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子育て座談会レポ 『舞台の仕事と子育て、私の理想像』
まさに真冬の寒さ、という日々が続きますね。
お正月頃のカラッとした寒さではなく、灰色空とじわりじわりとくる底冷えが身体にこたえます。
寒さで体が固まらないよう、私は寝る前にゆるゆるとストレッチをしていますが、皆さまはどんな風にこの季節をお過ごしでしょうか。
さて、今回もオンライン座談会の内容を一部公開します!
それぞれが持つ、仕事と子育てをする上での理想像を語り合いました。
是非ご一読くださいませ。
【参加者】
舞台監督 りんりんさん
現在育児中につき舞台監督の仕事は年に1〜2本。
普段は大道具会社で事務として働いている。
俳優 マキさん
現在育児中につき舞台の仕事は年に1~2本。実家の自営業を手伝いつつ、映像の仕事もしている。
俳優 ことりさん
現在育休中。子供が産まれる前は保育園で保育補助の仕事をしながら、役者として活動。自分の劇団では作・演出を手がける。
劇場勤務 マルさん
都内劇場で制作として勤務。保育補助で2年働いていた経験あり。仕事が休みの日にはシッターの仕事をしている。舞台と保育の生活を続けている。
+プラットフォームデザインlabメンバー(小林・原田・中村・松本)でお送りします!
舞台監督 りんりんさんの理想 『身内の理解』
舞台監督 りんりんさん 私は結婚後しばらく妊娠できなかったんですね。妊活まではいかなかったけど、計画してつくるのは無理だなと思ったのでそのため仕事はストップしなかったんです。
現在は子育てしながら細々と仕事ができていて、理想とまではいかないけれど、ありがたいなあと感じています。
今までの自分の体感として、現場の方が子育てとの両立に理解してもらえることが多いと感じます(子どもの病気による急な早退など)。
むしろ身近な身内や親の方が頼りづらい。私の場合、親が距離あるところに住んでいて、普段頼ったりするのが難しいんですけど。熱が出たから見てほしいとか、日曜の現場があるから見てほしいとか、そういうことが言いづらいですね。
現場というよりも、身近(身内)の理解があったらいいのにな、と感じています。
松本 現場よりも家庭内での理解を求めているんですね。
舞台監督 りんりんさん そうですね。夫は、子どもができたら私が現場を辞めると思ってたみたいなんですね。
産後、はじめて稽古場に行くことになった時も「え?子どもいるのに?」「なんで?」と言われました。夫は現場復帰することに抵抗があったようです。
今はそこまで言われなくなったんですが、でも事務の仕事もあるし、頻繁には現場にいけない感じですね。年に1~2回現場に行けたらいいけど、私としてはもう少し行けたら嬉しいな、と思っています。
松本 演出部や舞台監督の場合、稽古期間から公演終了まで現場につきっきりなので、時間的にも期間的にもかなり拘束時間が長いですよね。
普通に考えて子育てとの両立はかなり難しいなと思うのですが、そのセクションの方たちで実際に子育てと仕事を両立している人はいるんでしょうか?
小林 何人かはいますよね。女性も男性も。夫婦で舞台監督しているご家庭の話では、子どもを22時まで保育園に預けて現場に出ているとか聞いたことがあります。
松本 そうか、やろうと思えば方法はあるんですね。
松本 マキさんはいかがですか?
