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自己実現と育児、両方やろうよ。  〜4人だけの座談会 報告レポート

こんにちは。
長く感じた秋雨が終わり、きっと一年で一番過ごしやすい気持ちの良い天気がやってきそうです。

久しぶりの更新となりました。
この間、座談会を2回開きましたので今回はそのレポートです。
まずはメンバー4人で語り合った座談会です。「どうしてこの活動を続けるのか」「何を発信していきたいのか」そんなことを話し合いました。
是非ご一読ください。


●「妊娠をいつ現場に伝えた?」伝えることで起こる弊害について


小林 以前mtg後の雑談で、「妊娠したことをいつ言うか、言ったか」という話題になったんですけど、愛さんは仕事関係の人にいつ言いました?

原田 私はびっちり仕事を受けちゃってたから。一人目だったし、安定期とかよく知らないまま、すぐ言いましたね。もう妊娠2ヶ月くらいで言ったと思う。私が万が一できなくなっても助手にやってもらえるように現場に相談した、かな。

小林 安定期になるまで言いたくない、ってよく言われるけど、その考え自体が出産をタブーな感じにしてる呪いになってないかな、と急に思い始めて。

松本 私の場合は、気持ちの問題で妊娠したことを周りにあまり言いたくなかった。安定期前は得に、そもそも子どもが無事に生まれるかわからない状態だし、あとは、妊娠したこと自体とてもプライベートなことだから、言わなくて済むならずっと言いたくない派だった。まあ、現場があったら言わざるを得ないんですけど。

小林 気持ちの問題とは離れるけど、もしフリーとして働いていて、デザインの仕事ではなく、本番のオペレーションをするとか、稽古場つきとか、照明で言えば雇われてる立場の方だったら、もし妊娠したってなった時に、請負契約やしっかりとした雇用関係がなかったら、その人は仕事がこなくなるということがあると思うんです。そうすると妊娠2ヶ月の段階で突然収入が絶たれる可能性がある。もしそれが原因で妊娠したことを言い出せないことがあれば、それは問題だと感じる。でもそういった現実があるかもと思ったんです。

原田 そこにはやっぱり口約束だけではない雇用関係を結ぶ必要がありますかね。契約書までいかなくても。 

小林 それもあるけど、問題としては雇う側の知識が足りないのかもしれない。例えば妊娠7~8ヶ月は案外働けるぞ、っていうことを知らないんじゃないかって。

松本 でも妊娠中どれくらい働けるかは人によりますよね。

小林 もちろん人による。でもそのリスクを全部排除していったら、もはや働けなくなってしまうから、リスクと大丈夫な加減を正確にみんなが知識として持っていたら、本人の希望をきちんとヒアリングできていたら、バランスをとることができるようになるかもしれない。
未知のものに対しては一番大きなリスクヘッジを取っちゃうけど、どこが問題かをみんなが正確にわかっていることが大切だと思う。

原田 照明の仕事で例えて言えば、階段を上り降りしたり、20キロくらいの灯体を一人でギャラリーまで運ぶ、っていう雇われ方をしている人が妊娠したら、やっぱり心配になりますよね。

小林 発注側は、個人の得手不得手で適正を割と考えてる。「この人はこうだったらできる」っていうことがあらかじめわかっていたら対応している。でも妊娠出産に関しては未知の人が多いんじゃないかと感じる。

原田 我々が上の世代の人に「こういう働き方なら出来るから雇い止めしないでください」って言わないと若い方たちも言い出せないですよね。

小林 そうそうそう、うまくコミュニケーションができれば、もう少し働けるようになる。

中村 例えば耳が遠くなったとか老眼なったなど身体に起こってることは、妊娠とか以外は意外と言えてしまうかもしれません。
あと難しいなと思ったのが、自分の妊娠のカミングアウトって自分の口から言うのはいいんだけど、誰かが代わりに「この人はこうだからここに気をつけて」って伝えるのは関係性によるなといつも思っています。
配慮の話になると、本人ができると思ってることと、周りにいる人が思ってることは違うから「みんな配慮してね」じゃわからないこともある気がします。
親しい間柄でもそういうことは起こり得るので、やっぱり本人の口から伝えられる環境が必要だと思います。

