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それでも地球は回る Galileo Galilei

    簡単な事実でも、周囲の理解を得たいと願えば願うほど、それは難しくなると当シリーズは実感しています。パンデミックコロナの行きつく処を感じ、「感染者数は人口数比化する」と述べると、なんとなく世の中から爪はじきされるような気分を味わうことになり、その実感はさらに強まります。
 表題は、Galileo Galilei の有名な呟きですが、青天の霹靂の如き大発見「地球は回る」の事実故に罪に問われ、獄死をした人ならではの想いが伝わります。当シリーズとしては Galileo Galilei ごときの大発見した覚えは毛頭なく、当たり前のことを語ろうとしているのに大壁に遮られた気がし、正直な処、何でこんなこになるのと不思議に思うのが今の心境です。思い当たるのは、「感染者数は人口数比化する」が事実であろうがなかろうが、結局、多くの人の現実認識や立場と異にする内容がそのフレーズにある故、と推測する以外にありません。
 未だ元気なつもりですが、齢の所為かパソコンとはいえ原稿書きに苦労し、挙句の長時間の机上作業は身体的にも辛くなりました。コロナ感染もそろそろ終息の気配があり、当シリーズも潮時を感じます。それでも、コロナ感染の最後を見届けたい気持ちは中々消えません。
   
 以下、「感染者数は人口数比化する」は長々しい文言ですので、当シリーズのコロナ感染に対する提言としますのでご理解頂きたいと思います。

 誤解されないよう最初にお断りしておきます。提言は、人口を構成する各都道府県民全てにコロナ感染が及ぶと言っているのではありません。その意味する処は、「ウイルスがパンデミック化して全国くまなく蔓延すれば、個々人が感染する機会(=率)は全ての人に等しくなり、結果として感染者数は都道府県の人口数比化する」ということになります。
 提言下では、各都道府それぞれ異なる人口数ですが、感染率はほぼ等しくなり、それ故に都道府県同士の感染者数比は一定を保つと推測されます。当然、変異株の感染力に応じて感染者数は一様に増減しますし、また一過性の地域的感染差が生じれば、その感染者数差を認めることにもなります。提言は極めて常識的な認識から始まるもので、正体不明な幻の如き集団免疫等とも無縁です。
 
 コロナ感染が、全国くまなく感染し始めたのは、オミクロン株第6波後半からでした。アルファ波やデルタ波期は、それに比べれば大都会中心に偏在した感染だったのです。しかしながら、第6波後半期から提言のごとき感染状況が予測されたわけではありません。当初は、「都市人口依存型感染」と呼称し、やがて変異株の多頭性支配を契機にして「都市人口数比化」となり、オープンデータ終了前の2023年2~3月頃から現在の提言となったものです。提言はその場の思いつきではないものの、感染の長期化経緯によって変遷したのは確かでした。
 当シリーズにとって、 提言の決め手となったのは、オープンデータ終了前に得た図1グラフでした。

        図1:提言の発端・オミクロン株第7波~オープンデータ終了時の
           都道府県の感染者数と人口

*グラフ期間は2022/9/1~2023/5/8です。
*印1~2は、東北北海道と関東地方に優勢だった一過性のコロナ感染の主要都県を示します  
  *図は、感染者数が都道府県人口数に比例しながらも、感染の地域性も併せて示しています。

 グラフは、誰が見ても明らかな感染者数(赤の線グラフ)と人口数(青の棒グラフ)とが正比例した並行を示しています。*1や*2の如き地域に限局した一時的な感染も示されているのが、妙に現実感のあるグラフだなと当時驚いたものでした。けれども、加算平均を繰り返した1ケ月後には両突起はグラフ上でほぼ消退し、感染者数は各都道府県人口数の先端をなぞる如く赤い線グラフに変わるのです。つまり、都道府県の感染者数は、その人口数波形で表すことが可能になってくるのです。感染者数が人口数比化しますから、人口数波形は感染者数推移波形の代用になるくらいで、そのグラフ作成上の手間が省けたものでした。

 けれども、この図1グラフを求めるのは、たとえ日付を明示したとしても誰でも何時でも簡単容易に手にするわけには行きません。先ずオープンデータに基づくデータベースが手元にあることが必須ですし、若干の表計算知識も必要とします。それらの有無は経験的なものですから仕方がないのですが、更に問題となったのは、この提言が、平均患者数を用いた定点観測下に入っても続くことを証明しなければならないことでした。

