COVID-19・第3波の起源
変異型コロナウイルスの感染情報は、メディア上日常的に行き交うようになりました。厚生労働省は、都道府県のいくつかと空港検疫で、2021/03/9までに345件の変異型コロナウイルス株が検出されたと報じています。変異型の正体がまだよく分からない現在では、今少し経過を見守るしかないと思っています。病原性がせめて感染性か毒性のいずれにシフトしているのか、その手がかりはないものかと、遺伝子検査で変異型ウイルスが多く検出された大阪府、兵庫県、埼玉県、神奈川県、新潟県等の感染者数、死亡者数の各数値の推移を追っている現状です。
専門家の解説によりますと、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツでは、コロナ変異種の入れ替えが70%ほど起こっているとのことですが、それらの国の感染者数推移グラフは、対象者数の多さもあってか波形上の変化として見るに至っていません。ウイルスが入れ替わっているとの専門医の表現に注目していますが、日本では相応の遺伝子検査が広がらなければ、変異型の詳細な状況把握はつかめない現状のようです。私の手元にある感染者数推移グラフ上からは、前回載せた宮城県、福島県での感染者数増加が気になりますが、他の都道府県では、一過性と思われる変化以外に激変の兆しは見当たらず、感染はまだ2〜3週は従来型主導が続くと推測しています。
従来型ウイルスがお払い箱になる前に、それらが残した感染状況を私なりに整理しておかねばと思っています。
第3波の起源
その課題の一つは、多数の死亡者を出した第3波の起源です。
その前に図1グラフを説明します。2021/3/17時点の全国版・月別1日平均感染者数推移グラフです。縦軸はその月の1日平均感染者数を表し、横軸は2020年1月を1とし、以後2021年3月の15までの各月を表しています。問題の第3波は、図1では2020/9/6頃から始まって2020/10/30頃に終わる約55日の底上げ層2と新たな波形成分の間に隠れています。
図1:全国版:月別1日平均感染者数推移2021/3/17
全国版では、第3波はその波形を窺うことは出来なくなりました。図1の波形は、北海道、関西を除いた首都圏や他県の多くに共通していますので、第3波に関してはこれをもって良しとする人がいても不思議ではありませんが、そう簡単には行きません。
図2は、図1と同じく2021/3/17時点の北海道と大阪の月別1日平均感染者数グラフを上下に並べたものです。つまり図1と同一期間ながら別地域感染を検討することになります。
第3波は、図1によれば底上げ層2の最中の10月上旬に、北海道に突如発生しました。突如であることは、上段北海道グラフの第3波の急峻な立ち上がりが示しています。11月上旬に生まれた新たな波形成分が、第3波の勢いを削いだのは、その病原性である感染性と毒性をお互いに逆にすることからも理解されますが、第3波は北海道に尚残りつつ、1ケ月ほどして主に関西圏に飛び火する際に、北海道では新たな波形成分を、大阪では第3波を、出っ張りとしてそのピークをグラフ上に残しました。出っ張りの出自は、その期日を確認すれば相方が明らかにしてくれています。
図2:北海道、大坂府・月別1日平均感染者数推移2021/3/17
私としては、図2の偶然の出来が気に入っています、それは第3波と新たな波形成分が合わさった北海道と大阪の巨大な波形が、向き合った構図をとることで事実の表裏を見せていること、また小さな出っ張りはその期日を確認するとその出自を相手方が明らかにしていること等が、あたかも物語のように事態を説明してくれるからです。
厚生労働省と専門家会議は、北海道を訪れた中国人観光客が持ち込んだウイルスが感染発端と推定していますが、このことについて異を唱える人はいないと思われます。昨夏は、9月中旬まで気温35度の日がある猛暑でした。北海道は、日本の観光地の目玉の一つで、コロナ渦中の外国からも観光と避暑を兼ねて多くのインバウンド客が訪れました。そんな観光日本の看板に傷がつくと忖度したからでしょうか、まだ第3波と明言すれば経済効果への波及を思ったからでしょうか、第3波という表現自体に社会的に消極的な雰囲気があったのは確かと思われます。
新たな波形成分は、北海道起源成分とは異なり国内ウイルスの突然変異が疑われただけあって感染進行は緩徐で、12月下旬になって「COVID-19・データベース考」の2020/12/20の全国版感染者数推移グラフに見る新たな波形成分にまでになったと思われます。2020年10月上旬北海道に見られた第3波と、2020年11上旬福岡に見られた新たな波形成分以外に、独立した意味を持つ波形成分は底上げ層2以外になかったので、全国版で見る第3波は両者の合体したものと推測した次第です。そして新たな波形成分は、感染爆発の主役を演ずるまでになりました。それぞれの波形成分は、それぞれ臨床上の表現を異にしていることに疑いはないと私は思っています。つまり、第3波は本質的に外因性感染波形なのです。
ここに来て、「COVID-19・データベース考」で述べたウイルス覇権仮説は、基本的に再検討されるべきと思われました。理由は第3波が突発的な外因成分であって、ウイルス同士の覇権争いの経過を抜きして現れたという事実によります。もちろん、第3波が外因性波形だったとしても、新たな波形成分との覇権争いはあった筈ですが、出発点での規定に問題があった以上、読んで頂いた方々にお詫びして訂正する以外にないと思います。問題部分は3月中は消去せずに載せ、いずれ訂正して再上程する予定です。
残された課題の他の一つ`底上げ層’については、次回に遅らせます。
2021/3/19
精神科 木暮龍雄