元キーエンスのトップ営業が、新規事業をバンバン売るためにやっていること
うちの会社に、元キーエンスのとても優秀なセールスパーソンがいます。前職では、営業所の過去最高売上を何度も叩き出していた人です。
(↑Forbesにも取り上げてもらいました)
彼を採用したのは「新規事業」のセールスをしてもらうため。
ぼくらは「スタートアップファクトリー」を運営しています。革新的なスタートアップを次々生み出すビジネスモデルで、この1年ほどでvertical SaaSを中心に、10以上の事業を立ち上げてきました。
新規事業のセールスは、一般的な営業と比べてもかなり難しいです。
まだ商品がこの世に存在していない段階で「完成したら導入するよ」という内諾を得ないといけない。
彼が入社する前は正直、なかなか思うように成果が出ていませんでした。
しかし彼が来てから、事業は驚くほど加速しました。入社するなりすごい勢いで、アポや購入の内諾をとりつけていったのです。
いったい彼は、他のセールスとなにが違うのか? 新規事業をバンバン売るにはどうすればいいのか?
今回はぼくなりに、彼を見ていて学んだことをまとめてみました。
スキルアップしたいセールスパーソンの方や、新規事業に関わる方のお役に立てばうれしいです!
課題は「聞く」のではなく「ぶつけにいく」
営業をするとき「まずはヒアリングから入る」という人は多いと思います。
最初から自社サービスの説明をしてはダメ。まずはヒアリングでお客さんの課題を引き出してから、それに合わせて提案していく。
営業のテクニック本なんかには、よくそんなふうに書いてあります。
でも、うちの営業が本気で商品を売るときは「どんなことにお困りですか?」とは聞きません。いきなり「こんなことに困ってますよね?」と切り出すんです。
課題を聞くというよりは、課題を「ぶつけにいく」みたいなイメージ。「こういうことってあるじゃないですか」という「あるある」から入るんです。これがうまくいくと、お客さんから「こいつ、わかってるな」と思ってもらえます。
ヒアリングから入る形の営業だと、30分〜1時間かけて、ようやく信頼が得られればいいほうです。でも、最初から課題をぶつける方法なら「最初の5分」で信頼をつかむことができる。
特に、相手がニッチな業界であればあるほど、リアルな課題感をぶつけられたときの効果は大きいです。
もちろん、的外れなことを言ってしまったら意味がありません。ドンピシャでお客さんの課題を当てにいけるように、事前にいろんな人から情報を聞いておきます。
商談前の「事前ヒアリング」を、かなり入念にやっておくんです。
これは一般的な営業と新規事業の営業で、ぜんぜん違うところだと思います。
お客さんの業界の構造を理解する
事前ヒアリングをする相手は「お客さんが喜びそうな情報」を持っている人。
そこを見極めるためには、まずお客さんの業界の構造を理解しないといけません。
たとえば、ぼくらは先日「建材サーチ」という、建材業界向けの商品検索サービスをリリースしました。この事業は、立ち上げから8ヶ月ほどで、エクステリア業界の大手4社すべてに導入してもらうことができました。
ここまでスピーディーに営業が進んだのは、業界構造を把握したうえで事前ヒアリングをおこなったからでした。
建材業界の構造はこのようになっています。
ぼくらがサービスを買ってもらいたいお客さんは「建材メーカー」さんでした。メーカーさんは、代理店や販工店を通して、エンドユーザーに商品を届けます。
代理店に選んでもらわないと、メーカーさんは売上が立たない構造。だから、メーカーさんがいちばん気にしているのは「代理店の声」でした。
そこで、ぼくらはメーカーさんへ営業する前に、代理店のお話をとことん聞いておいたんです。
なんの実績もない状態で、いきなり営業してもなかなか厳しいです。でも、メーカーさんは「代理店の声」なら聞いてくれます。だから、代理店からメーカーさんへの要望を伝える「代弁者」になることにした。
そうやってメーカーさんからの信頼を勝ち取っていったんです。
ヒアリングしながら、商品も改善していく
さらにサービス自体も「代理店の仕事が楽になるような仕様」につくり込んでいきました。「こういう機能があったら便利ですか?」と、代理店のニーズを拾っていったんです。
「メーカーがぼくらのサービスを導入してくれたら、代理店さんとしてはすごく助かりますよね」という状況をつくっていく。
すると、代理店さんからメーカーさんに対して「御社はあのサービス導入しないんですか?」と声をかけてもらえるようになります。
代理店の声を、メーカーさんは無視できません。もはや「買わざるを得ない」ところまで持っていけたので、あとはスムーズに営業が進んだのです。
業界構造によって売り方を変える
建材の事業は、ターゲットとなる会社数がすごく少ないことがもともとわかっていました。大手メーカー4社が、エクステリア業界のシェア80%ほどを占めている状態だったんです。