 提言の証明は、図1の如きオープンデータ仕立てのデータベースでは比較的容易でしたが、平均患者数を用いた定点観測下データベースでは、定点設定段階から難題が付き纏うことになります。それでも平均患者数を基本データとした患者数報告が、唯一の公的感染情報源として厚労省が公開することになります。この唯一の感染情報を利用する前提に、定点設定は勿論、平均患者数の意味を理解しておくことが大事ですが、その前になんとしてもオープンデータの最大成果である図1の感染者数の人口数比化する事実だけは、生きていてもらわなければなりません。

         図2:都道府県人口と `患者数’

*‘患者数’は、当シリーズが各都道府県ホームページから直接得たものです。

    有難いことに、定点観測の原点である定点数を求める作業過程で、当シリーズが各自治体のホームページで求めた都道府県別‘患者数’(下掲表2の‘患者数’欄参照)が、人口数に比例しているのをグラフ上で確認出来ました(図2)。とても図1ほどの正比例を示すものでないのは、50回近い患者数報告の中の1回の根拠でしかない ‘患者数’グラフですから、幾数回の加算平均が繰り返される必要があるのは承知です。けれども、"平均患者数"のみが報告義務となった定点観測では、患者数や定点数は使い捨てとなって保存の手間をかける都道府県は少なくなり、定点数や患者数が揃ったグラフを求めることは至難の現状をご理解頂ければと思います。ですから、2024/2/19~2024/2/25の‘患者数’は、ある意味貴重な資料かもしれません。
 取り敢えず、図2で図1を代弁させて頂くとして、表計算知識はさておき、次は定点観測下での提言の理論的な裏付け作業に入ることになります。

 図3は、定点観測に入ってからの都道府県別人口数と患者数(左)、都道府県別人口と平均患者数(右)の二グラフを並べたものです。患者数と平均患者数の違いは、前者は人口数とは関係なく患者数だけを単純加算平均したものです。平均患者数は、患者数を人口数で割って一都道府県別の平均患者数を求めたものになります。前者は表計算やグラフ作成等に直接活用することが可能ですが、後者はデータの次元を変えて他のデータとの比較に利用することが多いので、グラフ上操作的に汎用されるものになります。厚労省の患者数を定点数で割った平均患者数と同義になります。

    図3:都道府県人口と患者数(左)と平均患者数(右)

*右図の平均患者数の基は左図の患者数です。

    図3左の都道府県の‘患者数’波形は、日付を違えた前回シリーズの図2右の「定点観測・都道府県患者数と平均患者数」の波形と全く同波型であることにお気付き頂ければと思います。つまり都道府県患者数波形は、オミクロン株波期にあっては原則として同一波形を呈し、患者数比は一定であることを意味しています。提言が意味する処の、「パンデミックウイルスが全国くまなく浸透すれば、個々人が感染する率は全ての人に等しくなり、結果として都道府県の人口数比化に至る」の太字部分を表していることになります。横一線の白い直線は上下への勾配は認められず、従って患者数比の定数化を示し、このグラフが作成日時に関わらず同型であることを示すことになります。

 右図の平均患者数は、左図の患者数を都道府県人口数で割った結果を表しています。式で表しますと=感染者数/(都道府県人口数/全人口数)となります。棒グラフの都道府県数と式に含まれている都道府県人口数とは、後者が分母化することで逆数関係になり、棒グラフの人口数波形と線グラフの人口数波形とは反比例することになります。逆数関係を承知しておけば、右図の反比例の理解は容易と思われますが、提言の意味する処の、「パンデミックウイルスが全国くまなく浸透すれば、個々人が感染する率は全ての人に等しくなり、結果として都道府県の人口数比化に至る」の太字部分を表していることになります。
 
 図2の‘患者数’が人口数に比例していることに加え、以上の二事実を合わせれば、提言の意味する処は満たされ、提言は定点観測下でも維持されているものと、当シリーズは判断することになります。少ない患者数となって細々と続く厚労省の患者数報告ですが、そんな状況下でも提言は維持されていると当シリーズは判断するものです。
 左図波型が原則的に同型維持を出来なくなる時は、患者数がゼロの都道府県が現れた時と予測します。それは、感染末期の兆しの可能性を推測させるものと思われます。

 しかしながら、提言以外に、定点観測下では検討すべき新たな問題が生まれます。
 それば、厚労省の提供する定点観測下の平均患者数は、逆数となった定点数を用いるが故に、下に参考として掲載する表2の ‘患者数’ と反比例する結果を招くことです。平均患者数を基にして定点観測下の患者数推移をグラフ化しますと図4左となります。オープンデータ時には一貫して上から大中小順だった患者数は、定点数が分母化して逆数関係になり小中大に逆転し、図4左が生まれることになります。
 図4左は、眺めるだけなら参考になりますが、感染の評価手段の一つである都市規模別患者数をこのグラフに当て嵌めると問題が生じます。

