アメリカにMBA留学した時のお話(その3)
当初の予定より2日遅くなってしまいましたが、今日はアメリカにMBA留学した時のお話の第3回目です。
前回は、社内の海外大学院留学制度の書類選考に応募するまでのお話をしました。
留学候補生選考過程の第1段階、書類選考結果が分かったのは書類提出から1か月以内だったと思います。
まさか自分が書類選考を通過するとは思ってもいなかったのですが、そのまさかが起きてしまいました。
人事部担当者から、一次選考合格の連絡と、二次選考(本社人事部の人事課長、留学運営担当者との一次面接)の案内を受領しました。
第2段階:本社人事部の人事課長、留学運営担当者との一次面接
留学候補生選考過程の第2段階では、本社人事部の人事課長、留学運営担当者との面接が実施されました。
一次選考用に会社に提出した論文の内容から回想すると、質問内容については、おおよそ以下に関するものだったと思います。(何せ20年も前の話なので、詳細には覚えていませんが・・・)
海外大学院への留学を希望する理由
留学先での志望専攻内容とその理由
留学で学んだことをその後の業務にどのように活かすか
過去に海外留学した社員達の専攻は、大きく2つのパターンに分かれていました。
事務系社員(企画、総務、経理部門等所属社員):MBA(経営学)専攻
技術系社員:理系大学院で工学(会社の中核事業に関わる技術分野)修士コース専攻
この理由は、留学を終えて帰国した後に、学んできたものを実業務に活かすというのが会社が求めているものであるため、留学候補者達が日常的に実務を行っている内容と専攻内容に類似性、関連性があるものを選ぶのが基本だからです。
分かり易い例で言うと、経理部門の社員の場合、財務会計や管理会計は、日々の出納業務や会計システムへのデータ入力、財務諸表作成、資金調達、社債の発行などという実務がまさにMBAのカリキュラムで取り扱われる財務会計、管理会計、企業財務、ファイナンスといった科目と密接に関わっています。
このような背景から、留学候補生となった社員のほぼ全員が、いざ経営大学院に合格し、MBAの授業を履修することになったとしても、基礎的な知識を持っているため、英語で授業を行われたとしても、内容がある程度理解できるのです。
ところが私の場合は、日常業務が完全に、会社の中核事業に関わる技術の仕事でした。また、大学・大学院の専攻も工学ですから、そもそも経営学の基本となる科目について、一切予備知識がない状態でした。
それでもなお、留学希望先、専攻を欧米の経営大学院でのMBAとしたのは、当時私が所属していた、以前お話した癖の強い課長と係長が海外プロジェクトのチームメンバーとして他部門の社員達と実施していた内容が、プロジェクトの経済的妥当性を評価するような仕事で、その補助をさせられていたからです。
この分野を正規メンバーとして担当するためには、ファイナンスや経済学の知識や財務分析のスキルが必要でしたが、私は何も分かっていなかったため、2人の上司がディスカッションをしている横で、何の話をしているのか、ほとんど理解できませんでした。
しかし、プロジェクトを進めるべきか否かの判断をする上での重要な評価指標を分析する役割ということで、もし自分がこんな仕事を担当出来るようになったらさぞやりがいがあるだろう。と思っていたのでした。
そんな背景もあり、自分のそれまで積み上げてきた技術屋としての知見だけではなく、経営学の知識を習得すれば、いずれ海外プロジェクトのチームメンバーに加えて貰えるかもしれない。という発想から留学志望理由を論文に記述していました。
(実は、この部署に異動となってから5年後、留学先の大学院を修了して帰国し、その更に1年後に別の部門に異動となるまで、ついぞ海外出張をさせてもらえませんでした。)
自分が所属していた部署が、海外事業を担当するという、この会社の中では特殊な組織だったこと、技術系社員がMBA留学を希望するという、こちらも特殊なケースだったことが重なった異例の応募者だったのも、もしかしたら一次面接を突破出来た理由かもしれません。
第3段階:最終役員面接
本社人事部の課長と担当者との一次面接に合格すると、最後の関門が役員との最終面接です。
ただ、当時留学経験者の先輩方に聞いた話では、人事部との面接に合格すれば、余程のへまをやらかさなければ最終面接で落ちることはない。とのことでした。
恐らく、書類審査と人事部のスクリーニングを通過した応募者の「人となり」を経営層として一応確認しておきたい。という趣旨なのではないかと思います。
役員面接の面接官を務める役員は、この会社の序列ナンバー2である会長と、ナンバー3の副社長でした。
全社員数が数万人いるこの会社で、私が経営層上位の役員と直接話をするのは、これが最初で最後でした。
特に会長については、社内テレビ番組や社報、マスコミとの記者会見の場などで、かなり剛腕な雰囲気を漂わせている人物だったため、何を突っ込まれるか内心ビクビクしていました。
しかし、面接は終始和やかな雰囲気の中で行われ、最後は「是非頑張ってください。」という激励の言葉で終了しました。
予め、最終役員面接はセレモニー的な位置づけだとは聞いていたものの、この一言を聞いて、「ああ、自分はこの会社の留学候補者の一人に選ばれたんだ。」と、半ば他人事のような、まだ現実であることと信じられない心地だったことを思い出します。
面接終了後、それほど時を置かずして、人事部門から最終選考結果の通知を受けました。
結果は、
「あなたを今年度の海外大学院留学候補者として決定しました。」
という内容でした。
しかし・・・
これでめでたしめでたし。ということではなく、実はこの後、より長く、過酷な日々が待ち構えていたのでした。
この続きは、また日を改めてお話します。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。