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100年時代を先取りした女性美術家ヒルマ・アフ・クリントの『見えるもの、その先に』

@連休の皮切りは雨の中、
渋谷ユーロスペースへ。

全く知らなかった、スウェーデンの
20世紀初頭に数多くの抽象画を描いた
美術家ヒルマ・アフ・クリントの
ドキュメンタリー。

いつも感性のエッジが効いている
友人のSNSで紹介されていて
初めてその名を知り、
なんだか居ても立っても居られない
気持ちで観に行った。

経済的にも知的にも豊かな環境で生まれ育ち、スウェーデンの王立美術学校でみっちり描画の技法を学び、職業美術家として活躍する一方で、若い頃から『交霊会』に参加するなど見えない世界の探求してきたヒルマ。

徹底的に見える世界を模写しながら、
見えない世界から受け取った
イメージをまさに道管になって描く。

自分でも何を描いているのかはわからない。

手が動くままに白い紙に線を引いていく。

きっと、深い無意識から
やってくるイメージを
描かざるを得なかったのだろう。

探求を深めるほどに
出会うイメージの質感が
変わっていってように感じられる。

自然界のエッセンスである
いのちの躍動感、曲線、多様性
そして宇宙の静けさと秩序、
そんな世界を受け取っていたかのよう。

目に見えているものを徹底的に
描きながらその周りに放たれる
エネルギーを見つめていく。

描くほどにその深度は深まり、
圧倒的な広がりの中を
体験していったのではないか。

わたしは誰か。
何のためにここにあり
そしてどこに向かうのか。

この、根源的な問いかけと共に。

20世紀初頭は科学や産業の発展した時。
人の世も大きな変容にあり、
価値が目に見えるモノに集中してい中、
彼女は自分達の存在や在り方を
問い直したのかもしれない。

同時期にカンディンスキーや
ピート・モンドリアンが美術家として
活躍している訳だけど
ヒルマは彼らよりも先に
無意識からの呼びかけに応えていた。

しかし、世に出たのは、2013年。

映画の中では女性美術家に対する
蔑視という視点で語られていたけれど、
受け取る側が彼女の世界観に
追いついてなかったんだと思う。

100年を超えて、全く損傷なく
残された膨大な作品たちは、
世に出るタイミングを待って
その輝きを保っていたのかもしれない。

2018年にニューヨークの
グッゲンハイム美術館で開催された『Paintings for the future』では、
過去最高の60万人を動員したそう。

彼女の圧倒的な絵を前に、
泣き出す人や、心を鎮める人が
いたそうだ。

今、である必要があったんだと思う。

いのちの旋律が聴こえてきそうな
この本物の絵の前に
いつか立ってみたいー。

1906年に彼女が日記に残した一言。

『私が行った試みは、
いつか人類を驚愕させるだろう。』

見えない世界から、
『行った通りでしょ』と
のぞいているかな。

しかしながら、コロナ禍になってから、
素晴らしいメッセージを放つ映画が
次々公開されている。

今のこの混迷した世の中を察するかのように。映画館に行くたびに次に観たいものに出会う。

お次はブルース・チャトウィンかな。

『見えるもの、その先に』

http://www.eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000584

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