「参加者名簿作り」という作業の自動化 #3(PA)その②
ちょっと前に、参加メンバーが決まっている会議を開催する際に、そのメンバー各々に出欠や出席の場合その形態、それから会議前のお弁当の要不要を確認し、名簿に転記していくというクソ面倒くさい作業があったという話を書きました。
Microsoft365が導入されFormsを使えるようになったことで、メールの返信内容を読んでいちいち星取表に記入していくというようなことは必要なくなりましたが、回答結果をダウンロードしたcsvファイルから既定のフォーマットの名簿に仕上げる工程からどのように手作業を撲滅すればよいのでしょうか。
Formsだけでは手作業はなくならない
Formsはたしかに画期的で便利なツールです。特に私が所属していた組織では、毎年関係者を対象にアンケートを行っており、何十枚、何百枚と返ってきた結果の集計作業を手でやっていた頃は地獄でした。勤続年数が長くなってその作業から解放された人も、例外なく以前はその作業をやらされてやっていたはずですが、これまで誰一人としてこの作業を何とか効率的にする方法がないかと考えて行動した人がいないというのはどうしてなのか?私にはまったく理解できません。とにかく何十年にもわたって代々やり続けられていた作業ですが、Formsを使ってアンケートを作ってしまえば回答結果の集約作業までオンライン上で完結するので、そうした作業は不要になりました。
ですが、Formsを使っている方ならお分かりかと思いますが、会議の出欠確認などは回答をそのまま名簿として使えるわけではありません。順番の並べ替えや「出席」という回答を「○」にするといった置換、不要な列を削除するといった整形作業がどうしても必要になります。したがって出欠確認フォームを作ってリンクを送れば終わり、とはなりませんでした。
設問が増えたら地獄
会議の参加メンバーが10数名で、確認項目が「出欠」「参加形態」「お弁当の有無」の3つくらいであれば、100歩譲ってFormsの回答内容を手で名簿に転記しても良いという方もいるかもしれません(私は1000歩譲ってもイヤです)。でも、もしこれが宿泊を伴う研修会とセットでの開催となってしまったら確認事項が一気に増加します。
仮に、上のような研修・会議を開催する場合、参加メンバーに確認すべき項目は以下のようになるでしょう。
1日目研修会への出欠
2日目会議への出欠
会議への出席形態
宿泊手配の要不要(2日目の会議だけ日帰りで出席する人や参加はするけど家が近いのでホテルには泊まらない、という人がいる)
1日目夕食の要不要
2日目の昼食お弁当の要不要
このように多くの項目を参加者一人一人に確認しなければなりませんので、これらを確認するためのフォームを作っていきます。
Formsには設問を分岐させる機能があり、これを使うと回答者にとって必要な設問だけが表示されるため便利ですが、最終的に回答が集まってからどのように集約していくのか、その時の作業を考えながら作っていく必要があります。
Forms編集画面の共有相手は慎重に選べ
ここで一つ、以前私がFormを作る段階で失敗したな、と思った経験を書きます。Formsを作成した私は、部署の他のメンバーAさんに設問項目に漏れがないかどうかを確認しました。Aさんはベテランではありましたが残念ながらITリテラシー低めの年配従業員です。私としては設問項目だけ確認してもらいたかったのですが、AさんはそもそもFormsをよく理解していませんし、当然設問が分岐されていることなど想定していません。
紙のアンケートのイメージしかないAさんは、フォームの編集画面をぱっと見て設問が多いことが気になったようです。「回答者の手間になることは避けたい」と考えたAさんは画面を勝手にいじりはじめ、フォームを編集してしまいました(泣)。これはリテラシーの低い人に編集画面を共有してしまった私のミスです。プレビュー画面など回答者が実際に見る画面を共有すべきでしたね。
ここでAさんが修正してしまった内容の一例をあげます。
【元のフォーム】
<設問①>10/31(水)の会議への出欠
・出席
・欠席
<設問②>「出席」と回答した人に、出席形態
・リアル参加
・オンライン参加
【Aさんが修正した後のフォーム】
<設問①>10/31(水)の会議への出欠と出席形態
・出席(リアル参加)
・出席(オンライン参加)
・欠席
見た目はAさんが修正した後のフォームのほうが設問が一つになっていてすっきりしていると感じるかもしれません。ですが、ここでこちらのフォームを採用してしまう人は「ITリテラシー低い人」だと自覚したほうがいい、と私は思っています。
なぜなら、この設問は一度に2種類の質問(出欠と出席形態)をしているからです。一度に2種類の質問をするということは、当然回答にも2種類の要素が入ります。つまり、1つのセルに2種類の情報が入ってしまうというわけで、回答が集まったシートをデジタル的に処理をしようと思った際に致命的になるのです。「データベースの1つのセルに入る情報は1種類」というのはデジタル化の原理原則だと思います。
集計の際の処理を考えてフォームを作ることの大切さ
致命的というのがどういうことか説明します。
初めの私のフォームで回答が集まった場合、以下のようになります。設問が2つあるので回答も2列にわたります。
名簿を作るためにこれを集計する際、出席者と欠席者の人数は2列目を対象に「出席」のセルと「欠席」のセルの数をCOUNTIF関数で数えればいいですし、リアル参加の人とオンライン参加の人の人数は3列目を対象に同様に数えればいいですね。
出席者の人数は=COUNTIF(シートの2列目,"出席")で簡単に求めることができますし、その他の人数も同様です。(画面はテーブルになっているので上記とは少し異なりますが、意味は同じです)
一方、Aさんが修正した後のフォームで回答が集まった場合は以下のように設問が一つなので回答も一列にまとまっています。しかし、この結果から出席者の人数と欠席者の人数、そしてリアル参加とオンライン参加の人数をそれぞれ求めるにはどうすればよいでしょうか?
「致命的」と書きましたが計算できないわけではありません。ただ関数が複雑になります。
出席者の人数を求めるためにはSUM関数とCOUNTIF関数とをネスト(入れ子)する必要が出てきます。例えばこの場合は=SUM(COUNTIF(シートの2列目,"出席(リアル参加)"),COUNTIF(シートの2列目,"出席(オンライン参加)"))となっています。
まあ、まだ合計を計算するだけならこのくらいのネストで済むので許容範囲かもしれませんが、この後、名簿の作成までを自動化するという想定でやっていたので致命的というか台無しという感じになってしまいました。
Formsを使ったら逆に手間が増える人も?
手作業をなくして集計作業を楽にするためにFormsを作ったのに、逆に複雑な関数を書かなければならなくなったり、処理の工数が増えたりして逆に手間がかかるようになってしまっては元も子もありません。
ただ、このあたりは回答結果が返ってきてからの処理方法や最終的に仕上げたい形まで、一連の工程をイメージして設計することができるかどうかにかかっているような気がします。アナログな手作業を行っているかぎり、とりわけアンケート作成と集計を分担して行っている限りは、このような想像力や設計力が養われることはないと思います。つまりいつまでたっても便利なデジタルツールを使えるようにはならない、ということです。
この続きはまた次回以降に書くことにします。