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予想外の自分に出会う旅 @中村キース・へリング美術館
去年の11月に、山梨県小淵沢にある中村キース・へリング美術館に行った。
キース・へリングとは、1980年代のアメリカを代表するアーティスト。
彼の作品はたくさんのグッズになってい
るので、見かけたことがある人も多いと思う。
ユニクロのTシャツになっていたのが記憶に新しい。
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美術館に行ったのは全くの偶然だ。
なんとなく自然に触れたくて山梨旅行に行ったのだが、無計画だったのでやることがなかった。
どこかで時間を潰せないかと調べた時、ホテルの近くに美術館があることを知った。
正直「あー、あのユニクロTシャツになっている絵ね」くらいの認識で、
私が好きなのはもっと、粋でかっこいい浮世絵とか、色彩がやさしく豊かな絵なのだと思い込んでいたので、
ポップでストリートっぽいキース・へリングの絵はあまり好きになれないだろうと予想していた。
じゃあ、どんなところが苦手なのか確かめに行こう。
謎のひねくれ根性が働き、見てみることにした。そして、まんまとドはまりした。
美術館はエントランスから超絶おしゃれで、ここはハイセンスなホテル?と疑うくらいだった。
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展示されていたのは、見覚えのある絵柄の作品。でも、直筆の絵は印象が違った。
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純度が高くて、愉快で、楽しい。
ほら、おもしろいでしょう?笑おうよ!
そう語りかけてくるようだった。
一見ラクガキのように見えるけれど、シンプルな線には一切の無駄がなく、なぜか躍動感があり、描かれているものの配置がピターとはまっていて、一度見たら忘れない。
え、おもしろい!!
とりこになってしまう魔法がかかっていた。
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彼の絵は、エゴが無く、とても軽い。
そんな印象を受けた。
美しい絵には執念や業がつきものと私は勝手に思っているが、彼の絵にはそれらが無いように感じる。
美醜も、男女も、肌の色の違いもなく、極限まで簡略化された人間らしきフォルム。
そいつらがおどる、走る、躍動する!
きっと、大丈夫。
そう思わせるパワーが彼の絵からは感じられた。
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風刺や重めのメッセージを含んだ作品もあったけれど、
独自のポップなフォーマットにより、心が沈むような感覚にはならない。
重要なメッセージでも、伝える方法が重く暗すぎると、気分が落ち、拒絶したくなってしまう。
必要なことは伝えつつ、後味が軽やかな表現は、
悲劇に偏りすぎない、現実的な行動を促すのではないか。
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外にも展示があった。
空気が澄んでて気持ちいい。心も澄んできたようだ。
みんな一緒。人は神の似姿なのだから。
そんな言葉が浮かんできた。
予想外の自分に出会えるから、旅はおもしろい。
キース・へリング美術館、とってもオススメです。