夏の魔法
夏休み前の教室で
ぼんやり先生の授業を聞いていた
教室の窓の外では
アブラゼミがうるさいくらいに鳴いていて
授業に集中できない僕の頭の中を
これでもかというほど占領していた
ジージー
いっこうに止む気配のない蝉の声
いつしか時間が止まったみたいに
僕のまわりは蝉の声で充満していた
ジージー ジジッ
突然蝉の声が止んだかと思うと
僕は目眩のような感覚に襲われて
その時何だかわかってしまったんだ
これは夏の魔法だ
アブラゼミがかけた特別な魔法なんだ
ふとまわりを見渡すと
何事もなかったように授業は続けられていて
気がつけば蝉の声も
またうるさいくらい鳴き始めていた
それにしても蝉の声が
前と違うように聞こえるのはなぜだろう
きっと僕が彼らの秘密を知ったからに違いない
アブラゼミがかけた魔法に
僕もかかったかどうかはわからないけれど
今年の夏休みは
いつもの年より特別なものになりそうな気がして
自然と笑みがこぼれた