bfc4各作品ひとことメモ

Twitterの下書きから転記。ほぼ自分用メモ。初読の印象。随時更新。

一回戦

○グループA

「ファクトリー・リセット」

のっけから完璧なうまさと面白さでお手本かよ!!!!この短さで完成している。なんか面白すぎて謎にうちのめされた

「小僧の死神」

現時点の超個人的好み、理屈抜きの好(ハオ)!!!!瞬間最大風速が来た。この小説なんかわからんけどめっちゃアツい。おれも疾走(はし)っていたかのようだぜ……。ただなんでタイトル志賀直哉なのかわかんないので読み落としあるのかも
<11/6追記>やっぱ志賀直哉はよくわかんなかったけど、何度読んでも疾走感が新鮮なまま読めてこいつぁすげぇぜってなってる。例として正しいかはわからんけど『死霊のはらわた』によく似たエネルギーが満ちていてもうマジで好き。

「柱のきず」

あああタイトル~~~! と安易に納得しかけて、……ん?いやでも、となる視点の移動が面白い。これ、誰?
<11/6追記>家系図とかは個人的にそんなに気にならなかったんだけど、それより読めば読むほど「なんかいいなー」という気持ちが強くなった。読者が「柱のきず」に目を向けるとき再生される家の記憶みたいで、レコードみたい。

「ミジンコをミンジコと言い探すM」

あけっぴろげにあっちとこっちが繋がっちゃうとんでもない軽やかさと楽しさと強かさが心を解放してくれる

「現着」

めちゃくちゃおもしれーーー!そして無政府家政婦の響きのよさ(さいご「えっ…つら」って声あげた)

「タートル・トーク」

ヨシノ……なにがあったんだよヨシノよう……気になるじゃねえか……でも亀の夢ってそんな悪いアレじゃないんじゃなかったっけ、そんな不吉そうに語るなよヨシノ……

○グループB

「メアリー・ベル団」

〆でそう言うかーーー大好き……ッ!て陥落した。いやこれ最高 好き 好き
<11/6追記>照れくさいし個人的な話をしたくなかったので書かなかったけど、かつての私を(そして今も少し後悔している私をも)肯定してくれてありがとう、と思った作品でした。

「或る男の一日」

目論見を成功させるための出来事ピックアップ(仕掛けづくり)が巧妙……。平凡というモノがなにで構成されているか考え抜かれているからこそ、「あっ…ヘテロだと思ってた…」てなる人はいるはず。逆にとくになんもおもわず読んでいた場合どう読めるのかが気になる。

「滝沢」

めちゃくちゃ笑ったけど詐欺テンプレ知らないで読んだら不条理感が怖くすらある。ヒトを騙る怪異からの呼び掛けぽくない?(タッキーを騙るのになぜ「滝沢」に呼び掛ける…「今井」じゃないのか…人名は滝沢しか知らないみたいでこえー)

「踏みしだく」

大抵の人が嫌悪を催しそうな行為を執拗に描いて、デパ地下歩くシーンなんてミュージカルみたく華やかで、で、最後に官能に反転させるのめちゃ良&巧。あと私バイセクなのでこうやって普通に出てきてくれると嬉しくなる

「十円」

こんなん無条件で好きになっちゃう。墓てお前、大変じゃんか。この町このあと一体どうなっちゃうの

「軽作業」

言葉が勝手にぽこぽこ走り回って騒動を引き起こす感じはかわいくもあるし、コミュニケーションが実際はどこで発生してるのかについて描かれてるようにも読めてめちゃおもろ。