俳優マキさんの理想 『泊まりがけで子どもを見てくれるフリーパーソン』
俳優 マキさん 私の理想ですよね。今年旅公演もやってみたんですよ。2ステくらいのめっちゃ短いやつなんですけど。
座組みは家族を連れてくることを想定した上でオファーしてくれて。でも結局、数日だったら保育園行ってた方が楽だろうということで、家族は連れていかずに旦那が子どもを見ていました。
そうですね、うちの劇団で5都市ツアーとかやっている時、お子さんのいらっしゃる先輩は、『劇団内の公演に関わっていない人を子守り要員として一人連れていってもいいですか』ということで代表に交渉して連れていったりしていました。
うちの劇団はいま必死で子育て支援に取り組んでいるんだけど、仕組みを作るのがかなり大変で。なんで大変かって言うと、ケースが人によって全然違くて、例えば送り迎えをやってもらうもらわないとか、喫煙者に対してどうとか、そういうことがお母さんによって子どもにどうしてほしいかが結構違って、そこがとってもセンシティブで。
企業だと、シンプルにお金で解決する。ホテル代を出すとか、シッターさんの旅費を出す出さないとか。
下手に劇団員内でまわそうとすると、一長一短だな、と。とにかく子育て支援はとても難しそうです。
で、自分の理想に戻ると、うちの会社は海外出張があって、2~3週間現地に滞在しなきゃいけないことがあったんですけど、しょうがないから主人の夏休みを早めてもらって、主人と子どもと一緒に行ったんですけど、結局主人も仕事をしながらだったから、フリーの人がいないと無理だなと感じました。
もう本当に全員死にそうになって、みんな白髪が増えたみたいな。笑
その子を見てくれるフリーパーソンがいないと、無理だな、と。
泊まりがけで面倒を見てくれる人が気軽にいるといい。
資格のあるなしは私的には別に気にしてないです。
雇う方も資格がないと割り切って雇うから、多くを期待せずその方が逆にいい。
泊まりがけで、時間を気にせず、宿泊も厭わないシッターさんがいたら最高。そういう方がほしいですね。
松本 マルさんは現役でシッターの仕事をしてらっしゃいますが、泊まりがけってあるんですか?
劇場勤務 マルさん 私自身は泊まりがけは今のところしたことがないです。最長21時までですかね。
私の登録するシッティングサービス内では、泊まりがけは選べるけど、依頼自体はあまりないですね。
俳優 マキさん 出張同行はありますか?
劇場勤務 マルさん 一回きりでなく、定期で入っているご家庭で既に関係を構築しているシッターさんは、1 週間海外旅行に同⾏するなどのケースも中にはあるようです。
俳優ことりさんの理想 『劇場の退館時間を早めて』
俳優 ことりさん 今年の三月末に役者として公演に関わって、その時は稽古が基本的に19:00-22:00で、長い時は14:00-22:00でそれが週4日、最後の方はほぼ毎日稽古がありそのまま小屋入り、というスケジュールでした。
稽古期間中に子どもを連れてきてもいいとは言われていたけど、いや無理だろうと。
19:00から22:00に子どもを外に出して、人に預けたとして、そこから子どもと家に帰るのが日付が変わる前くらい、そこからお風呂とか無理だろう、と思って。
結局稽古中は親か夫にお願いしていました。夫(音響家)は同じ現場だったが、オペには入らずプランで参加していたので、夫が合流してからは夫に見てもらっていました。
小屋入り期間中は朝9:00から22:00まで夫婦二人ともいない状況だったので、その期間は親に見てもらってなんとかまわした感じでした。
子どもが風邪をひいたら終わりだったけど、運良くなんとか幕がおりたかな、という状態でした。
団体は『子どもを連れてきていいよ』と簡単に言うけど、じゃあ実際に子どもを稽古場に連れてきたらどうなるか、それは火を見るよりあきらかで、実際はどうしてもプロの介入がないと厳しいと感じる。
シッターさんなのか企業型の託児所なのか、外部に委託する、プロの手をかりるところは理想としてやっぱりないといけないかなと思う…。
すみません、ちょっと子どもがローリングしているので抜けます笑。
松本 どうぞどうぞー
俳優 ことりさん 途中退室
松本 じゃあその間に、マルさんの理想はどんな感じでしょうか?
