こんなふうに P9(jの生き方)
デデッデデン デッデデデーン デーン♪
おじさんが描いたチンパンジーの絵を誰が買うのか
デッデデデーン デーン♪ギターの音に合わせて
「あみだくじ」で決めている。
それを横目で見ながらjが呟いた。
「俺はあの絵に魂を込めたつもりはない」
jの描いた100万円の値を付けた「舞い上がるはなびら」
ベージュの女性がそれを「買えるけれどやめておくわ」
と言って帰った後だった。
「絵の意味なんてどうでも良いからさっさと売れればいいんだ」
jに気がついたyuukiがギターを持って立ち上がった。
生演奏が途切れても気がつかないほど「あみだくじ」は盛り上がっていた。
yuukiがそばに近寄ると
「誰だっていいんだよ。買ってくれるなら」
とjは言った。
「俺はこの絵になんの執着もない」
「でも、あの人はやめた方がいい。でしょう?」
「それって絵に対する執着だよね。あのおっさんみたいにうんちく言って何が楽しいんだ?」
「想いを伝えたい人もいるよ」
「俺が描いたものなんて何のお役に立つ?
何者でもないやつの暴露本みたいで恥ずかしいわ」
・・・・・・・ ・・・・・
「あのー」
オックスフォードシャツにジーンズを合わせた男性が声をかけてきた。
2人が眉間にしわを寄せたまま男性を見ると
「よかったら僕に会社に飾らせてもらいたいなと思って」
と言って微笑んだ。男性はヨシノと名乗った。
「ちょうど空に似合う絵を探していたんです」
いつからいたのかわからないけれど女性とのやり取りも聞いていたらしい。
「ぼくの会社は小さな玄関ですけど、そこに飾らせてもらいたいんです。いや、玄関の壁を計らないとか。入らないかなあ」
ヨシノはその巨大な絵を見上げながら手を上下に広げたりした。買い取りは厳しいのでレンタルさせて欲しいと言うことだった。
「会社の顔としては最高の絵です」
機内に置く雑誌に掲載している広告会社だった。
「飛行機に関係した人が多く訪れますから、そう言う意味では、あの人の言っていた空に近いです」
「そこまで聞いていたのなら嫌なんて言えないわよね」
パコは物珍しそうに男性を眺めた。
「どうぞどうぞ。あんな事を言われた絵を玄関に飾ったら
悪いことが起こるかもしれないですよ」
jは自暴自棄になるとすぐに嫌なことを言う。せっかく自分の絵を気に入ってくれた人に対してそんなことを言うのはどうかと誰もが思うが口にする者はいなかった。
「暗闇に花びらが描いてあるだけですよ。真っ青な空もない。あの変な女が空に似合うって言っただけじゃんか」
男性は気にもとめずに手続きを進めた。気になる玄関の寸法を計って明日取りに来る事になった。
「もし明日、あの人がここに来てやっぱり買うわって言っても売らないで下さいね。なんとしてもこの絵を僕は自分の会社に飾ってみたいから」
「あなたは自分がありますか?この絵は空の絵じゃない」
jはしつこくてケンカを売っているみたいだった。
・・・・ ・・・・ ・・・・・・
彼女との思い出。彼女に描いた絵。
jは彼女を大切にしていた。
幸せだった。
自分の描く絵も好きだった。
けれど自分の容姿が彼女に自信を無くさせた。
彼女は
「あなたは私より可愛く見える」
と言って去って行った。
「それがどういうことか俺には分からない」
男勝りで何を言っても動じない包容力のあるj。
恋愛には何が必要なんだ?
それからjは自分の容姿に悩み、内面のように図太い外観に産まれなかった自分を卑下しだした。
今は髪も伸ばしぱなしで更に女性らしい。いっその事、見た目通りの女になった方がいいと投げやりに過ごしているから。
だからなのか
あの頃の絵は描けない。
「足もつるつる顔は色白で化粧乗り抜群そうな肌。。
私が欲しいものは最初から持っているのに、なんと悩ましい状況」
jは決して同情される人物ではないはずなのに、どうしてこうなるのだろうと、パコは落胆を隠さない。
「jは一生アーティストだと思う。だとしたらもう描くことの出来ないあの絵は、本当にすごい価値のあるものに変貌を遂げるに違いない。同じ物を書き続けるのと同じくらいに凄いことだ」
パコはjに伝えたいわけでもないければ励ますつもりもないのだが声が大きい。店内には諦めの混じったsayaのハミングが静かに流れtakaが踊り出す。
「周りからの情報が悩みを生産する。だったらいっそのこと1人で生きたい。けれど人は独りでは生きられない。ほら、誰かこれをテーマに絵を描きなさいよお」
詩を担当しているパコはいつもそんな風に言う。
「昇華して消化する。想いを出して、心も体もはい!(パチン)きれい」
手を叩いたり足踏みしながら続々とパコの詩は口から逃げ出す。
「仕方ないな」
yuukiはパコの言葉をメモすると鉛筆画を描き出した。
一部始終を観察しているゲストも
やり取りが気になって注目する。
・・・♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪
「やりましたね」
誰かが言葉を向ける先では黒のワイドパンツの若者が「goチンパー」を壁から外して「結局俺の物になる運命なんだ」と言った。
運の強さがあるとするならば、誰よりも目立って声を上げる人は最初から知って意識しているのだろうか。偶然でなければ彼が「あみだくじ」で当たりを引く確率は100%になる。それを必然と言えば誰もが納得するだろうか。先(ミライ)に得るものを彼自身が見つけてやってきたと言う説明の方が理解できる。そして周りにいる人はその絵を本当に得たい以上に、強運の手助けをしに、或いはそういう人を眺めたくて集まって来るのかもしれない。
運を引き寄せる<自分が強い場所を見つけていく
ワイドパンツboyは「goチンパー」のポストカードを作りたいとおじさんに言った。買えなかった人に売って自分も儲けたいと。おじさんは快諾し
「今時手紙を書く奴なんて居ないんだからその発想はやめておけ」と言った。
「じゃあ何が良いですかね?」
・・・・・・ おじさんは数秒考え・・・・・・
「Tシャツかバンダナにしろ」と言った。
「それとボトルだな。最近は水を入れて持ち歩くんだろう」
なかなか時代を読んでいる。
「150円のポストカードを売っても足しにならん」
To be continue...
P1から⬇
※生活に困っている人を支援するチャリティギャラリーを開催したい。
※助けるか?助けられるか?どちらかの関係じゃなくて、どっちもハッピーでどっちにもなれる関係の場所。
※作品を作る人が生活出来る社会にしたい。
※若者だって、自分の収入が少なくたって
困っている人を助けられる。助け合える。
こんな想いがあって作りたい理想の場所を物語にしています。
よろしければ1から読んで頂きたいです🙇
どうぞよろしくお願いいたします。