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年末年始のコロナ感染に見る帰省現象                                

 デルタ株期までの大都市圏(9都道府県)感染者数は、それ以外の全ての中小都市圏(38府県)と一線を画すほど多く、譬えれば日本のコロナ感染の70%以上を飲み込んできたとしても過言ではありません。オミクロン株期になりますと、中小都市圏感染者数は徐々に増加し、第7波後半には大都市圏とほぼ等しくなります。ところがpost第7波期になりますと、勢いに乗る中小都市圏感染者数は時に大都市圏感染者数を上回り、直近2ケ月の両者の加算感染者数比53%:47%は、その人口数比46%:54%と逆転するに至ります。

 きっかけは、2023/1/1を中心にした8日間に及ぶ年末年始の長期休暇と思われ、人の数や動きが大都市圏から中小都市圏に向かって大移動したことが背景に思われます。数値化してその経過を見ますと、感染者数は全体からみれば減少過程にありますので、両都市圏の感染者数の2023/1/1前後での対比による表1となります。当然、感染者数の大都市圏、同の中小都市圏となりますが、両都市圏感染者数比は人口数比より7%の低下を招きました。

   表1:post第7波・都市規模別の感染者数 2022/10/10~2023/3/21
                大都市圏  中小都市圏       対比 
      2023/1/1以前     3,908,156       3,746,438        51% : 49%
      2023/1/1以後          1,967.121          2,187,604        47% : 53%    
   post 第7波全体        5,875,277          5,934,042        50% : 50%
                       人口       68,467,000        58,605,000  54% : 46%

        図1:post第7波・都市規模別の感染者数推移 2022/10/10~2023/3/21

*左図は7日加算平均した感染者数、右図は感染者実数をグラフ化したもの
 *左図は表1の全経過を示し、右図は2023/2/1からの経過を拡大したものです。
*左図は2023/1/1を境にして大都市圏中小都市圏→大都市圏中小都市圏の感染者数推移

 図1は、表1の2都市規模間の感染者数差経緯をグラフ化したものです。
 左グラフの大都市圏感染者数(青)と中小都市圏感染者数(赤)は、2023/1/1を境にして青赤の位相を逆転して現在に至ります。右グラフは、2023/1/1後の中小都市圏(赤)の感染者数が大都市圏感染者数(青)を、2ケ月半以上の長期にわたって常時上回る経緯を示しています。位相の逆転は、多くの都会人が出自ふるさとに向かう年末年始休暇の帰省がもたらしたものと推測されます。コロナ感染の「帰省現象」と呼ぶに相応しい変化ですが、民族大移動にも譬えられるほどの多くの帰省客が、同時に地方のコロナ感染増を地方に促した状況は、不謹慎な表現かもしれませんが、まるでコロナ感染の野外実習を見ている気がしないではありません。

 右グラフ端の2023/3/24現在は、オーバーヒートした中小都市圏感染者数がやっと峠を越え、大都市圏感染者数とグラフ上等高平行線に立ち戻る気配が示されています。現オミクロン株が存続する限り、これからの両都市圏感染者数比は、両都市圏の人口数比大都市圏54%:中小都市圏46%(=1.2:1)に限りなく近づくと推測されます。それにしても、現在対比から7%回復を見るのは相応の日数を要するものと推測されます。

 パンデミック再度到来はお断りですが、万が一を思うと、帰省という古来の風習が感染に及ぼす影響を承知しておく必要もあろうというものです。
 念のため、図2に過去の年末年始感染状況を振り返ってみました。

       図2:コロナ感染開始以来の年末年始感染状況

検討期間は上中グラフは1月1日前後の3ケ月、下段グラフは1/1~3/24です。
グラフは感染者実数を折れ線で表し、スケールは3グラフで異なります。
下方矢印棒線は各グラフでの1月1日(スケール=93)を示します。
中段グラフの1月1日以前は、感染者数0ではありません。

 三年三様の年末年始感染者数波形に驚きと同時に注目してしまいます。特に、中小都市圏感染者数(赤折れ線)が年を経て存在感を増し、大都市圏感染者数(青折れ線)とほぼ等しくなる感染経過に納得します。
 それぞれの年末年始のコロナ感染について以下にまとめます。    

 上段大都市圏(9)グラフ(青)は、北海道外国人観光客がもたらしたコロナ感染が全国に拡散した結果が先ず現れ(1月1日左側折れ線部分)、次いで東京都が発症地と推測される新たな感染波が突如爆発的に表れ、両者が混合して(1月1日右側折れ線部分)全国を支配した経過を表しています。その混合による死亡率上昇があったことを念頭にして上段図を見ていますと、両者併せて’第三波’なる通称となっている現状に、感染の複雑さと感染波命名の難しさに思い至ります(参照:「COVID-19・最悪の感染波=第3波」)。私が、post第7波を第8波と記せずにいるのも、背景を同じくする思いからです。

 中段グラフは、オミクロン株流行の直前と、その後の爆発的な発現を示しています。2022/1/1以前は、年末年始の里帰り自粛キャンペーンが全国的に徹底された当時の経過を表している可能性を思います。私どもも、東京や神奈川に住む孫子供たちに会えなかったことが思い出される1月1日でした。
 沖縄県、広島県等の基地がオミクロン株感染の先駆けであったことは、当シリーズ2022/3/22「COVID-19・検疫が予告するもの1」で述べましたが、
上中段グラフは、日本におけるコロナ感染が、その世界的な流れの中の狭間にあることを実感させるものでした。

 下段グラフは、2023/1/1以後の両都市圏感染者数が、規則的にそして共に急速に減少する経緯が特異で、2023/1/1以前の感染者数過程と異なるのに注目されます。図1では見られなかったことなので、データの加算平均は波形描出に欠かせませんが、その評価には慎重さを求められると思われました。
 全体的に規則的で且つ急速な減少を認めつも、中小都市圏での感染者数増を認めるのは「帰省現象」のみで説明し得るのか検討されるべきと思われました。データの切り取り方次第で違いが明らかになった規則的で急速な減少は、「帰省現象」なるものと、63%の「その他の変異株」出現や感染者数の都道府県人口数比化等との関連で今後検討される必要を感じます。

                        2023/3/24
                        精神科 木暮龍雄


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