劇場勤務マルさんの理想 『劇場内に保育施設を』
劇場勤務 マルさん 本当に理想で言うと、企業内保育のように、劇場⼩屋⼊り中に⼦どもを預けられる場所が同じ施設内にあるといいなと思います。劇場内に保育室と劇場付きの保育⼠がいることが理想…。いっときだけ空き楽屋を保育部屋にする、ではなく専用の「保育室」。
稽古場でのシッティングについては、⼦どもが同じ稽古場にいるというのは、やり方や年齢によってはできると思いますが、稽古中の集中力を保つという点で難しさを感じています。何名かの保護者の方の話を聞いて思ったのは、稽古場と別室(同じ施設内の)にいられることが理想かもしれませんね。
劇場の保育⼠の求人があるなら、私はすごくやりたいです。「ママいるよ」とお子さんとモニターを見ながら話したり。保護者が同じ施設内にいることがわかると、安心感も違うのではないかと思います。
松本 素敵ですね。でもその場合たぶん、専門の保育士が必要ですよね。
劇場勤務 マルさん そうですね、創作のサポートとして劇場職員が兼任するのは…保育の専門性という点では良くないです。マネジメント業務と保育では、全く別の頭(考え方)が必要になります。
中村の理想 『子どもと退館し、その後すぐに寝かしつけられる環境』
中村 私は産後すぐに復帰したこともあり、24時間やっている保育園に結構預けてました。22時に退館して子どもと帰ると24時近くになる。だからその24時間保育園があったからそこの近くに引っ越したんです。そこしか頼みの綱がなかった。
一番良かったのは、出張先の劇場の近くにホテルがあって、22時に引き取ってホテルに帰って寝る、というのが一番楽だった。
お迎えに行って、一緒に帰って、そこから寝かしつけて次の日を迎えるまでがすごく大変で。
だから理想だけ言うと、劇場に預けられて、且つすぐに寝かしつけられる環境ですね。笑
松本 おお、それは究極ですね。
中村 究極なんですけど、理想なので大きく言っちゃいます。笑
子どもが小学生になってきて学校の生活が始まると、簡単に休ませるわけにもいかなくて。子どもの時間とうまくはまっていけるような託児や働き方が開発できないかな、と思ってます。
小林の理想 『変化する理想』
小林 私の場合、産まれる前と産まれた後と、理想がどんどん変わっていったなと思います。
産まれる前は、保育園は20:15まで預かってくれるので、それまでに迎えに行けばいいと思ってて、
夫の仕事が定時に終われば20:15にはお迎えにいけて、私はそれ以降も働けるなと思ってた。
でも結局現実には20:15まで預けたことがなくて。
小規模の保育園だから、19:30になったら保育園には子どもが誰もいない状態なんですね。そのとき「あ、19:30でもかわいそう!」という気持ちになってしまった。
産前はできるだけ長く子どもを保育園に預けられればいいなと思ってた。
私は産前に仕事の調整をしたので、0歳のときはあまり仕事をしていなかった。やっぱ子ども大好きになっちゃうじゃないですか。そんな遅くまで預けたくないな、という気持ちになってしまいました。
今は、ぶっちゃけあまり働かないですむのが理想です。
実際今そんなに働かずに、時間内でできる仕事をうまくやらせてもらいながらいれるから、理想に近い形ではあるんですけど。
ちょっとやりながら、緩く続けながら、っていう良い感じではあるんですけど、でもなんなら家計が許すならゼロでもいいな、くらいの気持ちに今なってて。
それは産前には一切なかった気持ちですね。
だから理想はどんどん変わるな、というのが産まれてから初めて知ったことでした。
いつか子どもが22時まで一人でいられるようになったら、ブランクを感じさせずにさっと仕事に復帰できたら理想ですね。
そこまで自分の能力を維持できるかちょっと怪しいですが。ピンとか振れなくなってそうでちょっと怖いですが…笑
子どもをなんとかしよう、よりも、働き方が子育てに馴染むことが理想ですね。
松本 今お話しを聞いていて思ったんですけど…、私は産前に切迫早産で緊急入院になってしまい、仕事をいくつか飛ばしたんですね。病院のベッドで泣きながら謝罪メールを各方面に送っていたんですけど。その反動で、産まれてからはどんどん仕事を入れなきゃと焦ってしまった。
離れたら呼ばれなくなる、自分だけ置いてかれてしまう、という焦りが強かった。
ただ、二人目が産まれた今は、家族も自分も楽な生活がいい、という考えに変わっていって、そしたら結局現場を離れることになっちゃったんですけど。笑
あの頃を思い返して感じることは、休職して一回離れてしまったらもう戻れなくなるっていう怖さがなくなればいいな、ということですね。
あ、ことりさんが戻ってきました。先ほどの続きをいいですか?
