LEONE #37 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第7話 1/3
1章:The Good, The Bad and The Ugly
第7話 カウボーイ(2億GD)の夜 パート2
まるでメインストリートと裏道があべこべになってしまったようだった。
わずか数十分前まで酒宴していた不穏な奴らと、彼らを誘惑する売春婦たちでいっぱいだった『ペイV』の裏道は、いつの間にか誰もいなくなっていた。ごろつきたちが急いで蹴とばしていったテーブル、椅子、そして転がる酒のビンや食べ物の皿だけ残っていた。
一方、数十分前まではネズミ一匹も見えなかったメインストリートには、いつの間にか頼もしい勢いで群れをなして歩き回る賞金稼ぎでいっぱいになった。彼らは、それぞれ手慣れた武器を取り出し、殺気たっぷりの目で目的を探しているところだった。
少なからず開いていた数少ない店さえ、サイレンの音が流れたとたん店を閉めた。この都市の住民なら、そのサイレンの意味を知らないはずがなかった。
「さすが。コープランドめが言ったとおりだ。久しぶりの“カウボーイの夜”だね」
一群の武装した保安官の後ろから、リーダーと見られる保安官が、満足げに笑っていた。『ペイV警察署』でビル・クライドを尋問していた彼だった。
彼の胸元から、星形の保安官バッジと共に、金属製の小さな名札が輝いていた。
『ペイV警察署所属、首席保安官:カルビン・マックラファーティ』
「カルビン兄貴。しかし本当に大丈夫でしょうか?」
「何がだ?」
賞金稼ぎで混雑した街の風景でも鑑賞しているのか、カルビンは声をかけた保安官を振り返らずに答えた。保安官はしばらくためらった後、口を開いた。
「……ビル・クライド。あの青二才だけの見張りでよかったんでしょうか?」
「ははっ」
カルビンは軽く笑ってしまった。
彼はすぐ返事をする代わり、ポケットからタバコを取り出して口にくわえた。ライターを取り出して火をつけた後、一口吸って吐いた。
「知るかよ」
「はい……?」
「2億GDだ。小娘一人捕えたら2億GDなんだよ。あいつの罰金? そんな小銭に構う余裕がどこにあるんだ?」
「しかし万が一でもヤツに逃げられたら、『パンテラ』に言い訳の余地も……」
「勝手にしろと伝えな」
吸い殻が落ちた。彼はそっと足を上げ、吸い殻をそのまま踏みにじった。
「ここはカウボーイの都市だ。おれたちは警察だが、またカウボーイでもある。ここでは法の裁きより、カウボーイのルールが先だ。この俺をここに座らせた時点で、やつらもそれを知らないとは言えないだろう」
「兄貴……」
「さらに」
カルビンの視線が再び町に向かった。
街を埋めた賞金稼ぎの数は増えつづけていた。いやらしいことでもしていたのか服もまともに着てないヤツがいれば、お店からのんびりした顔で出てくるヤツもいた。
数十、いや数百。ひょっとすると千を超える数。
『カウボーイタウン』というニックネームに相応しい、よりによって今セロン・レオネがいるところは、あのカウボーイの惑星。いつも懸賞金の猟師でにぎわっている険悪な場所だった。怪物と対敵する者は必ず怪物と似てくる……いつも犯罪者を追う、賞金稼ぎも違わないはずだった。
の行列だった。
「この都市に登録された賞金稼ぎがおよそ二千人。その中で今日、この都市に残っているやつらだけでも数百人にはなるはずだ。その女が何をしたのかはしらんが、この数の賞金稼ぎを相手にして一時間でも持ちこたえたら、おれたちは終わりだ。その一時間の間にクライドが逃げ切れるんだったら……それも認めるべきだし」
保安官はこれ以上口を挟まなく、カルビンもこれ以上彼に説明をしなかった。その代わりに、彼はゆっくり他の保安官たちの前に歩いていった。彼が指で音を立てたら、保安官たちの視線が一斉に彼に向かった。
「さあ、やろうども! あまり遅くならないうちに、俺たちも一儲けしに行こうか?」
カルビン・マックラファーティ。
本来この都市の守護者であるべき、首席保安官の目が貪欲に光っていた。彼の他の手には、ピピッと音を発する小型レーダーが握られていた。
「俺たちのアドバンテージをかっこよく使ってみよう」
著者プロフィール チャン(CHYANG)。1990年、韓国、ソウル生まれ。大学在学中にこの作品を執筆。韓国ネット小説界で話題になる。
「公演、展示、フォーラムなど…忙しい人生を送りながら、暇を見つけて書いたのが『LEONE 〜どうか、レオネとお呼びください〜』です。私好みの想像の世界がこの中に込められています。読んでいただける皆様にも、どうか楽しい旅の時間にできたら嬉しいです。ありがとうございます」
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