ソーシャルチャレンジャープログラム③
3)エンジニアが地域に入ることで見えてきたリアル
初年度である2019年度は栃木県矢板市、茨城県鉾田市、島根県美郷町、高知県土佐市、いの町、日高村、鹿児島県薩摩川内市の5エリア7市町村での活動が決まった。3月に計4回の事前研修でソーシャルイノベーションやシステム思考、地域への入り方など座学で学んだ後、5月〜11月の間に複数回のフィールドワークに臨んだ。
フィールドワークの詳細を書こうと思うといくらでも書けるので、ここでは僕自身が感じた課題を整理してみる。
①地域住民の方々との信頼関係を構築に苦労
参加メンバーのほとんどが普段は都市部で生活をしている為、地域住民との関係作りをした経験がほとんどない。さらに一次産業に従事している方々との関係作りになるとほぼ皆無。例えば農家の方々であれば、どんな作物を作っているかを聞くだけでなく、その土地の文化やご先祖様の話、さらには奥さんとの出会いやお孫さんたちの話にまで、とてつもなく幅の広い話題と共感しながら相手との信頼関係をつくることを求められる。むしろ、そこまで話ができる関係にならないと農業をする上での課題や地域の課題など本質的な話を聞くことはできない。
これは当たり前のことで地域に住んでいる方々は先祖代々その土地を守ってこられたし、これから先の世代に受け継いでいく覚悟がある。そんな方々に対して信頼関係を作る前に「課題って何ですか?」「ICTを使うことで経営効率あがりますよ!」などと言っても全くと言っていいほど相手にされないのは明らか。事前研修の際には地方の課題をAIやIOTで解決するぞ!と意気込んでいたメンバーも技術やソリューションの話の前に、まずは目の前の相手との信頼関係構築をしなければそのステージにさえ上がれないことを知り、多少なりともショックを受けいていた。
地域の活動をしていると頻繁に目撃することで、地域の人は困ってるという前提でビジネスパーソンは地域と関わる。しかし、地域住民の方々からすると今の生活には困ってないのに、ITなどの分からない話をされるし、課題解決しましょうなどと言ってくる都会の人は信頼ないどできるはずない。地域住民とビジネスパーソンの関係作りが上手くいかないことが地方創生の本質的な課題だと僕は思う。
②データから考える習慣がない
先程は外部から地域に関わる側の課題の話をしたが、地域側にもやはり課題はある。
地域住民の方と関係構築が出来てくると、課題についての話題も増えてくる。その際に一次産業の高齢化の話、集落の高齢化が原因での地域活動の維持が難しくなってきたという話、地元企業の担い手不足の話など深刻な話が多く出てくる。しかし、それらの課題に対して根拠となるデータがあるかと言えばそうではない。
急激な人口減少による少子高齢化が進行している地域で様々な事象に対してのデータ化が進むことで、データを活用して様々なチャレンジを行う都市部の企業の関わりも増えるはずで地域にとっても良いことが多いと感じる。データ化に向けた地域の方々の理解をどう促進していくかが課題であることは間違いない。
③ITリテラシーの壁
最後は行政職員を含む地方に住む地域住民の方々のITリテラシー。Society5.0などの国家施策の推進だけでなく、IT導入による業務の効率化をする際にも一定のITリテラシーがなければサービスの導入から運用までが業者任せになってしまい、自分たちにあった運用方法の確立には繋がらない。また、知らないがゆえに必要以上にテクノロジーを恐れてしまい、今困っていないから導入しない!という将来を見据えた投資に全くならない行動につながってしまうのも事実。行政職員であれば、ITパスポート程度の知識は持っているべきだと個人的には感じる。
ここに挙げた例の他にも多くの課題が存在するが、課題は悪いことばかりではない。解決することができれば、未来が明るくなる。実は地方の課題は解決できる内容が多いのも事実。一刻も早く、課題解決が可能な企業や個人に気付いてもらうのが僕の役割なんだと最近は認識しているので情報を常に発信していきたいと思っている。