そらのしたでスコーンを食べるだけでもひとはみたされるよ、という童話。
雨あがりのさわやかな晴れ間は、みずたまりの水面を、きんきろりときらめかせます。
やわらかな風は、木々や葉をゆらし、しずくをいくつか、ぱたぽとぷちゅんと落とすのでした。
みあげれば、雨であらわれた空を、雨であらわれた雲が、雨であらわれた風に押され、すいすいと笹舟のように、ながれてゆきます。
とても気持ちのよい日です。
そんな日の公園をゆっくり歩いていると、柳のきりかぶから、あたしい柳の木が生えていました。
新しくやわらかい葉は、願いをのせた短冊みたいに、やさしくゆれています。
きりかぶに目をやると、苔がびっしりと生えていて、なにやら柔らかそうです。
おや?
あ、この子、どこかで見たことありますね。
あ、こちらにも。
あ、ここにもいました。
この子たちはどうやら、わたしに伝えたいことがあるようです。でも、なにしろ彼らのことばは、ぴこぴこぷこぴぷ言っているだけなので、まるでわからないのです。
だからわたしは、その子たちに曖昧に笑いかけて、その場をあとにしました。
それでもまたしばらく歩いていると、さっきの色のついた子たちがいそぎ足で追いかけてきました。
次は何やら、背中にかかえています。
この子も。
この子はずいずい近づいてきます。
そしてこの子も。
みんな、わたしにたべものをくれました。
スコーンやグラノラです。
透明なあおぞらのした、あおいベンチに座り、スコーンをひとつ齧ってみます。
すると、小麦を挽く風車小屋の中にいるみたいに、小麦のかおりで満たされました。
そしてしっとりとした塩味が風のようにすぎてゆき、星空みたいにじんわりとあまみがひろがります。
気づけば、そらをみあげて、風にふかれて、ゆっくりもぐもぐしているわたしがいました。
たったひとつの小さなスコーン。
それだけでもひとはみたされるのだと、いろの子たちが教えてくれたのです。
あ、そうそう、いろの子たちがさいごに教えてくれました。
彼らがくれたたべものは、ここでも見つけることができるそうですよ。
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