LEONE #20 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第10話 1/2
序章:Running On Empty
第10話 ルチアーノの手違い
「何か問題でもありますか? ここであの船が爆発したら、このクーデターの証拠は綺麗に消えるし、さらに『SIS』の兵士たちも処理できるでしょう。あなたにとって問題は何もないはずです」
「セロン・レオネがまだあそこにいるんだ!」
ルチアーノは怒りに満ちていて、レンスキーを壁に投げ飛ばした。
レンスキー・モレッティはは約2秒間、空中を飛んで壁にぶつかり、骨が折れる音とともに床に転がった。何人かの組織員が呻き声をあげ、彼を介助するために駈け寄った。彼らはレンスキーが死んでないことだけを祈った。
しかし。
レンスキーは彼らに手を上げて制止した。組織員たちが震えながら止まっている間、レンスキーは折れた左手を振りながら立ち上がった。
彼はこんな状況下でも、落ち着いた声で聞いた。
「セロン・レオネですか」
「そう、セロン・レオネだ!」
ルチアーノはまたズカズカと歩いてきて、レンスキーの胸ぐらをつかんだ。
いくらレンスキーでも苦痛の呻き声を上げざるを得なかった。もちろん、ルチアーノにとってレンスキーの痛みなど考慮の対象ではなかった。彼はレンスキーの顔に向かってデカい声を張り上げた。
「俺が今夜犯して! 恥を与えて! 絶望の中で屈従させる! あのセロン・レオネがまだあそこにいるんだ! わかったなら質問に答えろ! 誰がテメエにこんな命令をした!」
獣めが……。
レンスキーは自分の感情を隠し、苦痛に満ちた呻き声を押し殺した。
今彼の前にいる者は、相変わらず“ボッシー・ルチアーノ”だった。
変態的で、どSの欲望にまみれて、敗者を蹂躙しようとしている獣だった。彼のようなものは絶対に、何があってもレンスキー・モレッティのボスにはなれない。
ボッシー・ルチアーノはもう『アニキラシオン』の新しいボスなのかもしれない。いや、そうなるであろう。
しかし彼はレンスキー・モレッティのボスではなかった。
今までも、これからもそうなることはない。忠誠的な執事、レンスキー・モレッティを裏切るように導いた人はこんな獣なんかではなかった。
彼の主、こんな獣より百倍は優雅で、狡猾で、周密な主。その主の命令に従って、レンスキー・モレッティはこの作戦を遂行していた。
ルチアーノの乱暴な行動すら、主の予想の中に含まれていた。
レンスキーはゆっくり口を開いた。
「……無論……」
著者プロフィール チャン(CHYANG)。1990年、韓国、ソウル生まれ。大学在学中にこの作品を執筆。韓国ネット小説界で話題になる。
「公演、展示、フォーラムなど…忙しい人生を送りながら、暇を見つけて書いたのが『LEONE 〜どうか、レオネとお呼びください〜』です。私好みの想像の世界がこの中に込められています。読んでいただける皆様にも、どうか楽しい旅の時間にできたら嬉しいです。ありがとうございます」
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