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あのミットに向かって2nd 50話(110話)「疾風」

西:俺の名前は疾風(しっぷう)と書いて「はやて」と読む

母からは親父が決めたと聞いた

親父は
何か1つでもいい
誇れるものを持てと…


俺は走るのが好きだった
だからこれ(走ること)を誇りにすることにした

親父は足が早くなることを予期してたんだろう
名前がはやてだしな

そして俺が成長してから
ある日親父から言われた


西父:足を誇りにしてるなら絶対に誰にも負けるな
お前は疾風だろ?
ひとつのことにがむしゃらに駆け抜けろ
それが誇りとしてやるべき事だ


西:ふぅ…

俺はこの名前気に入ってるぜ親父

ありがとな…

17年間、足だけは誰よりも磨いてきた


テレビの前
西父:みせてみろ
お前を…


浪川:ここは引っ掛けさせたい
最高は三振
直球より変化球を
そして低めに

涌井:コク

ンァ!

シューーーーーーー


ギュン!

西:…

パァン!

審:ットライク!


西:チラッ

大:(西野先輩…)

監:疾風なら


浪川:もう一度低めに…

涌井:コク

コイツは真っ直ぐ狙いのはず
足元には手が出ないだろ!

ンァ!

三塁コーチ:

GO!!!

タタタッー


浪川:!?

まさか…

西:俺ははなから勝負に出てんだよ

コン…

実況:セーフティスクイズ!?

ダダダーッ


涌井:嘘だろ…


実況:まさかの2アウトからスクイズ!
一塁線!!!涌井が捕りにくるーーーー

涌井:くそー

大:ザーッ

実況:どっちになるのかーーーー


〇〇:いけー

拓:いけー

美月:いけーーーー


西父:

疾風ーーーーーーーーーーーー


西:ザーッ


眉村:パシッ


審:

セーフ!セーフ!!


観客:うぁああああああ

西:しゃあ!!!!!!!


西父:うっし!

実況:雷道高校2点目!!!!
まさかの2アウトからのスクイズ!
誰が予想出来たでしょうか

解説:痺れましたね〜
これは一見無謀のように感じますが、西野君だからこそやれた
まさに素晴らしいプレーです


拓:✊


西:✊


浪川:全てが相手の思う壺
1点に対する気持ちが他のチームとは段違い過ぎる

涌井:なんだよ…


このあとの春一はレフトフライに終わりスリーアウト

実況:この回1点追加して
2ー0としました。雷道高校


〇〇:最高です!疾風先輩!

西:おう!

監:お前だから成功した

西:はい!

監:あの泥臭さこそ雷道だ
次も頼むぞ

西:はい!!



流れは完全に雷道高校となった

5回表にもう1点追加し3ー0
健吾も尻上がりに調子を上げ、5回終わって
73球、5安打、2四球、6奪三振、0失点
と健闘していた


そして6回、3番森下との3度目の対戦

ここまで2打数2安打と打たれていた

大:この人に負けてばかりじゃ
この人には勝てねぇ…


〇〇:いけるだろ…


大:集中しろっ…

スーッ


拓:コイツを抑えないと勝ったとは言えねぇぞ
今のお前の全力で来い
ねじ伏せてみろ!

パン!(グラブ叩く)

ここだ…

大:コク

ひとりひとりがやるべき事を
俺に与えられた6回までのピッチング
あとアウト1つ
この試合も到底納得できるピッチングはしてないけども
次の九条先輩に繋げるために
何がなんでもこの人だけは抑えて代わりたい

今この瞬間を全うしろ!

大谷健吾(オレ)


ンァシュ!

ゴゥーーーーーーーーーーーー


バチィーーーーーーーーン


森下:!?

拓:最高だぜ…


審:見逃し三振ーーーーーーー
スリーアウトーーーーー
最後は渾身の真っ直ぐーーーーーーー

156km/h


観客:やばっ

大:しゃあ!!


遥香:良かった…

さくら:健吾君だもん


〇〇:すげぇな…

やっぱ投手って凄い奴らしかいねぇな

〇〇:それでこそ健吾(おまえ)だよな


大:ふぅ…


〇〇:お疲れ!よくやった!
はい!これ飲め
次はレフトだろ


大:あ…そうだけど…

ありがとう…

まだ俺は諦めてないからな…
もう一度取り戻してみせる

〇〇:!?