一日目ここまで。ぜんぶおもろい 怪獣だらけだ

○グループC

「三箱三千円」

まず身も蓋もないことを言うと、内容がだいぶ苦手。ごごごごめんなさい。違うんです作品が、じゃなくて、内容がです。
それまでは、ああ、こういう時期あったよねで面白く読んでいたのが、「何の責任も取れない子供が」。子供。この単語が来た瞬間に拒絶反応が出るくらい語り手が無理になってしまった……。作者の意図どおりなのだとしたらめちゃくちゃうまい……。自分で子供とか自称する程度には無意識で保身に走ってんだよね……。よくもまあそんなんで救うとか言ってくれるわね、うっざ、しかもそれすら「でも自分でも自覚しているし」という事実で逃げるのよね。うーわウッザ! と、かなりムカムカしながら読んでしまう。中学生相手に。完全に作者の掌。くそー!
でも、最後の最後のとこで神崎さんの言ってることがなんとなくわかったのかな。偉い。たぶん昔の私よりぜんぜんえらい。だから死ぬなよ。あとバットで殴り込んで煙草しかゲットできてないから、たぶん警察にも掴まらん気がするよ……。死ぬんじゃないよ。って思っちゃうのも作者の術中。く、くそおおおおお! うまいっすね!!!!

「父との更新」

あーこういうやつか! とわかったようなつもりで読んでたら(すみませんすみません)、途中から違和感に次ぐ違和感で翻弄される。
初回は無線調になっちゃうのもわかる。けど二回目からはさっさとお父さんの質問に答えて、訊きたいこと訊いたほうがよくない? 無料期間終わっちゃうよ……となっていき、「パパパパ」に至ってえっこれ、もしかしてわざとやってるの? なんで? 最後なんていったの? お父さんが気にしてた期間になんかあった? ねえ??? ってなっていって、ぶつんと「了」が来る。なんか不穏な空気を感じてしまうんだよなあ。捻くれすぎかな。もっかい読も

「校歌」

ちょっとねえ、これ好きすぎて、あの、一回スマホおいてもいいですか。って誰にともなく言い訳しながら本棚の整理とかしちゃったりしました。どうやって言語化したらいいんだろう。「いつのまにか二人のものになっている。」ここで落ちました。漢字とひらがなの配分含めて完璧に好きな文章。
誰の事情も詳しくは明かされない。ただ、会話の断片から推測するしかない。意味ありげに思えても、実際は意味なんかないかもしれないのに気になってしまうんだよなあ。
最後の「弟こそ」っていう所で、ああ、かりんさんは“失敗”したと見做されてるのかなとか思ってすごく切なくなる。かりんさんは本当はどんな子なんだろうか。めーたんとずっと仲良しでいられたらいいな。

「神崎川のザキちゃん」

開始そうそう人間じゃないものが寝っ転がってる小説読んだの、これで二回目だ。すげー。(一回目は皆川博子の庭が寝返りうつやつ)めちゃすき……。
「音だけがポルターガイストのようにしばらく空を覆い」良! 好(ハオ)!!! 「何かを作っている工場」だし(何かってなによ)、スイカも車もテレポーテーションしよる。この町どこにあるんだろう。絶対あるよねここ。ザキちゃん……元気になってよかったけど警察にも子供にも石投げられててめっちゃかわいそうなんだけど、どんな奴なのザキちゃん。いる 絶対どっかにいる あいたい 会ったら腰抜かしちゃうかもしれないけど。

「鉱夫とカナリア」

やーーーだーーーー悲しいじゃんーーーーなにそれーーー! じゃあ私と手つなご???(そういう問題じゃあないんだよな)
地下に潜る前にはちょっと訛りがあるだけで躊躇なく笑うけど、暗闇の中では手を繋ぐしかない。でも、手を繋いだところでポニーは二度と地上に帰れない。カナリアもポニーも、そしてたぶん人間も、道具であり相棒でもある。そういう関係が存在する地下の世界に対峙してびびり倒す子供たちと共振した。

「坊や」

書かれている世界を素直に追うだけで楽しい。感想にしたらそれだけになっちゃうんだけど、この豊かさはヴィジュアルのない文字にしか出来ない豊かさな気がする。最初のひと文字、読み間違えて詠唱まちがえちゃう魔女、めっちゃかわいい……。坊やがなんでそんなんなっちゃったのか、私にも続きをきかせてほしいのだが。だめか?

