【連載】アフリカの野生アニマル物語 (10)キリンとにらめっこ
首が長い女性は美しい。
こう信じる民族がタイ北部の山岳地方にいる。
彼女たちは幼少から金色の環を首にはめていき、
骨と骨の間を少しずつ広げて首を長く見せる。
そんな美に対する挑戦を、キリンは笑うだろうか。
サバンナでキリンを見ていると、
見られているというアベコベ現象に気づく。
ジープで国立公園などを走っていて、
アカシアの木のそばでキリンとすれ違うと、
彼らの視線を上方ななめ45度から浴びせられる。
「なんだなんだオマエたちは。
このアカシアの葉っぱはオレのものだからな。横取りしたら承知しないぞ」
300ミリ望遠レンズをのぞくと、黒い大きな瞳に急接近できる。
できたてのビー玉みたいに光沢を放ち、
長いまつげが黒々とのしかかろうとしている。
長いのは首だけじゃない。
キリンは、まつげも立派なのだ。
キリンは家族や友だちと群れをつくって行動する。
だからキリンに出会うと、熱視線の一斉射撃を受けることになる。
はじめはカワユイと思っていても、
だんだん「照れるなあ、おい」という感じになり、
視線を外したくなってしまう。
マサイマラのキリン家族には3頭の子どもがいた。
お母さんの半分くらいの身長だが、それでも2メートルはある。
お母さんがキッとこちらを見つめると、
子どもたちも真似をして、3頭が同じように首を左に傾けて、じっと見る。クリクリと音がしそうな真ん丸い目をしている。
見つめ、見つめられのにらめっこ。
どちらかが降参するまで、視線は絡み合ったまま。
そして、にらめっこは決まってキリンの勝ちで終わる。
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