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あのミットに向かって2nd 53話(113話)「予感」

実況:ジャッジ選手を見逃し三振に打ち取りました
しかし、まだ2アウト。1・3塁は変わりません
そして次のバッターはピッチャーのスクバー君です

スクバー:君、いいリードするね?

拓:ありがとう

スクバー:俺もお前と組みたいな

拓:その時が来ればですかね

スクバー:俺のチームのキャッチャーは使えねぇんだよ
代わって欲しいくらいだ

拓:……

スクバー:○○が以前と違うのはお前のリードだからだろ
アイツ本人の力はレベル低いからな
感謝されてるだろ

拓:すみません
先程の言葉取り消します

スクバー:!?

拓:自分のチームを侮辱するようなそんな恩知らずの人とは一緒に野球なんてしたくないですから
それに俺のリードだけで勝てた試合なんか一試合もありません。
もちろんピッチャーだけで勝てる試合もないですけど
あなたは一人で野球してるんですね
そんな人が

野球を語んじゃねぇよ


スクバー:!?

拓:あんたは本当の野球を知らない

スクバー:💢

お前らどうなっても知んねぇからな

拓:俺たちはお前らに最初から興味なんてねぇから

スクバー:クソが…


○○:ンァ

(チェンジアップ)

スパン

審:ットライクーーー

監:自分自身の力に自惚れてるやつ程弱いやつはいない
自分の限界はここじゃないんだと
まだ登れる
小さな足がかりが大きな一歩となる
さらなる高みを目指すやつこそが強者なんだ

人間、歩みを止めたらそこで成長は止まってしまう
その一歩を奇跡と取るのか、はたまた自分で掴んだものなのかで大きく異なる
その一歩は多くの困難の先に己で見つけたもの
それを奇跡と呼んでは勿体無い

お前らの限界はまだ先にあるはずだ

その足掛かりを見逃すなよ



スパァーーーーーーーン


実況:空振り三振ーーーー
スリーアウトーーーーー

○○:しゃあ!!!!!!!!

観客:やべぇ…

本当に高校2年かよ


アメリカ
アーロン:2人に野球というものがどういうものなのか知ってもらいたかったがダメだったか…

翔平:いや、この試合で気づくと思いますよ
あの子たちは野球が好きなはずですから
そうでないとここまでやっていないですから


実況:1回の表ピンチを迎えましたが後続2人の強打者を三振に打ち取り無失点で切り抜けました

○○:ふぅ

拓:安心した

○○:すみませんでした

拓:御礼は健吾に言えよ
アイツの送球がなければ先制点を取られていたんだからな

○○:うっす


○○:健吾、ありがとう

大:俺は○○が温いピッチングしててムカついていたから
それに点はやりたくなかったし

○○:効いたよ

大:次やったらぶっ飛ばすからな

○○:おう


梅:何とか抑えたね

岩:うん

史:……


裏の攻撃

ビュン!

スパン!!!

審:ットライクバッターアウト

春:どうでした?

西:結構鋭いけど言ってた通りで間違いなさそうだ

春:そうですか
自分も確かめます

西:頼む


監:打てそうか?

西:スライダーに手を出さなければ問題ないかと…

監:肩を温め終わる前に得点しておきたいな

拓:真っすぐは?

西:インコースは俺たちを目掛けて投げてきてはいるな

拓:俺のせいかな?

小笠原:何したんだよ

拓:ちょっとな…

監:御幸もまだだな

拓:そうですね

監:次は言葉ではなくプレーで伝えてやれ

拓:はい!



スパァーーーン

審:ストライク!

春:これがストレート…

スクバー:立ってるだけかよ

阿部:1・2番どちらのバッターも振っていない
明らかに様子を見てる
振らないなら無駄球を減らしてカウント稼がせてもらおう

スクバー:俺は最初からそれをやってんだよ

ンァ!

阿部:!?

パァン!

審:ボール

実況:大きく外れたーーー

春:今の…

〇〇:キャッチャーと合っていない

大:構えと真逆のところに

小野:キャッチャーはやり辛いだろうな

阿部:最初からしてくんのかよ
相手振ってこないんなら従っていいだろ

スクバー:俺の方が上なのに向こうに合わせてんのが気にくわねぇんだよ

阿部:はぁ…

でも、俺は

キャッチャーだ


拓:そうだよな

阿部:俺はお前がここに投げるまで譲らねぇ

スクバー:調子乗りやがって


スクバーは幼少期のころから天才ピッチャーと言われてきた


スパァン!

