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変異株覇権レース(2)

 暫くの間、変異株覇権レースを追うことにします。これが最後と思わせながら、変異株感染は繰り返しやってきます。このまま変異株ピロラ感染を迎えるとあれば、変異株覇権レース期から感染ピークを過ぎるまで、手に取るように経過を見ることができそうです。自然科学の恩恵を多少でも預かった身としては、またかと思いつつも避けることなく、しっかり見届けておかねばと思っています。

 前回の表題を変異株覇権レース(1)とし、今回はその(2)としました。 表1として、定点観測下の平均患者数の2023/12/17識別データベースを以下に掲載しましたが、比較に必要な前回2023/12/10識別データベースとその検討結果はリンク先を表示しましたのでご覧頂ければと思います。

    表1:定点観測下の患者数・2023/12/17識別データベース

*患者数が前回より増えた場合を赤で、減少した場合は黒、と色で識別しています。
*赤色域はA、B、Cの3領域に大別され、A、Bは変異株ハリスによる感染期を表し、
C 領域は、変異株ピロラ前の変異株覇権レース期を推測しています。
*3,4週データが欠落していますので、第5週前の色識別はありません。

 第30週目の患者数は、大都市圏で一貫した増加を認めますが、中小都市圏の7県で患者数が減少を示しています。全国平均患者数は増加を持続していますので、定点観測下の都道府県平均患者数にしては意外でした。変異株覇権レースに何らかの変化が起きた可能性を推測しています。
 表1では、北海道、長野県、山梨県での患者数増が目立っていますが、その背景については不詳です。

       図1:変異株エリスとその後の患者数経過(2)

*下方棒矢印は、変異株エリスの覇権がグラフ上終了した時点で、23週目に該当。
*図1の左右グラフ右端の上昇部分が、表1の C 部分の赤色域を表します。
*変異株エリス収束後、棒矢印後に新たな覇権争いが生じたことを波形上昇は示しています。

 第29週目(前回)の患者数グラフとの違いは、図1左右とも右端部の上昇がより顕著になったことです。覇権レースは続いていることが推測されますが、以下表2の上位5種の変異株構成を見ますと、26~29週でその入れ替わりが激しくなっているのが明らかです。表1の C 領域で黒色県が増えたのは、その出入りの激しさ故を反映している可能性を推測しています。

        表2:国内の変異株上位5種の推移(2)

*上記3期間に亙る変異株上位5種の推移は、都健安センターの”世界の新型コロナウイルス変異株流行株状況12月22日”の中の、日本の変異株数推移から引用したものです。

 国内の上位変異株は、首位 HK.3が3期間とも変わりないものの、26~29週目になり、変異株ピロラは第3位に上昇し、変異株エリスEG.5.1は5位以内から去り、変異株ピロラ子孫のJN.1が上位5種目に加わりました。新旧や出自の違いもあり、覇権レースは熾烈と想像しています。
 都健安研センターによりますと、東京都の変異株順位は、2023/11/27からEG.5.1.1、HK.3、GK.1.1 順位のまま連続しており、変異株ピロラは未だ3位外に位置していると思われます。全国の感染状況とはかなり異なっていますが、ゲノム解析者数は定点数の配分とは無関係ですので、大都会ならではの事情によるものかと注目しています。
 
 欧米の感染状況は、変異株ピロラとその子孫一色になりつつあります。欧州圏では、変異株ピロラBA.2.86型にその子孫のJN.1、JN.1.1等がとって代わり 変異株首位となった国は14ケ国となりました。ピロラ系首位8ケ国の前回から激増し、更に増える見込みです。WHOは、欧州圏の感染状況から JN.1 をCOI(注目される変異株)に指定しましたので、世界の感染は、今後 JN.1 の動向が焦点となりそうです。
 アメリカ、カナダでも、ピロラ系子孫の JN.1 が、変異株上位に飛び級的に登場しました。日本でも上位5番目に表れたばかりの JN.1 ですが、アメリカの感染状況は今後更に大きな影響を与えることになりそうです。
 
 韓国では、HK.3が頑張ってピロラの侵入を防いでいるようです。中国はHK.3の本場だけあって強い勢力を維持しています。中国からの日本訪問客が多いことは、中国国内情勢の影響かもしれません。日本の現在地は欧米と中国との狭間に位置し、コロナ感染に歴史的文化的背景を感じます。
 都健安センターの変異株情報には、いつも感謝し有難く思っています。

                      2023/12/25
                      精神科 木暮龍雄

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