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【昭和絵本語り・1】とこちゃんは どこ

『とこちゃんは どこ』
松岡享子/さく 加古里子/え
福音館書店/刊(1970:昭和45)


とこちゃんは とことこ かけだして
どこかへ いってしまいました。
さあ、たいへん。とこちゃんは どこへ いったのでしょう?

『とこちゃんは どこ』より

元祖 探し絵絵本

何度繰り返し探したことか。
この赤い帽子、青いズボンの男の子を。

とこちゃん(『とこちゃんは どこ』より)

とこちゃんは、好奇心旺盛で元気いっぱいの男の子。
おかあさんやおとうさん、おばあちゃんがちょっと目を離したすきに
とことこどこかへ行ってしまうのです。

それは、市場だったり動物園だったりデパートだったり。
「どこへいったんだろう?」目印の赤い帽子を探してとこちゃんを探す楽しさ。

そして、心配するお母さんやお父さんと一緒になって
見つけた時のホッとした気持ち。
画面の中のいろんなものや、人の表情を見るのも楽しくて。
さらさらっと簡単に書いたような絵なのに、かこさとしさんの絵は
あたたかくて、ユーモアがあって楽しくて。

この絵本には探し絵ページの後に必ず答えがあるのもいい。
とこちゃんは見つけ出したお母さんやお父さんと
必ず手をつないで家に帰るのです。その安心感。

またおもしろいのは、探していたお父さんやお母さんが見つけた後に
疲れ果ててしまっていること。
「とこちゃんと出かけるのはこわいこわい」とおばあちゃん。
実際、そうでしょうね(笑)
大人が困った顔をしているのに元気いっぱいのとこちゃん。
子どももニヤッと共感したくなるところ。

昭和のあれこれが詰まってます

まず表紙・裏表紙から、昭和の遊びがいっぱい。
つなぎ鬼に手鳴らし鬼(?)、花いちもんめやロンドン橋おちた、など。
(詳しい遊びの名前は、かこさんの他のいろいろな絵本にあります)

買い物かごを持ってお買い物するお母さんたち。
スーパーのビニール袋なんてどこにもありません。

動物園に出かけるのに、カメラを斜めがけにしているお父さんの姿も
今はない風景?
 
デパートはなんと見開き2枚にわたって、お父さんやお母さんは
とこちゃんを探しまわります。
 1かい、2かい、3かい・・・
 4かい、5かい、6かい
 各売り場のぎっしり並んだ商品の絵は圧巻です。
 
 そして屋上にあるデパートのレストラン。
 今ではこんなレストランはなくなってしまっていますよね。
 ステンレスの銀色の器に盛られたアイスクリーム、おいしそう。

友達に何度も会う気持ちで

 引っ込み思案で、1人で本を読むのが好きだった子どものころ、
私は母が図書館で絵本を借りてきて読んでもらうのが大好きでした。

特に好きだったこの絵本、何度もとこちゃんを探し見つけた時には
友達に会えたような気持ちになっていたような気がします。

絵本は子どもの心の友達になれる。
そっと自分の横にいてくれるような絵本が
昭和にはたくさんあったように思います。

そんな、私の心を支えてくれた絵本を紹介していけたら、と思っています。


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