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転換点を迎えている日本型雇用システム_経団連の2020年経営労働政策を読み解く

日本型人事制度からの脱却や従業員エンゲージメント向上が人事界隈でホットなキーワードになっています。今日はなぜそれらのキーワードが重要なのか?その背景を紹介したいと思います。

1.経営環境の変化(情報社会→創造社会へ)

我々、人類の歴史をひも解くと狩猟社会(第1段階)に始まり、農耕社会(第2段階)となり、産業革命を経て工業社会(第3段階)へと推移してきました。21世紀は情報社会の時代(第4段階)で、ビジネスの世界では工業から情報産業へのシフトやICTにおける業務効率化などが進んできました。経団連が今後起きる変化として提起しているのが創造社会(第5段階)への進化です。創造社会をSOCIETY5.0と呼んでいます。

SOCIETY5.0は定型的な業務はどんどんAIなどで自動化して、人は想像・創造力を発揮して困難な問題を解決して価値を創造することが求められる時代として定義されています。

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(出典)SOCIETY5.0/日本経済団体連合会/P.9

2.SOCIETY5.0にふさわしい働き方とは

(1)働き方改革のフェーズⅡへの移行

経団連がまとめた経営労働政策ではSOCIETY5.0にふさわしい働き方としてまず働き方改革を進化させることに触れています。これまで進んできたのは主に時間外労働時間削減や休暇取得促進等の効率化などのインプットの効率化に関する部分でした。フェーズⅡとしてはアウトプット(付加価値)の最大化を挙げています。そのアウトプット最大化のために従業な要素として従業員のエンゲージメントを掲げ、エンゲージメントが向上するとアウトプットの質や量の多様化に繋がりやすくなるというロジックのようです。

インプットとアウトプットが改善されることで飛躍的な労働生産性向上が起き、そこで生まれた余力が社会課題の解決や新たな価値創造に繋がっていきます。

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(出典)2020年版経営労働政策特別委員会報告/日本経済団体連合会/経団連出版/P.5「図表1-1. 働き方改革深化のイメージ」

(2)日本型雇用で顕在化してきた課題への対応

新卒一括採用、長期・終身雇用、年功型賃金の3つを特徴とする日本型雇用は上記に触れたエンゲージメントを阻害する要因になり得ます。画一的な施策や制度によって自身の成長と活躍の機会が失われていると感じる従業員が出やすくなるのです。また、多くの企業がSCIETY5.0を担う人材を育成・確保できていないと考えています。特にデジタルに強い人材はこれまでの社内だけでのジョブローテーションでは育成しにくいでしょう。その一方で、育成しにくい人材を社外から採用する際にも日本型雇用は阻害要因になり得ます。まずは、新卒採用を中心に続けてきた結果として均質的で排他的なカルチャーになり多様な人材を受け入れ活用する基盤が薄くなるリスクがあるでしょう。また、テクニカルにはエンジニアなどの専門職に対して既存の年功的報酬制度の枠内で処遇できず、採用競争力を確保できないリスクもあります。また、採用できても昇給が年功的であるが故にモチベーションが下がりリテンションできないリスクが生じ得ます。


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