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はじめての心療内科受診の振り返り

今日は、自分にとって初めての経験となる、心療内科を受診した時のことを振り返ってみたいと思う。

心療内科に対する先入観

生まれてから半世紀以上経つが、自分のこれまでの経験に心療内科受診というものは存在しなかった。何か、自分とは縁のない世界、そして、できれば関わりを持ちたくない世界だった。

今から10年ほど前には、心療内科にかかること⇒精神疾患に罹ること⇒一度精神疾患に罹ったら、例え一度回復したとしても、ストレスの原因が無くならない限り、またいつ再発するか分からない、そして、状況次第では、精神が不可逆的ダメージを受け、社会人として再起不能に陥ってしまうかもしれない。というイメージを持っていた。

誰しもそんな状況になりたくてなっている訳ではない。それでもそんな状況に陥ってしまうのは、その人達が置かれている環境に原因があるのだ。ということを、頭では分かっているつもりだったが、気持ちとしては、お世話にはならずに済ませたい。と思っていた。

しかし、産業医からの説明では、「今の社会では、心療内科にかかることは特別なことではないんです。例えば、「うつ病」は心が風邪を引いたようなものです。あまり深刻に考えすぎず、今の辛い状態の話をじっくり聞いてもらう。という感じで行ってみましょう。」とのことだった。

自分がもう一つ気にかかっていたのは、心療内科にかかった場合、治療のために薬を処方され、その薬を飲むことによってかえって悪い影響を与えてしまうのではないか?ということだ。

知人の何人かに、うつ状態になり心療内科に通院していた年配の方がいた。その人は、何もやる気力がなくなり一日中ふさぎ込んでしまうのと、夜眠れない。という症状があったそうだ。

それで心療内科に通院し、処方してもらった薬を飲んでいたそうなのだが、その薬を飲み続けることで痴呆のような症状が出てきたり、ある日突然足腰が効かなくなり、歩けなくなってしまったという。ところが、うっかり薬を飲み忘れてしまった時に、今まで自力で立ち上がることもできなかったのが、急に立ち上がり歩くことすらできたというのだ。

また別な年配の方は、薬を飲み始めてから食欲がなくなり、以前は大好きだった晩酌もできなくなり、仕事もできないほど気力がなくなり一日中家でゴロゴロと寝て過ごすような日々が続いたそうだ。

そんな話を聞いていたことから、自分も一度薬に頼ってしまったら、依存症になり、治るどころかどんどん病気が進行してしまうのではないか。という不安があった。

初受診の日

この記事を書いた日の約3週間前の初受診の日、薬を飲まずにどんな治療をして今の心の状態を元に戻せるのだろうか?そんな疑問を抱えながら、車を走らせ予約をしていた心療内科に向かった。

目的の心療内科は、比較的自宅から近く、よく知っている幹線道路から路地に入り込んだこんもりとした森に囲まれたひっそりとした場所に立っていた。それも、想像していたよりはるかに大きな建物で、心療内科だけのクリニック的な規模ではなく、ちょっとしたやや小規模の総合病院のような白い建物だった。駐車場も広く、数十台は車が置けるほどのスペースだった。

ここは心療内科だけでなく、精神科、病棟、リハビリ施設も備えた専門病院で、自分のような近隣の市町村からだけでなく、遠方の自治体からも患者が訪れるほどの、それなりに知られている病院のようだった。

リハビリ施設と思しき建物は、病院の本館の向かい側にあり、一見すると森に囲まれたおしゃれなアトリエのような雰囲気だった。そこに時々数人の人達が出入りしている様子がうかがえた。

自分が診察を受けるのは、それと対面している本館である。白い建物の入り口は、普通の病院のような両開きのガラス扉ではなく、高さがあり、温かみのある木製の自動扉だった。何か、森の中の美術館にでも入って行くかのような不思議な感覚だった。

中に入ると、まず驚かされたのは、白く高い吹き抜けの天井と、その下にゆったりと配置された、背もたれの角度が少し倒れ気味でソファのような長いベンチが並んだ待合室だった。病院の待合室にありがちな、背もたれが直角で座面の固いベンチとは趣を異にしていた。

また、照明もやや暗めで落ち着いた雰囲気を醸し出しており、気持ちを落ち着けるのにちょうどよさげの明るさで心地よく感じた。

待合室は、隙間なく患者が座れば恐らく30~40人ほどは収容できそうな空間だったが、そこにはほんの5、6人が、ぽつぽつとところどころに座っているだけであった。この病院は、完全予約制のため、アポなし受診は受け付けていないためである。

受付の係員の人達はみんなとても親切で、受付カウンターの所で初診の旨を伝えると、病院のシステムの説明を丁寧にしてくれた。事前に記入して持参するように指示されていた問診票と、産業医から発行されていた紹介状を提出した。

あらかじめ問診票を記入しておくと、当日の所要時間が短縮されるためにお勧めされていた。電話受付時の担当者の話によると、「初診の場合は問診票の記入などの時間や、他の患者さんの診察が長引くこともあるため、2時間~3時間程度の時間が掛かると思っていてください。」と言われていたのだ。

