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a dream

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うつし世はゆめ よるの夢こそまこと。
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2022年1月の記事一覧

冬野

あきらめました あなたのことはもう あきらめました あなたのために燃やす炎は もうどこにもないのです 私の前には荒涼とした冬野が どこまでも広がっているばかり ここにはあなたの影も かつてあなたのために摘んだ花も どこにも見当たりはしないのです ただ冷たい冬がどこまでも 私の目の前にあるだけです この淋しく静謐な世界に 私は身を委ねることに決めました 身を切るような風が吹いて この両手が凍えきってしまっても もう炎を燃やすことはないでしょう ただひとひらの雪が舞い降りて

雪の中で私は言葉を失う

雪の中で私は言葉を失う ただ無垢の白だけが広がり 心の底から静寂となる 絶えず美しい音楽が 私の耳元にほのかに聞こえ たゆまない白の乱舞の中で 軽やかな旋律だけを繰り返す どこか遠い北の果てのおとぎ話が まるで私を渦巻いているかのように 雪の中でたったひとり 私は耳を澄ましているのだ その結晶の軋む音を 気の遠くなるような白の旋律を 私はたったひとり聴くために こうして耳を澄ましているのだ ただ静寂だけが満ちている まるで時間が止まったかのように 雪の中で私は言葉を失

今地平線の向こうから 金色の髪をたなびかせた 美しい日の神が来る 虹色のベールが静かに開き 竪琴のようなオーバードが流れる ああ素晴らしい時の始まり 火の早馬は蹄を高らかに鳴らし 空の彼方から駆けて来る 日の神はその手綱をしっかり握り 視線を遙か遠くに投げ 火の早馬を巧みに操っている 静かに東の空が明けて来る 素晴らしい時の始まり 金色の髪をたなびかせた 美しい日の神は どこまで行っただろうか