原田 大学だと、発達障害などで教育的配慮が必要な人がいると、面談をして書面にする。「音が大きい映像を鑑賞する時は別室で過ごす」とか。
「配慮してほしい」と言われるとわからないけど、これはできるけどこれは難しいとか、具体的にわかれば周りが動くことができる。
私の妊娠中とあなたの妊娠中は違う訳で、経験者でもわからないことはある。「私の時は大丈夫だったよ」って経験者に言われるとすごく辛い。

中村 自身が出産育児の経験から声をかけやすくなったように感じる側面はあるけれど、人によって違うからそこは注意しないといけないなと思ってます。

小林 私は比較的つわりが楽だった。妊娠経験者だけどつわりの大変さがわからないから、妊娠3~4ヶ月頃は普通に平気じゃんってどこかで思ってしまってるって自覚しておかないと危ないなと意識するようにしています。

原田 つわりは人によっては後期まで続く人もいるし、入院するぐらい重い人もいる。一方で軽くて仕事ができる人もいる。自分は経験したし仲間もいるからそういった違いがあることがわかるけど、もっと未知の人は「大変なんでしょ」ってなりがちですよね。

松本 さわらぬ神にたたりなしみたいな。

小林 あ、それだ、さわらぬ妊婦にたたりなし、なんだと思うんですよ今の犯人は。
妊婦は大事にしなきゃいけない。妊婦や子どもがいる人には配慮しなきゃいけない、っていう変な呪いがかかってるなって。当人は「できることはあるのにな」って思ってるかもしれない。そこのミスマッチをコミュニケーションと正しい知識でもうちょっと埋められるんじゃないかなってずっと思ってます。

原田 出産後もそうですよね。出産後すぐ働きたい人もいれば、2年は休みたいと考える人もいる。人によって違うけど、「あの人は育児中だから」ってラベルを貼られちゃうと、それで孤立してしまう可能性がある。自分が元気だったら伝えて、まわりも希望の条件を聞くってことができれば、働いていくことができる。

●なぜこの活動を続けるのか


松本 さて、なんで私たちがこの活動をしているのか、についてなんですけど…。

小林 子育てが一番大変な時にはなんとかしたいって思いが強くあったけど、日々の生活と、できることが増えてきた仕事にどんどん時間を取られて、その気持ちがだんだん後ろにおかれてきているかもしれないという実感がある。だから今ここで気合いを入れておかないとな、と。だってこの活動を辞めてもだれも怒らないから。笑
だから自分で気合いを入れないと何か起こせないな、と。

中村 育児と仕事の問題はすぐに個人の問題にされがちな印象を感じます。私の子どもの手がかからなくなってきたんだけど、そこで『もう考えなくていい』、というマインドになっちゃったらどうしようって思っています。
自分の子どもが小さいときはすごく関心を持ってたけど、子どもが成長して手がかからなくなってくると、興味関心が子どもから自分個人の方に向いてくる。
だからこの活動を意識的に継続していくっていうのは大変かもしれないけれど、この問題を考え続けていきたいなと思いますね。

松本 さっき愛子さんが言ってたように、この活動は辞めてもいい訳ですよね。でも我々はやりたいって思ってる訳じゃないですか。それはなんでなんでしょう。

小林 私は単純に、照明業界から人材がいなくなるんじゃないかって危惧が大きいです。

松本 (照明家は)女性が多いから?

小林 そう。今までって「出産をするか」「仕事を辞めるか」の二者択一でしかなかったと思うんですよね。多分ですけど。あとは20代後半で子ども産んで、10年くらい休んで、30代後半にかえってきて仕事を再開するとか。それか子どもがいないか。

原田 仕事を続けていくためには、出産を選択しないできた人が多いってこと?

小林 そう、じゃないのかな。実際はわからないですけど。私は出産前にけっこういろんな先輩に「子どもほしいんですけど、どうやって仕事を続けたらいいですかね」って聞いたんですけど、「5~6年休んでもいいんじゃない」って言われることも多くて。でもそれは前向きな感じで、5~6年休憩したって続けられるよって意味合いで言ってくれてたと思う。
だけど今は出産の年齢がどんどん上がってて、30前後で産む人が増えてきた。
30前後から10年休んだら、もう40代になってしまう。体力的にどうなのか。老眼が始まったりするのも40代くらいじゃないですか。

松本 年齢的にも割と上だから、周りも気を使ったり。

小林 私は子どもを産んで本当に良かったと思ってるから、20代の方たちが「子どもを産みたい」って思ったらいいなと思ってる。でもそうすると30代のちょうど中堅という年齢で子どもを持った照明家が離職していく。で、ブランクを経て40代で復帰とか考えると、照明界けっこう切実な問題を抱えてるんじゃないかと。

