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コロナ定点観測の定点設定に関する疑義

    A:オープンデータ終了前後のコロナ感染の比較
 コロナ感染オープンデータが終了して三ケ月を経ました。今や公的な感染情報は、「一医療機関の平均患者数」のみの時代となりました。けれども、オープンデータ時代の感染者数推移と定点観測時代の患者数推移が、同質のものかの検証が無いままは気がかりです。
 オープンデータ終了を境にして、その前後の感染状況を簡潔に比較出来ないものかと思案し、データ解析を試みました。

 オープンデータ終了直前1週間の2023/5/2~2023/5/8の都市規模別一日平均感染者数は、大都市圏6160(56%)、中都市圏2951(27%)、小都市圏1850(17%)でした。          
 11日後の、初の定点観測となった2023/5/12~2023/5/19の都市規模別一日平均患者数は、大都市圏24.5(19.7%)、中都市圏45.3(36.4%)、小都市圏54.8(44.0%)でした。以上の経過をまとめますと表1となります。
          *大中小の都道府県の都市圏区分は、図1グラフ参照。
          *定点観測の定点配分についてはBで後述。

               表1:両期間の都市規模別の感染者数(or患者数)比
 オープンデータ 大都市圏:中都市圏:小都市圏 = 0.56:0.27:0.17
 定点観測    大都市圏:中都市圏:小都市圏 = 0.20:0.36:0.44
    
    大中小の都市規模別患者数比が、オープンデータによる同感染者数比と僅か11日間で逆転しているのは、残念ながら両者は異なった感染状況にあることを推測させます。
 表3を見ますと、その後の定点観測2023/5/19~2023/8/16においても、都市規模別患者数比は表1が基調となっていますので、念のため、時期は前後しますが期間をほぼ等しく3ケ月として、オープンデータ終了直前の2023/2/9~2023/5/8の平均感染者数推移と、定点観測開始から2023/5/19~2023/8/13の平均患者数推移をグラフ化して図1としました。

 図1:オープンデータと定点観測における都道府県別の平均感染者数推移

*左スケールは都道府県人口、右スケールは感染者数(or患者数)
*上段オープンデータによる都道府県別の感染者数期間は、2023/2/9~2023/5/8
*下段定点観測による都道府県別の感染者数期間は、2023/5/19~2023/8/16

 図1の上下グラフは、共通点が全くないのが最大特徴と言っても過言ではないくらいです。けれども、上下の赤の折れ線グラフを見比べますと、表1の都市規模別の感染者数比と患者数比の逆転を物語ってくれます。上段波形が下段波形へと短期間に激変させる特別な感染経過が無かったので、上下グラフの違いは、下段グラフの赤折れ線の固定点設定に原因する可能性が推測されました。

   B:定点数割り振りの経緯 
 オープンデータが終了しなければ、固定点5000はオープンデータ感染者数比で割り出され、大都市圏(9)で5000*0.54=2700、中都市圏(16)で5000*0.28=1400、小都市圏(2)で5000*0.18=900の定点数となる筈でした。
 実際には、表1の定点観測の都市規模別患者数比の0.20:0.36:0.44は、都道府県数の47で機械的に割り振りした場合の大中小の都市規模数比なので、人口数や患者数等とは関係ありません。従って、表1で両者が異なるのは目的が違いによりますので、比較の仕様がないのです。
 固定点5000を都道府県数47で等しく割り振るというのは、行政に熱心に携わる人の発想と思われます。都道府県数47で分割した定点数を求めますと、大都市圏5000/(9/47) =957、中都市圏5000/(16/47) =1702、小都市圏5000/(22/47) =2340となります。これでは、小都市圏の患者数が圧倒的に多くなり、大都市圏の患者数は少なくなるのは当たり前です。この算定方法は、2023/8/23~2023/8/20現在でも利用されています。

