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感染者ゼロの日が無いオミクロン
定点観測による患者数データベースは、一桁台ながら都道府県患者数で日々満杯です。厚労省による患者数報告がびっしり記入された都道府県地図は、今やコロナ感染がべったりとはりついた感じです。感染者ゼロの都道府県がそろそろ現れてもと思うのですが、その気配はありません。
感染者ゼロの都道府県を見たのは、デルタ株感染が最後でした。オミクロン株感染になってからは、定点観測に入った現在を含めて約1年10ケ月、感染者数ゼロの都道府県を見ません。
念のため、アルファ株感染末期からオミクロン株に至るまでと、オミクロン株感染になってからの感染者数ゼロの都道府県数をグラフ化して図1とし、比較しました。
図1:感染者ゼロの都道府県出現の推移
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*左右とも、左スケールは感染者数、右スケールは感染者ゼロの都道府県数
*左図の右端は、右図の左端の一部を示し、期間は約1ケ月です。
図1左側のデルタ株感染による感染者ゼロを見た期間は約3ケ月半強で、その間、感染者ゼロの都道府県数が全体(=47都道府県)の74%を占める日もあり、感染者ゼロの都道府県はいとも簡単に表れていました。一方、オミクロン株感染では、オープンデータ終了まで感染者ゼロの都道府県は現れず(図1右側)、定点観測の現在になってもそれは続きます。一見、ミクロン株の厳しい感染の故と思いたくなります。
けれども、第8波が終了したと思われる2023/3/25を過ぎても、図1右側のグラフに感染者ゼロの都道府県が現れません。このことは、アルファ株やデルタ株感染とは、感染に基本的な違いを背景に推測させ、第8波に至るまでの詳細な経過を知る必要がありました。
感染者数経過を大と中小の二都市規模別にみますと(図2右側)、第7波までは感染者数の人口数比化は不十分でしたが、第8波に至ってその目的にほぼ達したことを示しています。人口数比化に至るということは、表現を変えれば感染が全国に広く均等に浸透することですから、感染者ゼロの都道府県を見ないのは、感染者数が都道府県人口数比に至った結果を意味します。
図2:オミクロン株感染を感染者数の都道府県人口数比化から見る
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*右図は大都市圏感染者数と拮抗する中小都市圏感染者数のオミクロン株での推移です。
*右図の大都市圏感染線者数と中小都市圏感染者数の合計が、左図を表しています。
*第8波の双性ピークは元日を挟む帰省現象で、以後中小都市圏感染者数比が強まります。
図2右側は、大都市圏(青面グラフ)と拮抗する中小都市圏(濃青色線グラフ)のオミクロン株感染者数推移を表します。両都市圏の人口数比は54%:46%ですから、人口数比化した感染者数の行きつくところはこの対比にあることになりますが、実際は、この比値を中心にして強まったり、逆転したりしながら経過します(図3)。
図3:第8波の拡大グラフ
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*2023/1/1以降は、中小都市圏感染者数優位が3ケ月以上続き、
*その後再び大都市圏感染者数に戻って定点観測へ移行します。
第8波は、元日(中央のマイナスに切れ込むピーク成分)を境にして、それ以前は大都市圏優位を(青の折れ線グラフが上)、その後は中小都市圏優位を(赤の折れ線が上)表し、人口数比化を通して帰省現象を反映しているものでした。図3の右端は、その拡大を前回シリーズ「定点報告による患者数報告の在り様」の図2左側で示しましたが、大都市圏患者数が再び中小都市圏患者数数を上回りながら、定点観測に入って行くことを示し、その後もこの関係は維持されているものと思われます。
結論は、都道府県に感染者ゼロを見ないオミクロン株感染は、第8波をもって感染者数の人口数比化をほぼ成しとげ、定点観測の現在に至ってもその状況は続いていると推測されることになります。
新たな変異株の登場があり得るかも知れませんが、感染の勢いは全体に弱まりつつあると思われ、コロナ収束が近い感じがします。オミクロン株は、人口数比化を維持しながら収束すると予測されますが、そうでないかもしれません。いずれにせよ、所謂パンデミックなるものの収束に関して、オミクロン株は重要な示唆を与えてくれるものと思われます。
注:定点観測による患者数は一週間の平均値ですから、その間に感染者ゼロの都道府県があった可能性があります。けれども、その平均患者数に感染者ゼロが一つも無いのは、その可能性の少なさを押して知るべしと思われました。
2023/10/20
精神科 木暮龍雄