続き:俳優ことりさんの理想 『劇場の退館時間を早めて』
俳優 ことりさん 小屋入り期間が一番問題に感じていて、劇場に託児があったらいいのはもちろんなんですけど、極論を言うと、小屋入りとか全部含めて18時に終わるようにしたい。そうなればいいのになっていうのが理想です。
子育てだけの面から見て、それがお客さん側の需要があるかどうかは置いておいて、公演のケツではなく、完全撤収を18時にして、延長保育でぎり間に合うぐらいでいけたら最高だな、と思います。
中村 うちの夫は舞台監督なのですが、以前夫と、『稽古時間を短くしたとしても、結局その後スタッフは作業するし、さらに制作さんは最後まで残らなきゃいけないし。それをなんとかするには劇場が19時に閉まるようになるしかない、節電にもなるし。』と話していました。
19時閉館だと逆算して稽古は17時に切り上げ、その後スタッフ作業とか打ち合わせを19時までに終わらせる、とか。そうなってくると全然違うよね、と理想の理想ですがそんな話しを私も夫としています。
松本 わかります、みんな残って作業しているのに自分一人で「お先に失礼します」って気まずいですよね。みんなで一斉にお疲れ!って帰れたら気持ちいいですよね。
小林 私は鋼鉄の心でどんどん帰ってますけどね。18時になったら小林は帰る、通し途中でも帰るみたいにしてます。「通し終わってから打ち合わせできないのは困ります」とはっきり言われたことはあります。でも最初から「小林は18時に帰るって言ってるじゃん」ということはままありますね。
舞台監督 りんりんさん コロナ真っ只中の時、稽古場が早く閉まる時期があった。自動的にみんなが帰る時間が早くなった。そのおかげで復帰しやすくなりましたね。
自分が保育園のお迎えで早く帰ったとしても、その後の稽古は1時間くらいで、自分が把握できない時間が1時間分くらい、それならまだなんとかなるか、と。笑
だから全体の時間が短くなるとやりやすいというのはありますね。
あとは、朝は私が早く出勤して掃除とかやるから、その分みんなより少し早く帰るね、みたいに現場の人数に余裕があればそんなふうに役割分担することができる。
演劇の人は休みが全然ないから、スタッフに関しては、現場に入れる人数を増やすことができれば、子育て中の方ももっと関わりやすくなるかな、と思います。
小林 それは本当に直近の課題として、なっていったらいいですよね。ヨーロッパのユニオンみたいにできたらいい。
13時間を基本に働くのをやめたらいい。子育てしてる人が早番、都合が着く人が遅番ってやれればいいのにね。
原田の理想 『効率的に働ける選択肢を』
原田 海外の公演のツアーだと、二人くらい舞台スタッフのアンダーがいて、僕どのポジションもできるから、子どもやご自身に何かあったら変われるよ、というシステムでやっているケースがある。潤沢にお金があればそうできると思うんですけど。
逆に、私は仕事が大好きで、子どもがいない時は100%仕事をしていたんですけど、そうやって仕事を趣味にしている人は一定数いて、稽古場にずっといてそれが当たり前になっている、みたいな。
そういう人がいるのは良いのだけど、その人たちが基準になっているのはもう辞めよう、という気持ちですね。
先に帰る人を責めたり、あまり出勤できない人を責めたりする風潮がなくなるんじゃないかと期待してますけど。
劇場勤務 マルさん 18 時までに全部終わったらいい、にとても共感します。以前関わっていた現場で、演出家が⼦育て中のキャストに協⼒的で、稽古を全て17時終わりにした例がありました。でもそれは演出家、作品創作の中心人物が⾔ってくれたから実現できたのだとも思います。
例えば演出家が「いや、稽古は21時までやるものだ(キャスト側がスケジュールを合わせないといけない)」という⽅だったら、それは実現できません。おそらくプロデュース側は「しょうがない、21時まで」となる。稽古場には、作品創作以上の強制力というのは現段階では無いと感じています。
劇場が 19 時に閉まるのは本当に理想ですよね。
原田 稽古が18時までに終わればその後芝居を観にいける。その分観劇人口も上がりますよね。一番舞台の仕事をやっている人が一番観に行けない、という状況、あれやめられたらいいなって、子どもいない時から思ってました。稽古が早く終わってもどうしても残業があるから、稽古を16時くらいに終わってもらって、残作業を18時に終わらせるとか。
あと、みんなが稽古場にいなくてもいい時もあるんじゃない?ってすごく思います。