○グループD

「日記」

配偶者多くない……? ていうかこの語り手、「何も考えてなかった」といった直後に「じゃあ何を考えていたかと言うと」とかいいだすし、なんか怖いというか、なんか……あやしい……? 「あとで読んで。」とかいうけど、タイトル「日記」よな? 日記読ませてんの? Web日記的な? 知らんけどで〆られても、いやわしもしらんが?! なに?!

「サトゥルヌスの子ら」

(詳細は違えど、自分と重なる部分があるように思えて冷静に読めず箇条書きです)

  • 名前が出てくるのは佳寿子だけ

  • 彼女はおそらく実家から動いてない

  • 奇妙な(グロテスクといえるかもしれないけど、カストリ的な陰湿さのないグロテスクて、心地よい。マコーマックの猟奇っぽいというか。)イメージが饒舌にぬるっと描かれていて良い。

  • 発覚する悪夢のような現実に、鎮魂などという言葉では到底いいきれない怒りを見た。泣いた、が、かなしさよりは怒りの涙。

  • (いやいやかもしれないが)鍛え、磨きあげた技術で、彼女は作品の本来の(?)かたちをすくいあげることに成功したんじゃないか。

  • サトゥルヌスといえば我が子を食らうあの絵をすぐ想像するが、赤ずきんちゃんみたいにサトゥルヌスの腹を割いて食われた子を取り出すイメージで終わるの良いな。奪還、でも、遅い。佳寿子が引きずり出したのは「食われたという事実」であり、その怒りと小さな勝利(と敗北)の灯りが世界の片隅でともる。壮絶。

「予定地」

孤独、でもたぶん必要な孤独。そういう風景が見える気がする。言葉が自分の記憶をひっかき回して、自分だけに見えるスナップ写真がほんとに見えてるんすよ。人が写ってない(写ってても他人に興味なさそうな)、冷たくてきもちいい景色が映ったポラロイド。

「終わりについて」

ウオオオオ、わっっかんねー。悪夢みたいな、夢は現実の情報整理とかいう説もあるらしいから、まさしく悪夢というか、ところどころ現実みたいなのがさらに変。へんな夢をみているみたいな話。終わりの巨人……。見てみたいな。

「王の夢」

キングて。なんというか、リアルで……。他にその怨念を解放する方法なんかないんかな……。あと冒頭でありとあらゆる人から罵声を浴びせられる的な描写があるんだけど、これって書かれたとおりに受け取っていいんだろうか。その罵声にたいしてキングは怒りのクソデカ溜め息で応じてるようだけど、じつは「そんなふうに扱われてるような気がする」だけだったりして、と思えてしまう。語り手もキング本人で、キングが自分のことを外から見ながら語っているようにも読めた。そう考えると「ゆえにはたちになる頃から行き詰まった」の“ゆえ”が狭すぎるのも納得いく。にしても、どうしたらいいんかね、こういうのって。リアルだな……。

「死にたみ温泉」

こっっっっわ! 良い! すごい善意でやってんじゃん。生者からみるとまさに怨霊。ストロングゼロとかの現代事情を正しく理解してるところが厄介幽霊感すごい。幽霊が娑婆を把握するんじゃあないよ。だいたい、「ぬる、べり、かちゃ、めり、ぷしゅ」の「ぬる、べり」は何なのよ……と思わせての血かーい! もしかして爪も剥がれてます?! ってなったあたりでこの小説が大好きになってしまった……しまったのに……なんて邪悪な。「一月の埃の中でその人を見つけた。」とか、かっこいい文章で綴るんじゃありませんよ。人懐っこいからよけいやばいかんじしてヤバい。好きです。

二日目ここまで。あきらかに感想の文章量が増えている。レイアウトちょっこし変えた。みんなの感想読むと刺激になるんだよなー。すごくたのしいです。グループAとBももっかい読んで更新したいです。