見出し画像

メンバー自己紹介 その④

初めまして、プラットホームデザインラボ4人目のメンバー、原田愛です。
 
令和生まれの5歳の娘の、母をしております。
舞台美術の仕事や、最近は大学で教員もしております。
 
この団体の自己紹介4人目でトリを務めさせていただきますが、順番が決まっていたわけではなく、単に書くのが遅くなってしまっただけなんです。
ネタバレや炎上が怖くてSNSなどもほとんどやっておらず、読みづらい文章になっているかもしれません・・・最後までお付き合いいただければと思います。


1.舞台美術家の仕事


 
いつ舞台美術の道を志したのか、はっきりとは覚えていません。
舞台空間、舞台芸術への憧れはずっとあって、祖父母や父母におみそで連れて観に行ったオペラを観劇して、発想の自由さ、壮大な空間作りに大いに感銘を受けました。
 
このあたりだいぶ割愛しますが、幸いなことにご縁があって、劇団での研修、アシスタントなどを経て、2010年ごろから独立して、舞台美術家として活動しています。
 
さて、舞台の現場は、基本的に対面での打ち合わせ、対面での確認が非常に多く、在宅勤務とは無縁の職場です。
コロナ禍の期間にオンライン会議や動画での稽古確認、稽古ノートでの報告などが整備され、遠隔で確認できるようになってきましたが、やはり直接会う、観る、集まることによってスムーズに進むことはとても多いです。

 
美術プランは稽古の始まる何ヶ月も前から話し合っていても、最終的には日々の稽古で検証して、完成していきます。
準備をした模型や図面を持って演出家をはじめとする他のスタッフ、キャストと打ち合わせをして、稽古場で稽古を観る、その結果を持ち帰ってプランに反映していく。そのプロセス自体が、舞台美術のプランニングの醍醐味だと思っています。
 
そのため、時間がいくらあっても足りるということはありません。基本的に自分の時間のほとんどを、関わっている作品のために使ってきました。
特に複数の仕事を並行してプランしているときは、稽古も何本か並行しているので、一つの稽古場で稽古休みでも、別の稽古場が動いているので、完全なお休みを取るのは難しいと感じていました。
仕事を断らず、できるだけ現場に足を運び、「居続ける」ことが舞台業界での自分の存在意義だと思っていました。
 

2.妻として、母として


 
それが結婚して、今までの生活スタイルを変えざるを得ないことになりました。
幸いなことなのですが、入籍後すぐに子供を授かり、新婚生活と妊娠生活が同時に始まることになったのです。
妊娠が発覚した時には例年通り仕事を受けていました…
十月十日と言いますが、月のしるしの有無で自然妊娠が分かった場合はその時点で2ヶ月目になるため、約8ヶ月後には子供が産まれてくることになります。思ったより早く子供を迎えることになることに、気づきました。
慌てて仕事先へ連絡、妊娠の報告をし、プランの時期を早くする、不測の事態に備えてアシスタントを代理で立てる、などスケジュールを調整させていただきました。連絡したどの方からもマタハラなどは一切なく、祝福する言葉をたくさんいただいたことを覚えています。感謝しています。
 
そして出産後は、大きく時間の使い方が変わりました。
体感としては、自分のために使える時間は半分になります。
運よく、希望する保育園に入ることができましたが(これはこれで、なかなか大変な手続きでした・・・)例えば夕方のお迎えのあとに食事を準備して食べさせ、食べむらがあれば応援して、お風呂の準備と介助、着替えさせ、気に入らない寝巻きだと選び直し、次の日の準備、また予定外の子供の要求…などなど、寝かしつけの頃にはへとへとで子供が寝た後にデザイン仕事をするのは、私にはまだハードルが高すぎます。

また土曜日は土曜保育を利用できますが、日曜日に仕事が入った場合は託児先を探さなければなりません。延長保育を利用できる時間以降も同じくです。

そのため日々、子供のスケジュール、自分のスケジュール、そして夫のスケジュール、頭がパンクしそうになりながらテトリスして、ベビーシッターなどのサービスを利用しながら、調整して働いています。
 
独身時代よりは、関わる作品数はペースダウンしていると思います。たくさんお仕事を受けるよりも、一つ一つを丁寧に関わるようにしようと思っていますが、再演作品や新しくご一緒する方との予定外のスケジュールなどで、もっと時間が欲しいと思ったことは、1度や2度ではありません。

子供がコロナの濃厚接触者に指定され小屋入り中の舞台稽古をオンラインで参加したこともありますし、もちろん私だけ在宅でオンライン打ち合わせさせていただいたこともたくさん。許可をいただいて地方で立ち上げる作品の劇場仕込みに娘を連れて行ったこともあります。
同じ現場は2度とないので、毎回試行錯誤しております…。
 

3.恵まれていること、それでも不安なこと


 
子育てをしながら舞台に関わる人間として、幸運なことが私にはたくさんあります。

まず私自身に、体力が割とあること。
子供が比較的体調を崩しにくいこと。

夫や家族が舞台美術の仕事を続けていくことに理解があったことも、恵まれていると思います。
 
また幸運なことに、年齢の近い先輩で子育てしながら舞台の仕事を続けている方が何人もいて、妊娠中からたくさん助言をいただきました。すでに舞台業界で子育てをしながら作品作りに関わることができるという実績を示して地慣らしをしてくださっていたことで、続けていく勇気ももらえたと思います。
 
そして今は、プラットホームデザインラボのメンバーが心強い仲間としています。
 
ただ、そんな私でも子供を犠牲にして仕事をしていいのか、という不安が常にあります。
この仕事が好きだからこそ、舞台に関わることが楽しいという気持ちがあるからこそ、仕事を続けようとすることがエゴなのではと自問することがあります。
母親が大好きと思ってくれるこの時期にもっと一緒にいたいという欲求と、ここまで続けてきた仕事に継続して関わっていきたいという欲求、その狭間を行き来しています。

そして、ひとつでも条件が違えば、こうして舞台の仕事を続けていくことが難しかったと思います。
 
これから舞台に関わる人々が、人生のどのステージでも、子育てしながら舞台で仕事を続けていくという選択のできること、そのためにはどのようなケアが必要なのか、自分自身も含めてまだ答えが出ていません。
その議論をする場、ケアをする場、必要な情報を得られる場づくりをこのメンバーと作っていきたいと私は思っています。
 
これを読んでいる方には、子供がいる人も、これから欲しいと思っている人も、子供を持つという選択をする予定のない人も、その選択ができない人も、様々な立場がいると思います。

少し偏った立場からの意見になっているかもしれませんが、こういう悩みのある人もいるのか、と受け止めてもらえれば。

そしてまだまだ生まれたばかりの何者でもない団体ですが、見守り応援していただければ嬉しいです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?