イギリスのプロダクションだと、稽古場にずっといるのは舞監的な仕事もする演出助手、あとはその日に必要な俳優とスタッフ少人数でその日の稽古をする、1日の終わりに稽古内容はリハーサルノートで全体で共有する、重要なことは週1のプロダクションミーティングでスタッフ全員で話し合う、というやり方が主流だときいたことがあります。
稽古場で雁首揃えて生で観なきゃいけないって、そうするべきプロダクションもあるとは思うけど、そういったスタイルがベースになってるっていうのは、自分たちで自分たちの首を絞めちゃうんじゃないかなと。効率的に取り組みたい人が効率的に働ける選択肢があるといいですよね。
子育てをすることで変化していく現場への価値観
俳優 マキさん 私はみんなの子育てに関する価値観がわからなくて、怖くて新しいとことお仕事するのはなかなか難しいと感じています。まあ役者は産んじゃうと本当に色々なことが変わりすぎて、身体の形も変わるし、いろんな意味で諦めと共に仕事の仕方が変わってくるところがありますね。
続けることと、周りの目とか、統一されていない子育て感とかが難しいですよね。
うちの母親は「産んだんだから舞台なんてやってる場合じゃないでしょ」ってタイプの人で。
舞台監督 りんりんさん そうですよね、人の数だけ価値観がグラデーションのようにある。子育てしながら、自分の価値観も変わってくる。産む前と産んだ後と、さらにその後何年後とか、その時々で自分も周りの価値観も変わってきますよね。
俳優 マキさん …そうですね、自分が働いてて思うのは、いろんな価値観ウェルカムだよって風には見えていたいな。許容する器ありまっせっていうのは見せておきたいとは常に思ってますね。
小林 子どもを持ってない人と分断したいわけじゃない。
長い人生の中で合致しないときに、一瞬離れてもいいじゃんってなった方が平和なんじゃないかなって今は思います。でも今は一回離れたらもう離れるしかないってなる方が多いのが悲しい気がします。
私は続けてる方だけど、それでも出産を期にいろんな団体とお別れをして、この人たちと多分もう一生仕事することないんだろうなという気配もあるんですけど、それって悲しい。
私たち雇われる側の人はオファーがくるのを待つしかない。
みんなもっといっぱいコミュニケーションを取って、もっと柔軟に、今はだめだけど2年後は大丈夫かもしれない、っていうもっと色んなことが柔軟になったらいいなって。
そのためには本当はもっとみんながお話しするべきなんですよね。
この座談会では今回マルさんがいることがとても重要なことだと思ってて、子どもがいない人とか、シングルである人生を選んだ人とかともっとお話しした方が、きっといろんな発見があると思いました。
過ごしやすい稽古場とは?
稽古場の理想像
舞台監督 りんりんさん 私は一年位前に耳の聞こえない聾者の方が何人かいるカンパニーで一緒にお仕事をしたことがあったんですけど、耳が聞こえないから間に通訳さんが入るんですけど、
私は子どもがいる状態で、かたや耳が聞こえない人が稽古場に当たり前にいて、かたや独身で稽古場にはりついてる人もいて。
聾者っていうひとつのカテゴリーの人が入っただけで、現場にいる人のレイヤーが増えたというか、それですごい居やすかったんですね、私、稽古場に。
演劇ってどうしても、同じことをやってる、同じような考えを持ってる人種がギュンと集まった感があるから、子どもを産んだことでちょっと右や左にずれただけで、とたんに居づらくなってしまう。それがもっとなくなって、色んな人がいる中の一人ですって感じになっていけたらもっと居やすくなるのかな、と思いました。
中村 自分たちがマイノリティのカテゴリーに入ってしまった感じがしますよね。
私も聾者の方と仕事したことあったんですけど、その時すごく楽しかったです。通訳の方を介して話すことでさらに輪が広がって、こうゆう空間作りはいいなあと思いました。
全てを演劇に費やしていた人生から、出産後に変わった価値観
俳優 ことりさん 子育てをしない人たちの助けを借りないと出来ないことが多いなと感じています。
自分は劇団員だけど早く来れない、子どもがいない人に早く来てもらわなきゃいけない、ということもあって。
子どもがいない人たちは「子どもを連れてきていいよ」って簡単に言うけど、子どもがどんな感じかっていう解像度が低くて。簡単に言うけど、「いいの?本当に連れていくよ?!大変なことになるけどいいの!?」みたいな。
自分の子どもを犠牲にするのもどうかと思うけど、連れてくのも手だったかなと思わなくもないです。
こんなに大変なんだとか、こんなことしなきゃいけないんだ、とか。
口では簡単に「連れてきていいよ」とか「子育てに理解あるよ」って言うけど、実際に子どもを連れてきて、稽古全然できませんでしたって状況にならないと、子ども連れてくるってこういうことなんだとか、子育てしながら演劇するってこういうことなんだって一生わからないままで。