雷道ナ:!?

〇〇:そうでなくちゃ面白くないからな
俺も譲らねぇ


大:ふっ


拓:(これだよな…
2人は入学してからずっとライバルで高め合ってきて
〇〇が怪我をした時は健吾がこのチームを引っ張り、健吾が調子を崩している時は〇〇がチームを引っ張る。
互いを認め伸ばし合う…最高のコンビだ)


監:大谷!よく投げた…
予定通り次の回からはレフトに入れ
次は九条を援護してやれ

大:はい!

〇〇:俺も投げたくなってきた

河村少年!
キャッチボール付き合ってくれ

河村:今日投げないんですよね

〇〇:黙っていられないんだ

河村:わかりました


佑美:監督

監:そのままにしておけ
投げたくなる気持ちもわからなくもないからな


大國東監:流石に強い
他に投手が2人
投手層が厚い
そして打線もここぞの時の集中力がある

これが去年の準優勝校

雷道高校


か…

森下:最後の球エグかった…

浪川:お前が手を出せないって中々だもんな

森下:久しぶりに鳥肌立ったわ

大谷健吾…

いい投手だな



そして7回から九条に交代

拓:いけるな

九条:うん
あのピッチングを見せられたら俺もやらなきゃって思うよね
森田も大谷も自分のやるべき事をやってのけた
次は先輩の俺がやる番だ

拓:その気持ちがあれば大丈夫だ

楽しんで行こうぜ

この瞬間を

九条:コク


〇〇:さぁ九条先輩!1つずつアウト取っていきましょう!バックの皆さんもよろしくお願いします!

小笠原:任せとけ

春:抜かせない…

高津:もっと援護を

大:(正直もっと投げたかった😔


九条:よっし





カーン!


橋:パシッ


審:アウト!

ゲームセット!


雷道ナ:しゃあ!

和:やった!

茉央:勝った!

実況:大國東、最後9回に2点を取り返しましたが
あと一歩届かず

5ー2

で雷道高校が勝利しました。2年連続ベスト8進出


審:礼!


両チーム:ありがとうございました!

観客:パチパチ👏


九条:粘りが凄かった

拓:それでもちゃんと抑えたから良かったよ

〇〇:それにしてもあの森下っていう人凄かったですね

拓:そうだな
結局最後も打たれたしな
今大会9打数8安打5打点
プロも注目するだろうな

全部抑えるつもりがこれかよ

〇〇:俺も対戦したかったな〜


拓:またどこかで会えるだろ

〇〇:そうっすね


拓:ありがとうございました!

全員:ありがとうございました!


観客:パチパチ👏

次も応援するからな!

〇〇:あ…

ジャッジ:キタネ

スクバー:楽しませてくれよ👋

〇〇:………


史:勝ったね!

梅:良かった〜

岩:〇〇君出なかった

史:出ないとは連絡来てたし
次の試合先発で投げるって

梅:観に行った日は嬉しいね

岩:うん!

史:楽しみ!

梅:試合は3日後だね
相手は…

史:東峰高校

岩:知ってるの?

史:〇〇の因縁の相手

梅:そうなの?

岩:知らなかった

史:その高校がってより2人のアメリカ人に対してだね

梅:そしたらアメリカにいた時に対戦してんだ

史:そうなの

岩:因縁ということは…

史:そう、〇〇は負けてるの

梅:そうなんだ

岩:でもそれって3ヶ月くらい前でしょ?

史:そうだね
でもあの2人は異常だった

あんなのが世界にはいるんだって思い知らされた日でもあったの

今回〇〇は絶対に本気で勝ちに行くと思う

多分だけど自分自身が負けた事のリベンジなんかじゃない

日本の野球を馬鹿にされた事へのリベンジだと思う

そのくらい〇〇はこの試合に賭けているはず

ちゃんと観ておかないと


岩:アメリカの話ってある程度は聞いたけどさ、細かいところは聞いてないよね
その2人のこととか

梅:そうだね
少し教えて

史:わかった

5月下旬

私と〇〇は大谷翔平選手の元で練習していたの


〇〇:今日ってどんな練習ですか?

翔平:そうだな
最近ボールも握らせてなかったし
ストレッチしてからキャッチボールでもするか
そのあと慣れてきたら実践練習
色んな球種を試せ

最後お前と同年代の奴を呼んでるから
そいつらと対戦しろ

〇〇:いいんですか!?

