日本の大企業のエンゲージメントは何故上がりにくいのか?
「エンゲージメント」という言葉をご存じだろうか?定義は様々だが、複数のコンサルティングファームで用いられている定義をまとめると以下のような要素が含まれている。
①組織に対する愛着
②組織に留まりたいという感情
③要求される以上に努力したいという感情
エンゲージメントが高い従業員が多い会社は会社への愛着が強くその結果退職率が低くなるだろう。また、強制されなくても会社のために働いてくれるため、結果として業績が高まりやすくなるだろう。
似た概念として従業員満足度やモチベーションがあるが、似て非なるものである。従業員満足度が高ければ離職率は低くなるかもしれないが、会社のために働こうという感情を持つこととは関係性が薄い。また、モチベーションだけが高くてもすぐに退職してしまうリスクがある。
経営者や人事部門でのエンゲージメントへの意識は年々高まっており、エンゲージメントサーベイなどのツールの市場規模も右肩上がりだ。終身雇用制が崩壊し、人材の流動性が高まりつつある中で必然的な流れだろう。
筆者はエンゲージメントサーベイを提供する人事コンサルティングファームで勤務しており、グローバルでのプロジェクトに複数関わっている。特に東証一部上場の大企業が主なクライアントだ。その中で気がかりなのは、第二回、第三回とサーベイを実施する中でほとんどエンゲージメントが変わらないかもしくは下がる企業が多いことである。
原因はなんであろうか?筆者は一つの大きな要因として経営陣のエンゲージメントに対する当事者意識が弱いことにあると考えている。
過去に実施したエンゲージメントサーベイを分析して、エンゲージメントと相関が強い質問を抽出すると多くの会社で「経営陣への近寄りやすさ」「経営方針がきちんと伝えられているか」などが共通して上位にあがってくる。
「経営陣」という要因はエンゲージメントにとって重要である一方で、サーベイやその改善の実施主体が人事部門であることが多く、経営陣に対する忖度からそこに対して抜本的な対策が打てないことが多い。
また、その他の要因にしても会社の意志として投資やルールの変更を行うべきものが多く、いずれにしても人事部門の担当者は周囲を動かすことは容易ではないと感じるだろう。
エンゲージメントを改善する取り組みの難易度が高いことがお分かりいただけただろうか。しかし、中には取り組みを前に進め、成果を挙げている企業もある。その事例や考え方を今後ご紹介していきたい。
以上
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