子育てに優しいってポーズだけ取れちゃうっていうのも問題なのかなっていう気がしています。
だから、悪者になる覚悟で、連れていける範囲で連れていっちゃうもの手なのかも。連れていかないと始まらないかも、と。
内々だけで済んじゃうだけで成功体験が積み重なっていくのも、それはそれで広がっていかないかなと思う。失敗を積み重ねていくのも、子どものためにはならないかもしれないけど、でないと現場が変わっていかないかなって気もしますね。
劇場勤務 マルさん 劇場単位、劇団単位で、⼤きいところの制度から整っていくといいですよね。
⼀⼈⼀⼈が変わるのもそうなのですが、根底に、育児と舞台の両⽴は当たり前だから、という価値観が浸透していると思います。
(舞台芸術は)⾝銭を切ってやるもの、時間を全て注ぎ込んでやることという考え方が改善されればいいなと思う。原⽥さんがおっしゃっていた海外のカンパニーの例も知れたら。
俳優 マキさん 私、演劇好きすぎて、出産する前は年間12本とか出てて、12本出てれば食っていけるんじゃないかと思ってた。全然そんなことなかったんですけど。笑
まあ本当に幸せなことに、大学卒業してから妊娠するまで途切れてことはなかった。
妊娠して、仕事を断るようになってから、ある意味良かったことは、演劇をドライに見ることができるようになった。好きだから出ようじゃなくて、費用対効果重視というか、ビジネスライクに、冷静にお仕事として見られるようになった。
こうなって良かったんじゃないかと思いました。
原田 子どもが産まれる前は、個人としての成功を人生の目的として持ってたところがあるけど、子どもが産まれたことで、子どもの健康とか成長とか、次の世代に何を残すのか、の方に価値観が変わったこと自体が今は宝物だと思います。
失ったものも多いけど、時間とかお金とか、そうじゃなくて人間としての幸せというのも考えられるなと思いました。
舞台美術家としては理想の形じゃないかもしれないけど、原田愛としては理想に近い形になれたことが、そう思えるようになるまで何年もかかった気もするけど、徐々に獲得できてきた気がします。
俳優 ことりさん 子どもを産んでから自分の中で演劇の価値が重くなった。産む前は、稽古大好き、演劇大好き、やりたい出たい、なんでもいいから関わりたい!っていう状態から、
子どもを産んでからは、ものすごくいろんなものと天秤にかけて、いろんなものを犠牲にして、色んな人に頭を下げて、
そこまでの価値はあるのか、自分が役者をやるこの本番1週間にそこまでの価値があるのか、と考える期間がすごくあって。
自分個人というより、自分自身悔しい思いを結構したから、この先に私みたいに悔しい思いをする人がいない世界にしたい、涙を流しながら、苦しみながら演劇をする人がいない状態になればいいとすごく思って。
私の中でベビーシッターとか、託児とか、自分ができることはそういうことだと思うので、助けになっていきたい、というのが私の中では理想かもしれないです。
松本 考え方は変わっていくけど、やっぱり舞台と繋がっていきたいと思ってる。
自分が好きだと思うから、自分がやりたかったから舞台の仕事をしていた。それが産んでからは、家族のために生きてるという、今まで無かった感覚ができて、客観的に演劇を見られるようになった。
ことりさんが言うように、今後自分がどういう役割を果たせるようになるだろうかという思いは、すごく共感します。
最近、プラットフォームデザインlabの中でも、ゆるやかに繋がっていこう、という話が出てくる。一緒にいなきゃいけないことはない、けどずっと繋がっていこうね、という関係性が、この団体にせよ仕事にせよ、持てたらいいですよね。
舞台芸術の仕事は続けていくことが色んな面で大変だけど、無理なくゆるやかに繋がっていけたら一番の理想だと、今日皆さんの話を聞いて感じました。
今回の座談会報告は以上となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事は座談会内容を一部抜粋したものです。
座談会に参加いただいた方、この記事を読まれている方、それぞれの立場を尊重した上で話題を選びました。
座談会に参加した個人や、関わる団体が特定されないよう配慮しています。
この中で書かれた内容はあくまで一事例であり、全ての事例に通ずることではありません。
特定の団体を非難・否定する目的ではなく、今後の舞台活動に活かしていただきたいという思いからこの記事を公開しました。
プラットフォームデザインlab