旅の始まりはいつだって
2024年5月28日
企業の最終面接のために、ひとりで東京に出た。
朝早くにスーツで家を出て、父におすすめされたとんかつ屋さんに向かう。
面接が終われば、吉祥寺で有名なパンケーキを食べよう。
古着の街、高円寺にも余裕があれば行こうかな。
そう思っていた。
東京駅に降り立ってすぐ、スマホで地図を出すと、
繋がらない。
楽○モ○イルさん、勘弁してよ。
幸い面接場所は東京駅構内からすぐで、
下調べのスクショで何とか行けた。
昼食のとんかつ屋さんにも。
とんかつ屋の店主さんとそのご両親は滋賀県彦根の方で、私の関西弁に気を留めて店主のご両親が話しかけてくれた。
最終面接で初めてひとりで東京に来たんです。と言ったら
「えらいなぁ、頑張れよ!今日は一番客で若い人が来てくれて、おっちゃんラッキーな日やわー!」と。
そのパワーで最終面接乗り切れました。
おっちゃんおばちゃん、そして上ロースとんかつ、ありがとう。
面接が終わり、持ってきたTシャツに着替えて、東京駅のロッカーに荷物を預ける。
これで身軽に東京散策だー!と思ったが、地図が相変わらず動かない。
行こうと思ってた吉祥寺のパンケーキ屋、定休日。
意味がわからない。
終電で取った帰りの新幹線まで数時間。
適当な電車に飛び乗り、退勤中の優しいサラリーマンに助けられながら高円寺に上陸。
この日は午後から雲がかかっていて、今にも雨が降り出しそうだった記憶。
直感で左に進んでいくと、
見るからにどタイプの喫茶店があった。
煙草の匂いと、カウンターのマダム越しの壁一面に並べられた可愛らしいティーカップ。 おばあちゃんの家だぁぁってめちゃくちゃ興奮した。
しかも私の大好きなレアチーズケーキがあった。天国??
持っていった本と、ラジオと、
降り出した大雨。
静かな店内にいる私は、これ以上ないほどに快適で、心静かだった。
少し前のわたしは
一人でいることが怖かったし、
知らない場所に、目的もなくただ存在するのが怖かった。
居場所と目的地を探しては、
そんなものはないと気づいて惰眠を貪る。
そんな日々に嫌気が差して、もうやめようとした。
旅の始まりはいつだって
胸がきゅうう、と音を立てて
少し涙が出そうになる。
不安と期待と、執着心と自立心。
自分の中のこどもとおとなが見え隠れする。
旅の道すがらはいつだって
誰かの優しさに人目もはばからず泣いて、
誰かのことを想って眠れない夜を過ごして、
素敵な出逢いに心のシャッターを切り、
相も変わらずしょうもないことで笑い転げている。
旅の終わりはいつだって
また理由もなくここに来よう、と思う。
受け取った優しさを誰かに恩返ししようと家路につく。
あの日は「また理由もなくここに来よう。」
といつぶりかに思えた日だった。
小学生だったわたしが、連絡なしに訪ねたおばあちゃん家のように。
家に帰ってきてから、これが一人旅なのかもしれないと悟った。
今回で四度目の一人東京。
四か月前には知ってる人なんて誰一人いなかった東京が、会いたい人がたくさんいる場所に変わっていた。
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昔何気なく好きで聴いていた歌に、
またふと出会うことがある。
その歌としばし離れていた間に自分なりにいろんな初めてのことを経験して、自分について少し知れたり、大事なものが増えたり、忘れられない辛い思いをしたり。
そんなものを抱えて聴くとまた違う歌に聴こえるから、人生って面白いよなぁって思う。
たぶんきっと、またわたしは電車で泣いてしまうし、弱さを隠せない日も来る。
それでも大丈夫、全部必要だったと言える。
自分の人間らしいところを愛でよう、と思えるくらいの優しさを手に入れられたのかも知れない。
次は、弱さをこぼしてしまいたい誰かに気づいて寄り添うことのできる、そんな余白を持ちたい。
今週末から行きたかったある場所に行きます。
遊びに行くわけでも、知人に会いに行く訳でもない。
はたまた何が出来る訳でもない。
でも、とりあえず行ってきます。
2024.10.3
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