数を示しました。厚労省定点数とAK数式定点数が中央に並び、定点数×定点患者数=平均患者数(=“患者数“)数式が左右に展開し、分かり易くなるように項目順を若干変更しました。
定点観測前のオープンデ-タ平均患者数を、定点観測後の5000の定点数枠で定められたAK数式定点数で除算するのは、図4左でAK数式定点数が都道府県人口数及び患者数と比例関係が推測されるほどですから、使用可と判断したものです。表中のAK数式定点数が、オープンデータ平均患者数及び都道府県人口数と相関することは、図2をご覧頂ければと思います。
ところが、図5左右は、都道府県人口数とオープンデータ定点患者数との相関を求めたものですが、両者の相関は低く十分な相関性を示すものではありませんでした。オープンデータ平均患者数は人口数比に等しいですから、オープンデータ定点患者数と都道府県患者数との相関関係も同様と推測されます。つまり、オープンデータ定点患者数は、感染モードとの相関が十分とは言い難いのです。
図5:都道府県人口数とオープンデータ平均患者数との相関
それでも、人口数と定点患者数データベースで見てきたほどの全くの無関係ではなく、両者の近似曲線は水平ではなく、左右とも上下に勾配を示すものでした。人口数との不十分な相関は、オープンデータ定点患者数がオープンデータ平均患者数を基にしている故を推測し、オープンデ-タ平均患者数以外に適当な平均患者数がないものかと思案することになります。
B:平均患者数
まとめ(1)の冒頭で、「定点観測は、基本数式である定点数×定点患者数=平均患者数と、感染モードの「患者数の人口数比化」という二大原則に加え、不可解な患者数変化が加わり、三位一体となって複雑な感染経過を示す」と述べましたが、「不可解な患者数の変化」を除いた患者数が求められないものかと思案することになります。
図4左、図5右をみますと、大都市圏になるにつれ、近似曲線にそぐわないばらつきが目立ちます。おそらく操作的処理は、4都府県に限らず、中下都市圏の患者数変動の多い都道府県にも及んだ可能性を推測させます。
“患者数”の中で、その操作的処理が最も少ない都道府県として、鳥取県の“患者数”273を人口数比で積算して患者数が求められないものかと思うことになります。鳥取県患者数273も定点数枠で定められた数値ですからそこから脱することはできませんが、人口数最少の鳥取県患者数を人口数比で逆算すれば、操作的処理を免れた鳥取県以外の都道府県患者数が得られるのではと推測しました。
表2:鳥取県”患者数”273を基にした定点患者数と平均患者数
求めるべき都道府県の新たな患者数は、AK数式平均患者数=鳥取県患者数273×人口数比 の数式で表されます。表1改訂版に、上数式で求めたAK式平均患者数が新たに追加され、同平均患者数が同定点数で除算されて、新たなAK数式定点患者数が得られ、青色欄に両者を記した表2を得て掲載することになります。
表2は、表計算としては一歩進んだシート、と当シリーズは判断しています。改訂版を経て表2に至った過程を理解して頂きたいこともあって、長々と述べました。完ぺきとは言えないものの、相関性、整合性は一応満たすものと判断し、表2の青字欄に、AK数式定点数を基にした 定点数×定点患者数=平均患者数 の基本数式を記し、表計算シートとして示すことが出来たと思います。noteでは表計算が出来ませんが、Excel表計算シートを転記して、数値の数式化をすれば表計算が可能になります。
表計算とは、表2の厚労省“患者数”列の最下段にある赤文字の鳥取県患者数セルを、鳥取県の週ごとの患者数値に入れ替えれば、その週ごとのAK数式定点患者数、平均患者数が計算されることを意味し、その結果を表2の青字欄に見ることを可能にします。
例えば鳥取県直近の 2024/11/18~2024/11/24の47週目定点患者数は、前46週の33から 44に増えました。ウイルス好みの寒さ到来が背景にある故と推測されますが、全国患者数も 7319から9759 の自然増を認めることになります。表2に示した赤字欄をそれぞれ33,もしくは44に入れ替えますと、合計欄に 7319もしくは9759 が得られます。
44週目の2024/10/28~2024/11/3は、定点観測始まって以来の鳥取県患者数21を示し、全国患者数最低値 4658 となりました。このまま減少し続けてくれて、患者数ゼロの都道府県が現われれば、感染収束の方向が読めるかもと推測していましたが、ウイルスは頼りである冬の寒さ到来を味方にして、粘り腰の再燃傾向を示したと推測されます。
定点観測の、素早く平均患者数を知りたいとする目的は、表計算上では可能になったと思われます。この平均患者数が決して定点患者数ではないことに留意して頂ければと思います。オープンデータ平均患者数並みに詳細な患者数を知りたければ、更に、=平均患者数×オープンデータ平均患者数/AK数式平均患者数となりますが、更に about になる可能性もあり、5000の定点数枠内での平均患者数対応で済ませるのが妥当ではと判断しています。
次回まとめ(3)は、新たに得られたAK数式定点数、定点患者数、平均患者数についての検討になります。
2024/12/5 精神科木暮龍雄