普通の病院と違うな。と思ったのは、あらかじめ事前の電話受付で診察対象として受付してもらうと、その時点で主治医が決定し、毎回同じ時間帯での受診を指示されることだ。また、初診の受付時には、上書きされる診察カードが発行され、まるでスーパーの駐車場の駐車券受付機のような機械にカードを通すと、番号が割り当てられ、自分の順番になると、名前ではなく、番号で呼び出しがかかることだ。

自分は他の心療内科にかかったことがないのでそれが一般的なのか分からないが、心の病気というセンシティブな内容のため、患者のプライバシー保護に配慮しているためではないか。

受付が終わると、診察室が並んでいる廊下の方に移動するよう案内を受けた。診察室は3つあり、その前の廊下の天井は待合室のような高い天井ではなく、よくある普通の天井の高さだった。

診察室前の待合スペースの廊下にはソファが並んでおり、また壁際には、図書館にあるようなひじ掛け付きの連続した椅子が連続的に配置されていた。また、ヒーリングミュージックのような音楽が流れていた。これも典型的な病院の診察室前の待合スペースとは異なる印象だった。

待合スペースに移動して座っていると、看護師の方が書類を持ってきた。4種類の問診票だった。受診前にあらかじめ、病院のホームページからダウンロードした問診票(この問診票は2ページあり、そこそこ沢山の質問が書いてあったが、がっちりと記入していた。)に事前に記入をして提出したので、もう問診票はないものと思っていたが、更に4種類の問診票に記入するとは。

外科や内科のようにレントゲンや血液検査、触診のような物理的な検査で症状を判断する診療科と異なり、「心の状態」という目に見えないものを扱っている診療科だけに、これらの問診票の質問一つ一つに医学的に病状を判断するための意味合いが込められているのだろう。

一つ一つの質問は簡単に答えらえるものばかりだ。一つ一つの質問内容までは覚えていないが、以下のサイトで示されている「問診の構造」にあるような視点から様々な質問事項に答えるようになっていた。

あっけない主治医による初診

問診票の記入が終わって15分ほど待っただろうか。やがて自分の番号が呼ばれ、診察室に入った。自分の主治医は運の良いことにこの病院の院長だった。ホームページで院長のメッセージ、この病院の治療方針について記載されていたのを読んでいたので、そのまさに大本命の医師が診察をしてくれるということで安堵感があった。

診察室に入ると、院長からは、電話受付時に話した今の自分の症状とその原因となった出来事、これまでの職場での自分の辛い立場などについては既に把握している。と言われ、「他に何かお話したいことはありますか?」と言われたが、何となく長時間で話を聞いてもらう感じがしなかったため、自分の感覚的には2~3分程度で手短かに、今回診察を受けた目的である、「休職のために会社に提出が必要な診断書を発行して頂きたい。」と話した。

院長からは、自分からの依頼に対し否定されることはなく、「適応障害ということで、まずは2か月間、仕事をお休みしてください。診断書にはそのように書いておきますね。」とあっさりした返事が返ってきた。

その後、「何か聞いておきたいことはありますか?」と言われたので、今回の診断結果を受けて、薬の処方はあるのか?自分としては、薬を飲むと依存性が出てきてしまうのが不安なので、出来れば飲みたくない。と話した。

院長からは、「今の状態ではまだ薬を飲む必要はないですよ。まずは仕事から離れてお休みしてもらって、1か月後位に状況を診たいのでもう一度診察を受けに来てください。」と言われた。

これで初診は終わりである。診察室に居た時間は恐らく長くとも10分もいなかったと思う。もっと自分が辛かった話や、こんな精神状態になった原因についてじっくり話を聴いてもらえるものと思っていたが、肩透かしを食った感じだ。

やはり、病院というところは、カウンセリングとは違うのかな。それに、院長という忙しい立場の人だから、勤務医と違い、あまり時間を取れないのかもな。と自分に言い聞かせた。

そうは言っても、さっさと診察を終わらせて患者の数をこなしたい。というようなせかせかとした雰囲気はなかった。それだけ自分の症状はまだ軽症だったということなのか。

診察室を出て、料金精算が完了したとのことで受付から呼び出されると、封筒に入った診断書を手渡された。あっけないほどあれよあれよという間に終わってしまった心療内科の初診。

料金は、診断書発行代の5,000円と合わせて合計7,800円。事前に電話受付で聞いていた話だと、初診時は検査がある場合だと10,0000円~15,000円かかる場合もある。と聞いていたが、想像していたより安かったためホッとした。

受診前にあれこれと心配していたのが、いざ受けてしまうと、「な~んだ。こんなもんなのか。あまり自分の中で敷居を高くせずに、少し心の状態がおかしいな。と思ったら、内科を受診するような感覚で早めに受診すればいいんだ。」と、気持ちが楽になった。


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