LEONE #56 〜どうかレオネとお呼びください〜 一章 第14話 3/3
屋上から投げられた謎の物体が自分たちの頭上に飛んできた時、賞金稼ぎの群れの中には雷のような叫び声が轟いた。
「爆弾だ!」
「撃て!」
賞金稼ぎたちの武器と、『ホワイトスカル』の拳が一斉に宙を向いた、ルチアーノも鼻で笑いながらその謎の物体を見上げた。
だがカルビンはその可能性を否定した。いくらビル・クライドでもあの大きさの爆弾をすぐに調達することは難しいはずだ。
彼はこれもビル・クライドのごまかしだと確信した。
だから皆が空中の物体に気をとられている間も、カルビンだけは屋上のビル・クライドから目を離さなかった。
予想通り、ビル・クライドはすでに手すりに片足を引っ掛け、虚空に向かって銃を向けていた。
「なんだと!」
本当に爆弾だったのか? 空中でそのまま起爆させるつもりか!?
その状況ではカルビンでさえ、空中の物体を眺めるしかなかった。そうして街の全ての人々の視線がその謎の物体に向けられ、少なくとも数百の銃口がその物体を狙った。
ただ、その中で最も早かったのはビル・クライドの拳銃だった。
バン!
一発の銃声が響いた。
続いてカチャっという音と共に爆弾が口を開いた。
それは口を開け、その中にきれいに納まっていた中身を一つ残らず吐き出した。
最初はそれがひらひら舞う雪のように見えた。
その雪は夜明けの光を受けて、『ペイV』の強い風に乗ってひらひらと舞った。自分の役目を全うし、いつの間にか消えてしまったその“爆弾”がそうだったように、街を埋め尽くす数百の賞金稼ぎたちも口をあんぐりと開けたまま、その光景を鑑賞した。誰も見たことのない夢のような光景だった。
しかし夢はいつかは覚めるもの。
その雪片がゆっくりと賞金稼ぎの額の上に舞い落ちた。その賞金稼ぎは目が覚めた人のように、ゆっくりと手を伸ばし自分の額の雪片を確認した。
その結果、彼は自分がまだ夢を見ているということを確信した。
「金…………?」
彼はボヤっとその雪の名前を読んだ。
彼の呟きは、まるで疫病のように周りに広がっていた。
「金…………?」
「金だと…………?」
雪片が徐々に下に降りてきた。そして大勢の賞金稼ぎたちが空中に舞う雪片、いや紙幣を奪い合った。それとともに尋常ではない狂気が彼らの間に広がった。
「金だ……! 全部金だ……!」
「なんだこれは、全部金だと……?」
「金だ!」
「全部金だ!」
その狂気と歓喜が、呆然としていたカルビンを目覚めさせた。
カルビンはすばやく辺りを見回した。
すでに狩人でごった返していた。
今にも爆発するかのようにうごめいていた。未だ街中に舞っている紙幣に向かってカウボーイたちの欲望が沸き起こっていた。
「クソくらえ、この野郎ども !隊列を守れ!」
彼の絶望に満ちた声を最後に、四方から歓声と怒号が街を覆った。
誰も止められなかった。賞金稼ぎたちは狂ったように互いを踏みつけながら、空中に舞う紙幣を奪い取るためにぴょんぴょんと飛び跳ねていた。カルビンもレンスキーもルチアーノも大声で叫んだが、その声はすべてカウボーイたちの歓声でかき消されてしまった。
その中で少女の手を掴んで、空港の中に消えていくビル・クライドの姿を見たような気がした。
カルビンは恐らくそのすべてが真実だと思っていた。
それでも少なくとも最後の場面だけは自分の勘違いであってほしいと切に願うしかなかった。
<一章終わり>
著者プロフィール チャン(CHYANG)。1990年、韓国、ソウル生まれ。大学在学中にこの作品を執筆。韓国ネット小説界で話題になる。
「公演、展示、フォーラムなど…忙しい人生を送りながら、暇を見つけて書いたのが『LEONE 〜どうか、レオネとお呼びください〜』です。私好みの想像の世界がこの中に込められています。読んでいただける皆様にも、どうか楽しい旅の時間にできたら嬉しいです。ありがとうございます」