    図4:変異株エリスとピロラの大中小都市規模別患者数

*左右グラは、左ピークはハリス株波形、右ピークはピロラ株波形で、都市規模比を表します
*左図は、平均患者数を基にした図ですので、右図の補正後の都市規模別患者数と反比例します。

 一般的に、新たな変異株による感染が始まる場合(特に外来種感染の場合)、日本のような島国では感染が小都市圏から始まる可能性は稀で、普通なら大都市圏から始まるものと推測されます。図4左の大都市圏の患者数割合が中小都市圏より遥かに少ないのは、新たな変異株感染の登場を、大都市圏が量、質を踏まえて素早く正確にカウントするに適切とは思えません。一方、図4左の小都市圏の患者数は圧倒的に多くなりますから、新たな変異株が登場すると小都市圏では過大にカウントされる可能性が推測されます。実際の患者数報告経過にあっても、新たな感染傾向が始まりますと、先ず中小都市圏の都道府県の患者数増から始まり、大都会の都道府県患者数が遅れて増えるのが何時も気にしながら見ていたものでした。つまり、反比例した都市規模差グラフ通りに患者数が報告される結果を招く可能性があるのです。

 図4右は、補正によって得られた都市規模別の患者数グラフです。補正に関しては、当シリーズのコロナ感染者数の人口数比化について、をご覧頂ければと思います。図4右は、オープンデータ時から続く大中小順の都市規模差が保たれた感染継続を認めます。グラフ化には至りませんでしたが。図2でも大中小順の傾向を認めます。ピロラ波を過ぎて細々とした感染者数報告でも、その都市規模差の感染も続くことを示します。ということは。定点観測下の逆転した左図の小中大順の都市規模差感染も続くことになります。

 感染状況のいち早い把握が可とする定点観測紹介サイトを見聞きした覚えがありますが、図4左は誤った情報を伝える可能性を示していると思われます。反比例するグラフを逆さまに見れば済むわけにはいかないのです。反比例で示される平均患者数の感染評価には、要注意ということになります。定点観測は、インフルエンザ等の感染症対策にも適用されていますので、おそらく反比例する都市規模差対策は考慮されているものと推測しますが。

 都健安研センターの、「世界の新型コロナウイルス変異株流行状況 ( データの更新:4月24日 )」を注意深く見ています。新たな変異株出現の有無を確かめることを主としていますが、ピロラ株による感染の膠着状態を示す現況が、日本を含め世界中の各国に共通しているのが覗えます。おそらく、感染者数の人口数比化は日本に限ったことでは無かろうと推測していますが、他国のことまで気遣う余裕は今の当シリーズにはありません。

  要約 
 今回の論旨は、下掲の表1の定点観測下患者数データベースの、列右端欄の平均患者数、行下端欄の患者数経過欄の両サマリーを説明、解釈したことになります。患者数ゼロの都道府県が現れれば、コロナ感染の最終段開始となります。当シリーズとしては、パンデミックの終末を見届けることが、今後同じような感染を迎える際の貴重な教訓になると考えます。
 臨終前の病者が迎えるであろう死を見届けない医師はいないと当シリーズは考えます。相手は病者ではなくウイルスですが、当シリーズとしては、その息を引き取る様をじっくり見届けたいと思うのです。

    表1:定点観測下・平均患者数の識別データベース(参考)

 *前回より患者数増は赤領域、患者数減は黒字域で、A,Bはエリス波、Cはピロラ波を示します。     *平均欄は、都道府県平均患者数は右列端、報告週ごとの平均患者数推移は下行端に示されます。
*3~4週のデータを得る機会を逸し、抜けています。

 識別データベース(上記表1)は、当シリーズの定点観測下で得た収穫の一つと思っています。全国感染状況把握が容易になったことに加え、A、B間に溝を認める詳細さが収穫でした。表1をオープンデータ時代に思いつかなかったことが後悔されます。色分けは偶然思いついたものですが、既にこの形式のデータベースを考えた先達がいるに違いないと思っています。

     表2:A,B,Cの各定点数、平均患者数、定点患者数(参考) 

厚労省の患者数報告は赤文字の中のB平均患者数のみです。

 表題の「それでも地球は回る」と呟いた Galileo Galilei は、事実を曲げることを拒否し、裁判の結果獄中死となります。おそらく牢獄に向かう道すがら、この呟きを繰り返したに違いないと想像します。世界をみれば今もその当時と大差ない国々があります。日本であることをせめて有難いと思いつつ、事実を知り伝えることの難しさは今の日本でも昔も同じであることを、ガリレオの呟きに共鳴して当シリーズの心境を託しました。

                      2024/4/24
                      精神科木暮龍雄 


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