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理論とは何か?

理論とは何か?

マーケティングに理論はあるか?

結論から言おう。マーケティングは学問の一種かもしれない。しかし、そこには理論がないと言ってもいいかもしれない。

SWOT、AIDMA、AISAS。マーケティングの専門用語だね。知っている人もいるかもしれない。ここで、よくあるのが、SWOTをしました、あるいは、SWOTは理論であるという言説。これは、明確に違う。単なるフレームである。フレームは考え方の枠組みととらえることができる。なので、SWOTをしましたはイマイチ話が通らない。プロのマーケターから見ると奇異に聞こえる。

他にも例えば、3Cのように色々なフレームとか考え方はある。しかし、理論であるとは理論制御工学出身の筆者から見ると言えない。

では、理論とは何なのだろうか?

物理: 理論、数値シミュレーション、実験

物理というと何を思い浮かべるだろうか?文系タイプの人でもニュートンの運動方程式というのは聞いたことがあるかもしれない。ma = Fというやつね。これは、物理モデリングに使い、結構結果を出している。流体の基礎方程式として有名なナビエストークスの方程式はニュートンの運動方程式を拡張したものとも言える。

では、ma = Fを元にして、微分方程式を立てたら、終わりなのだろうか?だって、理論だし。それで、完璧でしょ?それは往々にして、Noである。

そこで、実験が入る。実験によって、微分方程式の計算結果がどの程度正しいか、検証する。仮説/実行/検証において、仮説を立て、理論を作り、実験で実行し、検証フェーズで考察する。100%のマッチは通常あり得ない。

そこに、数値シミュレーションが理論と実験のブリッジとして、入る。これは何か?実は微分方程式を立てて、数値計算をしているだけである。ただ、計算しているだけ?それは、違う。微分方程式がどのような挙動か?特性を高速、かつ色々な視点で調べるのに役に立つ。実験はそう何回も簡易な環境でできないしね。

数値シミュレーションは役に立つが万能でない。やはり、モデル化誤差や数値計算による誤差があるからね。

では、他の分野で言う、理論とは何なのだろうか?

理論ロバスト制御

筆者の理論ロバスト制御の論文は物理モデリングの結果としての、仮定から始まり、補題、証明が繰り返され、最後に定理と証明からなる。シミュレーションexampleはあるが、あくまでも、実際はこういう挙動を示すという、例であり、これは理論を補強するものではない。証明は数学的に証明される。

これは、明確に理論である。では、どんな状態でも、この理論は正しいのだろうか?それは3つの意味で違う。仮定通りではない、制御入力が大きすぎるといった、理論やぶれ。非線形性の扱い、などがある。

ハードサイエンスの一種である、理論ロバスト制御でも、どんな時でも完璧な理論など存在しないのである。

実験の重要性

何か、気づかないだろうか?そう、実験である。研究室内のミニチュアによる実験にしろ、実際の場で動いているものであるにせよ、実験は重要ではないだろうか?しばしば、理論は実験で覆される。これは、先に示した通り、十分にあり得る。

マーケティングで実験はできるだろうか?マーケティングの考え方は実際の環境、例えばビジネスの場で実践導入できる。しかし、小規模実験で検証できない場合が多数ではないだろうか?ここが、マーケティングが自然科学の派生物の学問とは違う点ではないだろうか?

コンピューターサイエンス、例えばNLPはCPUに閉じている

面白いのはコンピューターサイエンスの特異性であると思う。例えば、NLP(自然言語処理)はCPUでの計算結果が全てである。それは実際の実験に近いというより、実験そのもので、そして、現実に近い。対象とするデータセットが違うくらいかな。これを筆者はNLPはCPUに閉じている、と言っている。

コンピューターサイエンスに理論はあるし、有用である、と言っていいだろうと思う。

結言

お分かりだろうか?その有用性は確かで、マーケティング的な考え方と論理があるのは認める。しかし、マーケティングに理論はあるというのは難しいかもしれない。

一方、物理、理論ロバスト制御、NLPには理論があると言っていいと思う。

この言説が学問の理解を深めたり、学問への興味を持つきっかけとなれば、幸いである。

著者略歴

金輝俊 / Hwi Jun KIM
Position: 代表 CEO 兼 Principal
Role: 戦略コンサルタント 兼 ITアーキテクト

ハイテクITベンチャーのProduct Manager / Chief IT Architect、Webベンチャーのグループリーダー、外資系IT企業のProject Manager 兼 Systems Architectなどを経験。会社を離れて数年後、Webベンチャーと外資系IT企業グローバル本社は、それぞれ東証マザーズとNYSEに上場した。

ファッションテックベンチャーのグロースハック室 室長 兼 システム開発部スペシャリストに。30人4部門を参謀長として指揮統括し、約10億円の株式による増資に成功。シーリズCへと導く。その後、起業。NMD Soft, Principalとして活動を開始。

社会貢献活動として、原爆の実相を伝えるためと、東日本大震災の解析のために、Nagasaki Archive、Hiroshima Archive、Mass Media Coverage Map of The East Japan Earthquakeなどの開発と一部企画に関わった。

主な著作にThe Real M.Phil Thesis: The Mathematical Foundation of Smart Material Systems / Yet Another Mori-TanakaMBA Thesis: The Modern Strategy from Japanがある。

筑波大学 第三学群 工学システム学類 学士(工学) First Class (イングランド基準。70%以上がA評価)

Coventry University大学院 Control Theory and Applications Centre, Master of Philosophy (Upper Master, 研究特化型学位, ドクターコースベース)。飛び級入学。返済義務無し奨学金付き。

主な受賞にアレスエレクトロニカ展Honorary mention、経済産業大臣賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。

詳細なプロフィールはこちら:https://www.khj1977.net/

以上

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