 つまり、定点観測における大都市圏の定点数957は、オープンデータで必要とされる定点数2700の約1/3でしかなく、残りの2/3は、957以外の医療機関を受診したか、定点観測の患者数算定から除かれたことが推測されます。更に問題となるのは、定点観測の小都市圏定点数2340は、オープンデータで必要とされた定点数900の3倍になることです。中都市圏の場合は、いずれも中間に位置しますが、定点観測の定点数はオープンデータの1400より多めの1700の配分になっています。
 その結果、この定点設定では、図1下段の大都市圏患者数の赤い折れ線グラフが低い波形(=少ない患者数)で経過していることを説明し、同時に3倍の定点数を持つ小都市圏では、その患者数の多さと過剰な詳細波形を説明していると思われます。
 以上のことから、「共通点が全くないのが最大特徴」という図1上下グラフは、定点5000の都道府県数47による割り振りに原因が推測されました。

    C:具体例での検討
 都道府県数47による定点数設定に問題があることを、NHKの2023/8/18付けの、新型コロナ全国感染状況前週比減少も“引き続き対策を”の「一医療機関あたりの平均患者数推移」図を例にして述べたいと思います。    
 同図は、オープンデータによる青色の感染者数推移と定点観測による黄色の患者数推移を連続させ、増加する後者の波形に感染拡大の注意を促すものでした。しかし、意味の全くことなる両者を比較しても仕方ありませんし、図1下段波形を見る限り、定点観測下の患者数経過に注意すべき右肩上がりの変化、つまり新たな変異株ウイルスの登場は認め難いのです。
 そこで、定点観測下の患者数推移を各都市規模別に検討する必要があり、表3を基にして図2に示しました。
 
       図2:定点観測下の都市規模別の平均患者数

*左スケールは全国患者数、右スケールは各都市規模別患者数
       *横軸数字は各検査日順を表し、10は2023/8/13~2023/8/20です。

 図2の各都市圏の患者数波形を見ますと、主として小都市圏患者数(黒の折れ線グラフ)、次いで中都市圏患者数(赤の折れ線グラフ)が全患者数波形(灰色縦棒グラフ)形成に関与し、大人口を擁する大都市圏患者数(青の折れ線グラフ)が関与する割合は少ないことを示しています。3倍の定点数を持つ小都市圏患者数が、1/3の定点数でしかない大都市圏患者数にグラフ波形上勝るのは当然のことで、それを基にした全国患者数は、言わずもがなではないでしょうか。NHKが警鐘を発する全国感染者数増は、人口数で10%台でしかない小都市圏の感染増を表すものでしかないのです。
 そもそも、一般的にグラフ上の合算波形なるものは、全体傾向を見るに便利なものの、落とし穴に気を付けるべきがグラフを扱う際の常識です。ここでの合算波形とは全国患者数波形(灰色縦棒グラフ)となります。「一医療機関あたりの平均患者数推移」で示された全国患者数推移なるものは、小~中都市圏患者数推移(それも小>中)を表現していることになります。
 問題は、小~中都市圏やNHKにあるのではなく、全て都道府県数47で割り振られた定点設定にあるのは言うまでもありません。

結論

 経済活性、夏季休暇、盆休暇等を考慮すれば、全国的な患者数増は時期的に当然と思われます。しかし、図1下段、図2はそういった自然な感染経過を示すものでなく、都道府県数47による定点数割り当てという人為的操作を背景にしたためと思われます。意図的な情報操作とは思いませんが、12週続き、これからも続く「1医療機関あたりの平均患者数」は、公費よる事業ですからこのまま放置はできません。
 都道府県数47による割り振りがダメならば、感染者数が限りなく人口数比に近づくことを図1上段は示していますから、都道府県人口数比で固定点数を割り振る方法が考えられます。

 定点数割り振りに無頓着だった前回の当シリーズは大ミステークでした。その時の諸見解は、諸データと共にミスの証しとして保存します。
 
 
表2:定点観測下における都道府県別の一医療機関あたりの平均感染者数
            2023/5/19~2023/8/13

*1週から5週までの患者数経過が3回抜けています。探していますがまだ見つかりません。

     表3:定点観測下における都市規模別の患者数推移
           2023/5/19~2023/8/13

          図3:都市規模別の患者数推移

                        2023/8/16
                        精神科 木暮龍雄



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