「100社中20社が買ってくれればいい」のではなく「4社中4社」落とさないといけなかった。だから、しぶとく外堀から固めていって、どの順序で攻めていけばいいか考えていきました。
ただし、それはあくまで「そういう業界構造だったから」です。狙いたい業界の構造によって、どのような営業スタイルをとるかは変わってきます。
たとえば「お客さん候補の会社がたくさんあって、低単価の商品をたくさん売らないといけない」みたいな事業なら、1社を落とすのにそんなに労力をかけなくていいです。それより、量を伸ばす工夫をしたほうがいい。
型にとらわれず「この商材の業界はどんな構造になっていて、どんな方法で売るべきか?」をつねに考える必要があるわけです。
業界構造を理解したうえで、お客さんがいちばん求めている情報を集める。そのなかで商品自体も、いちばん買ってもらいやすい形につくりこんでいく。
新規事業のセールスには、このような動きが求められるのだと思います。
なぜキーエンス出身メンバーが活躍するのか
うちの営業には、彼以外にも元キーエンスのメンバーが多くいます。
キーエンスの営業は、商品についてものすごく詳しいことで有名です。
メンバーに話を聞くと、キーエンス社内では「お客さん先に行ったら、その場で注文書をもらって帰ってくるのが当たり前」「もらってこれなかったら帰ってくるな」みたいな文化があるのだそう。
いちいち「ちょっと会社に戻って商品開発部に聞いてきます」なんてことを言ってたら、目標がぜんぜん達成できません。だからみんな自然と、商品の知識をどんどん身につけていく。
営業するうえで「現場のおじちゃんと、どれだけ仲良くなれるか」はけっこう大切なポイントです。
キーエンスの営業はほんとうに知識が豊富で、競合の製品の使い方までとても丁寧に教えてくれるそう。だからお客さんも、ついつい相談してしまうんですね。
あと、キーエンスでは営業が「ニーズカード」というものを書くそうです。
商談で聞いたお客さんの声を、ニーズカードに書いて商品開発部に送る。商品を売りながら「つくる」ための情報収集もやっているわけです。
このスタイルが染みついているから、元キーエンスのセールスは、新規事業を売るのも得意なのかなと思います。
営業であり、コンサルであり、最先端の開発者
新規事業の営業は、商品を「売りながら作っていく」仕事です。
ふつうの既存事業の営業は、すでに決まった商品があって「この商品はここに価値があって、こうすれば売れる」とわかっていることがほとんどです。
でも、新規事業の営業は「そもそもなにを売るといいのか」すらまだわかっていない状態でスタートします。あるのは、事業の構想と営業資料だけ。
だから「営業活動を通して、サービスの価値を磨き込んでいく」意識が必要なんです。そして価値を磨き込むには、
・一次情報、つまり「現場の声」をどれだけ集められるか
・営業で聞いた情報を、どれだけプロダクトに反映できるか
がポイントになってきます。
営業であり、コンサルであり、最先端の開発者でもある。それが、新規事業のセールスパーソンなのです。
新規事業セールスに「飽きる」ことはない
優秀なセールスパーソンにありがちなのが「トップ営業になってしばらくすると、自分の仕事の天井が見えてしまって、つまらなくなる」という現象。
同じ商品をただ売り続ける。目標を達成すると最初はうれしかったけど、すぐに新しい目標が設定されて、またそれを達成してのくり返し。その先のキャリアを考えたときに「10年、20年先も同じことをするのか」と、つまんなくなっちゃう。
優秀であるほど、そんな壁にぶつかるセールスパーソンが多いのかなと思うんです。
でも、新規事業の営業なら、飽きることはまずないと思います。
ぼくらは、お客さんと一緒に商品をつくっていきます。商品の改善に「ゴール」はありません。商品をアップデートすればするほど、アプローチできる市場もどんどん広がっていきます。
「このプランの中から売らなきゃいけない」と会社で決まっているから、お客さんのニーズとはちょっと合わないんだけど、がんばって売るしかない……みたいなモヤモヤもありません。
「これを買ったほうが、お客さんにとって絶対にいい!」と思うものを売れる。
もちろんそのぶん大変です。でもそうやって、つねに前を向いて仕事ができるのは、新規事業セールスの大きな魅力なんじゃないかなと思います。
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最後に。
優秀なセールスがいる環境で、一緒に働きませんか?
手前味噌ですが、うちには紹介した彼をはじめ、優秀なセールスが揃っています。セールスパーソンとして成長したい方にとっては、ぴったりの環境だと思います。
また、PdMにとっても「作った商品をちゃんと売ってもらえる」最高の環境です。
興味をもってくださった方は、ぜひカジュアル面談させてください!