翔平:その代わりそいつらと対戦する時は変化球は禁止だ

〇〇:えっ!?

翔平:〇〇は変化球を覚えてから
それに頼りすぎている部分がある
俺に投げたチェンジアップ改も真っ直ぐに自信がないから投げているように感じた

〇〇:…

翔平:変化球も大事だが
1番伸ばすべきはその真っ直ぐだ
まだお前の真っ直ぐは成長する
だからだ

〇〇:やっぱり見抜かれてましたね
そうなんです
甲子園のあの日から思ったような真っ直ぐを投げれていません
球威にキレに全てが足りないんです

あの試合も結局は自信が無くて変化球頼りだった

わかりました

自分を見つめ直すためにもやります

翔平:史緒里ちゃん
実践練習の時ビデオ撮ってもらってもいい?

史:はい!わかりました
〇〇、頑張って

〇〇:ありがとな


そこから3時間ほど練習して実践練習となった


翔平:お、来たか…
ヘイ!アーロン!

アーロン:ショウヘイ!

🤝

翔平:今日はありがとうございます

アーロン:こちらこそ呼んでもらえて嬉しいよ


(作者:英語詳しくないので日本語をお許しください)

翔平:君たちが話してた子かな

アーロン:そうだ
もう1人、ちょうど連れきたんだけど良かったかな?

翔平:それは全然

アーロン:2人とも挨拶だ

ジャッジ:俺の名前はアルベルト・ジャッジだ
よろしく

スクーバー:僕の名前はヘルナンデス・スクバー
よろしく


〇〇:俺、英語喋れないので
俺の名前は森田〇〇です
よろしくお願いします

スクバー:君、日本人か?

〇〇:はい!ってか喋れるんだ。日本語上手っ!

スクバー:僕は日本とアメリカのハーフなんだ
国籍はこっちだけどね


〇〇:へぇ〜


アーロン:この2人は日本の学校に通わせてるんだ

〇〇:マジっすか?
どこの学校ですか?

スクバー:愛知県の東峰高校だ
俺たちは高校からそこに通ってるんだよ

〇〇:いつか対戦できたらいいですね


ジャッジ:お前野球上手いのか?

〇〇:上手いかと言われるとわかんないっすね

翔平:こいつは俺のお墨付きだ

スクバー:翔平の!?

これは興味が湧いた
やろうぜ

〇〇:いいけど

ジャッジ:ポジションは?

〇〇:ピッチャーっす

スクバー:へぇ〜俺と同じか

〇〇:スクバーもピッチャーなんすね


アーロン:2人ともまずはアップからだ
その後にやれ

ジャッジ:お父さんめんどくさいよ
やらせろよ

アーロン:ずっと言ってるだろ!?
怪我したら意味ないと

ジャッジ:わかったよ


翔平:〇〇も最後の調整をしとけ

〇〇:うっす!


翔平:まさか息子さんが日本で野球をやってるとは

アーロン:そうなんだよ
翔平の育った日本の野球を体感してもらうためにな

翔平:他の国の野球を知るのはいいですからね


そして勝負となった

勝負は1打席勝負だ
勝っても負けても1打席だけだ
それ以降は日本でやれ

いいな?

〇〇:うっす

ジャッジ:オーケー



結果は(103話を)


〇〇は完敗した


ジャッジ:こんなもんか…

やっぱり日本のレベルはこんなもんか

〇〇:………


翔平:現在地点を知れて良かったな
改善する良い機会にしよう


スクバー:次は日本でな
当たるかは知らないけど
まぁ楽しみにしとくよ

ジャッジ:当たってもボコボコだけどな


翔平:まぁ楽しみにしといてよ

コイツと次やる時は後悔させないから

スクバー:ショウヘイがそこまで気にかける奴じゃないよ


〇〇:悔しいです

翔平さんの顔に泥を塗ってしまいました

翔平:そうか?

〇〇:えっ

翔平:俺はこの結果わかってたし
〇〇は強くなるためにここに来たんだろ?
なら負けた後にどうするかを考えるべきだ
ただ球速を上げるだけで大丈夫なのか?

〇〇:🙂‍↔️

翔平:根本から変えるべきだよな

〇〇:コク

翔平:あと1ヶ月死ぬ気でやってみろ
史緒里ちゃんも手伝ってくれるから

ほらあの顔見てみろ

史:ウッ…

〇〇:!?

