見出し画像

みんなそれなりにとてもつらい

東日本の震災の年に、
大阪で総長と出会いました。

総長は福島の娘。
僕と同い年。
どちらかと言えば無口。
口を開くと福島訛り。
素朴で楽しい娘。

です。

実際ここまで
読み進んでもらっていますが、
「総長」で「娘」と記述しているので、
みなさんのなかでは
オラオラ系の女性を
想像されているかと思います。

でも、福島訛りで、
無口で素朴で
楽しい総長ってなに、って

もうわけがわからないことに
なっているかと思うので
ご説明します。

『総長』は
彼女の中学生の頃からの
あだ名です。
理由は、
毎日マスクをしているから。

彼女は震災を
福島で経験しました。
震災前に転勤が決定していて、
震災後すぐに転勤。
知らない街大阪で生活することに
なります。

彼女は大阪へ来て、
僕や仲間と出会い、
よく遊んだりするようになりました。

そして数年を大阪で過ごし、
また福島へ帰っていきました。


先日、彼女から宅急便が来ました。
箱を開けると、りんご。
お中元でもお歳暮でも、
誕生日でもない。
なんだこれ??
と思って電話しました。

「はい。」
「あ、おれやけどー」
「おー、ひさしぶりー」
「うんひさしぶり、りんご、ありがと。」
「うん、おいしいからたべてねー」
「うん、えっと、なんで突然?」

大阪の事を思い出してたら、
送りたくなったのだという。
大阪で俺、なにかしたっけ?
と訊くと、
うん。と彼女は、答えました。

おれ、なにした?

うん、あの時はとても
辛い時期だったけど、君に救われた。

え?いや、何かしたっけ?笑

一緒に立ち飲み屋行ったり、
友達紹介してくれたり、
いろいろ。

あー、なるほど。え、そんなに辛かったの?!

そうだよ。家ではいつも泣いてたよ。

あ、そうなの、今更聞いてもどうにも
ならんけど、何があったの?

ほんとに今更だから、もういいんだよ!

まぁ、そうやなぁ。

うん、だから、ありがとうと思って。
あの時のこと、思い出してたら、
なんかそんな気持ちになって、
りんご送りました。

うん、なんか、ありがとう。
俺はただ立ち飲み屋行くから
だれか来ないかなぁーと思って
誘ってただけなんだけど、
そうなんや。
すごいな、なんかそれ。

当時、彼女がそんなに悩みを
抱えているようには、
まったく見えなかったけれど、
とてつもなく人生を思い詰めていた
ということが、
りんごの電話で分かりました。

やっぱりみんな、
それなりにとても
つらいんだと、
思いました。

彼女の電話を切ったあと。


もしかしたら、
今も自分の身の回りで、
彼女みたいに元気に見えて、
実はとても思い詰めている
ひとがいるのかもしれないと、
そう思いました。

いいなと思ったら応援しよう!

拝啓 あんこぼーろ
もしサポートして頂けた暁には、 幸せな酒を買ってあなたの幸せを願って幸せに酒を飲みます。