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続・ウルトラマラソン入門

前回、ウルトラマラソンは旅であるという話をしたのだが、今回はウルトラマラソンに関してあれこれ思い出話をしたい。

2017年、島根県で開催された奥出雲ウルトラおろち100キロ遠足(とおあし)というイベントでのお話し。

第1回からゲストランナーとして参加(実は0回大会=プレ大会)から関わっている)。そして、日本におけるウルトラマラソンのパイオニアともいうべき海宝満義さんがこの大会の名誉会長でもある。

海宝さんとは年一回、この大会でお逢いする仲で、大会の間はほぼ行動を共にする。何十年もウルトラマラソンに関わり、全国でいろんな大会を主催してきたという偉業も素晴らしい。海宝ロードランニングクラブを立ち上げ、メンバーの中には1980年代からウルトラマラソンを走っているシニアランナーファンも多い。

お話し好きな海宝さん、話し出すと止まらない。ウルトラマラソン創成期の時代のお話や、トランスアメリカフットレースを2度完走(日本人として初参加でもある)された時のお話は聞いていて退屈することがない。

大会の翌朝、同じ宿に泊まっていたある女性ランナーとロビーでお話しする機会があった。彼女は初のウルトラマラソンチャレンジだったという。

95キロの関門であいにくDNF(棄権)となったらしいが、あらためてウルトラマラソンの楽しさを教えられたと喜ばれていた。以下が彼女の語るウルトラの醍醐味なのだそうだ。

完走目的だったので時計も気にしなくていい。

同じペースで走っている人たちがやたらフレンドリーで、おしゃべりをしながら気楽に走れる。

エイドステーションでは地元の美味しいものがいろいろ味わえる。

地域の方々がわざわざ軒先に出て大きな声で応援してくれる。

ひとつウルトラマラソンに参加するだけでたくさん友だちができる。

走っている間は辛くて苦しいことばかりで、二度と走りたくない…と思わされる場面もあったのは事実だったけど、走り終わってみて気がつけば、また走ってみようかなという気持ちになっている自分がいる。

走り終えて、一皮むけて成長したかのような感覚が自分の中にある。

その女性は、ロビーで休憩している私と海宝さんにあいさつに来てくれたのだけど、初のウルトラマラソン参加が今回の奥出雲で良かったということから、来年も来ますと笑顔で語ってくれた。

海宝さん彼女に曰く、

「一度に100キロも走るウルトラマラソンほど体に悪いスポーツはないんだけれど、これほど心を豊かにしてくれるスポーツも他にないからね」

ウルトラマラソンはマラソンという名前こそついてはいるものの、旅そのものなのだと思う。

走って旅を楽しむ人は、時間や距離などの数字にとらわれずこだわらず、おおらかな気持ちであらゆるものを楽しめる人。

ランナーという意識を捨てて、旅人の感覚でいろんなものを受け入れることができるからこそ、移動する過程そのものを楽しめる。

僕は彼女に言った。

「今回、ウルトラマラソンを通じて経験したことをぜひお友だちに伝えてあげて下さい。走ることでどれだけ心が豊かになれたかを教えてあげて下さい。走ることで人と人がつながって、人生がより素晴らしいものになるはずですから」

ウルトラランナーは、いつもいかなる時でも心穏やかでいられる人であるのかもしれない。

速く走ることだけにとらわれていてはわからないウルトラマラソンの魅力を僕は彼女から教えられたような気がした。

ライター:アドヴェンチャー・ランナー高繁勝彦
PEACE RUN世界五大陸4万キロランニングの旅を走るアドヴェンチャー・ランナー

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高繁勝彦(アドヴェンチャー・ランナー)
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