翔平:お前と同じく悔しいんだ
それだけ〇〇を想っている
愛する人にあの顔は2度とさせるなよ

〇〇:わかりました


史緒里!ごめん!🙏負けちった!
同じ相手に2度は負けないから
手伝って欲しい

史:うん…
手伝う!

翔平:いけそうだな


史:これがアメリカでの詳しいお話

梅:そうだったんだ
それからはどうだったの?

史:忙しかったよ
私も野球の知識を深めながら〇〇の練習に付き合う。〇〇は〇〇でやることが多かったからね

岩:でもそれがようやく発揮される時が来たんだね

史:うん
楽しみ、楽しみなんだけど…

梅:不安もあると

史:うん
不安の方が大きいよ
絶対無茶すると思うから

岩:それなら史緒里が止めるしかないよ
史緒里しか止められないから

梅:絶対に止めなよ

史:うん!2人ともありがとう!!


そして勝った雷道高校は3日後の東峰戦に向けてミーティングが行われていた

監:今日の試合お疲れだった
今日の試合、それぞれが自分の仕事をしてくれた
その結果が勝ちに繋がったと思う
あと3試合、身体も疲れてくると思うがそれぞれの試合で最高の試合をして欲しい

雷道ナ:はい!

監:次の相手は東峰高校だ
注意しないといけないのはわかっているとは思うが4番のジャッジとピッチャーのスクバーだ

〇〇:……

監:このピッチャーから点を取らないと勝てない

拓:………

監:左のサイドスロー気味に投げてくる

アメリカ人特有の腕の長さだからいつもよりタイミングが取り辛いと思うがそこは打席で慣れていくしかない

雷道ナ:はい!

監:遠藤!

さくら:はい!

監:偵察で気づいたことを頼む

さくら:はい!かっきーもいこっ

かっきー:うん

さくら:えっと…
まずは打線から東峰というチームはジャッジさんが中心であることに変わりはありません。しかしその前を打つ3人も要注意です
明らかに1人は塁に出そうというのが見受けられました
それだけジャッジさんを信頼してると言ってもいいですね

〇〇:……

遥香:それに加えてジャッジ君は敢えて前半は真っ直ぐより変化球を狙っているようでした
そして後半は真っ直ぐに狙いを絞る
ここ2試合はそれですね

拓:要は使い所

さくら:そしてピッチャーのスクバーさんは外から体に目掛けて投げるような大きい変化球
多分ですがスライダーです
左バッターからはかなり遠く感じるかと思います

監:うちのバッターはほとんどが左バッター
右は町田、大谷、小笠原、あとは柳とかか

春:僕たちがキーマン

大:いいね

小笠原:打ってやりますよ!

さくら:あっ、待ってください
観てて気づいたことがあるんです

2人で気づいたんですけど
少しだけ腕の角度が違うかも知れません

雷道ナ:!?

麻:それは本当なの!?

遥香:確証はないですが
真っ直ぐの時は真横の位置から投げていて
変化球の時はほんの少し高い位置から投げているように感じました

〇〇:流石だね

拓:いや、それだけでも狙える確率が上がる

西:サンキューだぜ

さくら:1打席目はよく見てもいいのかも知れないとは思いました。
特に西野先輩と春一君はどれだけみんなに情報を見せてあげられるかですね

春:うん、そうだね
狙いながら悟られないように見極める

西:俺たちの仕事だな

遥香:甘い球はそんなにありません
もしかしたら性格上ど真ん中に投げてくることもあると思います
その挑発に乗らず自分のバッティングをしてください

雷道ナ:はい!

さくら:私たちからは以上です

監:ありがとう
よく調べ上げてくれた
マネージャーがこれだけしてくれたんだ
次はお前達がそれを実行する番だ
厳しい戦いにはなるが勝ちに行く

雷道ナ:はい!

監:御幸!選手達でもよく話しておけ

拓:はい!

監:そして先発だが森田で行く

〇〇:はい!

監:みんなでサポートしてくれ

雷道ナ:はい!


監:そしたらあと2日間やれることをやろう
今日は以上だ

拓:ありがとうございました!

全員:ありがとうございました!


さくらと遥香が見つけた小さな攻略法
それを大きな穴にできるのか?
この夏1番熱い戦いが始まろうとしていた…


To be continued…

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