シェア
君がまだ言葉をうまくしゃべれなかった頃 青空を指差しては「キー!」と叫んでいた 最初は何のことかわからなかったけれど 君の指差す方向にはいつも 飛行機が気持ちよく青空を滑って行って ああそうか 飛行機って言いたかったんだね 5歳になった今でも 君は青空を見上げて「ヒコウキ!」って叫ぶ 見上げる視線の先には飛行機の姿 さすがにもう「キー!」とは言わないけれど 君が飛行機をみつける名人なのには変わらない 今では言葉を上手にしゃべれるようになって 時々どこで覚えて来るのか
暗闇に光る君の瞳 影から影へ移る君の姿 君は夜に生まれたから そのまま夜を身にまとい ひとり息を殺して闇を行く 夜は君の姿 闇は君の心 影は君の名前 そして沈黙が君の言葉 けれどそんな君でも 淋しい時はやっぱりあるさ そんな時は夜の片隅で この沈黙を破って 一声ニャーゴと鳴くのさ