原田 ストップじゃなくてじわじわ働けるといいよね。そこから復帰する。

小林 うんそう。0から再開するのは本当にしんどい。私は今現場に出てるのが、全盛期の2~3割くらいだけど、一応出てはいるんですね。でも現場感みたいなのがどんどん落ちてってて、仕事ができなくなってるなって実感してる。新しい機材とか、手法とかどんどん進化してる。それでもギリギリ現場に出てるから追いついてるけど、それが10年切れてしまったらと思うと。まったく現場から離れてしまうのと、ゆるゆるっと続けてフェードインするのとじゃ圧倒的に差が出る。
だからけっこう切実にこの活動は誰かがやらなきゃって思ってます。


●子どもがいる人といない人を分断したいわけではない


中村 先日クリエーションの際に一緒になったアーティストと話して、「子供を持つ人と持たない選択をした人同士を分断したい訳じゃないのに、環境が我々を離していくことを悲しく感じてしまうけれど、作品のクリエーションを通し、お互い対話をする中でその違和感や疑問が回収されていくのが良い」と話してくれて。

原田 当事者だけじゃなく、子どもを持たない選択をした方や、子育てに積極的に関わってこなかった世代の方とかが、仕事と子育てを両立している人たちがどう思ってるか、を知る場所にもなっていくのかな、プラットフォームデザインlabが。
当事者は当事者だけで、ではなく、その他の方たちが知るきっかけになったらいいですよね。そういった方たちに対して私たちが窓口になって発信していきたいですね。

中村 そして窓口が窓口じゃなくなっていくといいですよね。ダイレクトに繋がるといいですよね。

全員 うんうん。

松本 私は10代の頃からこの業界に関わってきて、本当に演劇の仕事が好きだったんですよね。
だからそのまま考えれば、子どもを持つ選択をしなければ良かったんですけど、でも自然発生的に「子どもがほしい」って気持ちが湧いたんですね。本来「子どもがほしい」という気持ちも「好きな仕事を続けたい」って気持ちもどちらも自然なものだから、両方大切にできてほしい。
だからそのために自分たちができることがあれば、そのために頑張っていきたいです。

●自分がやりたいことと育児、「両方希望していいんだよ」と言いたい


小林 因みに舞台の仕事を続ける理由って、お金と、その他何かあります?

原田 …お金だけだったら他の仕事を選択してるかな。

松本 やっぱり芝居が好きだから、ですね。観るのも好きだし。

小林 自分の生き方を充足させるために創作活動を続けている、それが仕事になっていようがなかろうが、ということですよね。
この、「創作活動」と子育てを両立させるってことについて考えていきたい。
例えば私が働かなくても家計は回るってなっても舞台の仕事は続けていきたいと、きっと思う。
今現在私たちはやりたいことが二つある。それをうまく両立させることを「希望していいんだよ」っていう感じにしたい。

原田 仕事を続ける理由が「やりたいこと」だけだったら、子どものために辞めた方がいいんじゃないか、というのが今の風潮。より子育てと両立しやすい仕事に鞍替えすべき、自己実現のためのやりがいがあると思ってるものだけど子供のために捨てよう、ではなくて、これも子育てと両立できる手段だよ、もしくはその手段を作ろう、という考え方を広めるのが我々の目指すところですよね。

小林 母親はあきらめるものっていうのが日本の文化だったかもしれないけど、もう少しわがままに、ほしいものを欲しがったっていいじゃないって方向にしたいですね。

中村 仕事も子育ても、どちらも自分のやりたいこと。どちらかだけを選択できないから自身も「揺らぐ」のかなと思います。あと子供と過ごす時間はある意味、子どもと「生き直し」をしていると感じることもあります。その上で「やりたいことを持ってる自分」と「育児をしている自分」、両方持ってる自分が存在していることが面白いと思えるようになりました。舞台芸術に関わる人生がこういうもんだっていうパターン化されすぎず、そういう関わり方や生き方もあるんだっていう提案や、いろんな方のお話しが聞けたり共有ができる場を作れたらと思います。


今回のレポは以上です!話し始めると話題があっちこちへ飛んでなかなか止まらない我々ですが、その中のほんの一部を紹介しました。
最後まで読んでいただきありがとうございます!

無理せず、ゆるく長く繋がっていきましょう。



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