何かが通り過ぎた感じのコロナ感染
抽象的な表題ですが、実際にそんな感じでした。具体的に言いますと、単独支配を成し遂げた変異株エリスは、西から東へと感染領域を変えながら、今や収束しつつあるということでしょうか。変異株エリスとは、EG.5を冠する感染力旺盛なコロナ変異株の一群で、エリスとはギリシャ神話のディスコルディア=不和と争いの神とのことです。死亡者数は不幸中の幸いながら少なく、Caramity Eris は通り過ぎつつあるというのが現在のコロナ感染推移の印象になります。その後は、また別問題なのは言うまでもありません。
それにしても、2022年9月の東北北海道感染の再来はなくてよかったです。当時、国内感染を支配していた三頭立て変異株体制が、感染範囲を九州から東北北海道地方に広げ、その変異株の一つが北海道に多数の死者をもたらしたことがありました。2023年9月現在のコロナ感染も、感染域が西から東に広がったことで似ており、さてはと緊張したものでした。変異株エリスの病原性(毒性もしくは重篤性)は、その時の変異株ほど強くは無かったことで救われた感じですが、そういった低病原性は偶然であっことを受け止めるべきと思っています。「新たなコロナ感染の可能性」が、何かが通り過ぎた感じで終わるなら、それに越したことはないのです。
とはいえ、何かが通り過ぎた感じを、感染経過で確認しておかねばなりません。2023/9/22に「定点観測」による第17週目の患者数報告がありましたので、それを加えた新たな患者数グラフを基にして検討することにします。
前週に続き、2023年5月以降の8行政ブロックごとの患者数を、定点観測下患者数と人口数比で補正した患者数の両グラフを図1としました。
図1:オープンデータ以後の8行政ブロックごとの患者数推移
定点観測下 補正後
日本で唯一のコロナ患者数の「一医療機関の平均患者数」公報ですし、且つ右側の補正後の患者数グラフの原版でもありますから、公報を利用する限り出典を明らかにする必要があると思っています。同公報の基を成す定点配置には不具合があることは以前から指摘しておりますので、列挙が見せしめではないことにご理解頂ければと思います。
表題の「何かが通り過ぎた感じ」は、図1の定点観測と補正後の東日本(東北北海道地方~中部地方)の感染者数が、ピークを経て急速に減少している波形から感じたことに尽きます。オープンデータの一日ごとでなく一週間分のデータですから、波形判断も早めが可能です。2022年9月の東北北海道感染波再来はなんとか避けられた可能性を推測しています。
東日本と西日本とでは、波形ピークが時系列9を境にして異なるのは興味あることですが、次回検討することにします。
それにしても、日本を代表する大都市圏の関東地方と関西地方の定点観測下の感染者数波形は、なんと平穏無事なことでしょうか。その地方を代表する東京都や大阪府の患者数が、その地方の都府県下位に位置しているのにも驚きます。そんな奇妙さを指摘する他県の声が無いのも不思議です。
変異株ピロナが、その変異座の多さで注目されています。遺伝子解析ではBA.2.68型変異型とのことですが、XBB.1系とは異なるので先祖帰りをした感じです。大都市圏感染から始まったオミクロン株の第6波を思い出しますが、過去に学ぶべきことは多いのです。はたして「定点観測」は、その感染の始まりを正確にキャッチできるのでしょうか。
2023/9/25
精神科 木暮龍雄