審:ットライクバッターアウト

スクバー:シャッ!

スクバー母:ナイスよ~スクバー

スクバー:😊

スクバー:俺はお母さんを喜ばせるために頑張っている
俺は最強でなくちゃいけない

しかし…

野球コーチ:スクバー、たった今、お母さんが倒れたそうだ

スクーバー:えっ…


スクーバー:お母さん!!!

スクーバー母:ごめんね
少し頑張りすぎたかもしれないわ
でも心配しないで
少ししたら復帰できるから
スクーバーは気にせずに野球をしなさい
元気に野球をしてくれることが嬉しいから

スクバー:僕、がんばるよ
お母さんにまた観てもらえるようにそれまで練習する
お母さんが観てくれるまで僕負けないから

スクバー母:約束ね

スクバーはそれから今まで以上に練習するようになった
しかし、それとともに一人になってしまった

僕は友達なんかいらない
お母さんさえいればそれでいいんだ

スクバーはお母さんが戻ってくるのを信じてずっと練習していたが、お母さんは実は難病に侵されていた

スクバーはそれを大きくなって父から伝えられた

スクバー父:スクバー、ママからの手紙だ
見てくれ、大事なことが書かれている

スクバー:うん

スクバー母:スクバーへ
お母さんはスクバーに嘘をついていました
ごめんなさい
本当はもっと早く治るつもりだったんだけど病気が全然治ってくれなくてね
野球を観に行きたいんだけど行けそうにないわ
パパからはスクバーが毎日野球を頑張っているのをいつも聞いているわ
昔の約束、覚えてる?
お母さんは覚えているわよ
お母さんも約束果たせるように病気に打ち勝ってくるからスクバーもがんばってね
スクバー、高校生になったら日本で野球をしなさい
私の母国、日本
日本の野球も面白いはずよ
スクバーの知らない野球を体感できる
それは必ずスクバーを一回りも二回りも大きくしてくれるわ
日本の野球はアメリカとは違う
そこでより野球を深めなさい
ちゃんとパパからはOK貰ってるから

一人だと寂しいと思うからジャッジ君にも頼んだわ
アメリカで通用しても日本で通用するとは限らない
野球をしてさえいれば必ず自分の前に強い人が現れる
その人があなたを変えてくれる
甲子園でスクバーが活躍するのを期待してるわ


スクバー:お母さんがなぜ日本で野球しろというのか未だにわからない。約3年、やってきたけどどこが俺を成長させてくれているのかもわからない
逆に退化した気さえする
日本人は野球が下手だ

誰が俺の前に立ちはだかるんだよ

教えてくれ!お母さん


ガーーーーーー

スクバー母:パパ、スクバーは気づいてくれたかな?

スクバー父:どうかな?
あいつはいつも一人で野球をやっていたからな
今もそうだと思うが…
仲間の大切さに気付けないのもわかる気がする

スクバー母:アメリカは個々が良ければそれで良かったかもしれない。だけど日本はチームスポーツに重視している。今まで一人でやってきたスクバーに仲間がどれだけ大事なのかわかって欲しかったかったから日本に行かせたの

スクバー、あなたが突き放そうとしてもついてくるでしょ?
それはあなたが野球が好きだから
それはみんなわかってる
そうじゃなきゃここまで一緒に野球をしないわ
そろそろ気づきなさい
答えはあなたの目の前にある


阿部:スクバー、ジャッジ、俺たちはお前たちのことが大嫌いだ
だけど誰よりも野球に対する思いが強いのは知ってる
ずっと見てきたから
誰よりも残って練習する姿を…

だからこそ
俺たちはお前らと野球がしたい

もう遅いかもしれない…
いや遅くない

だからこそここは譲れないんだ


スクバー!!!!

この試合だけでもいい、俺のリードに頼ってみてくれないか?

スクバー:チラッ

ジャッジ:やれよ…

スクバー:はぁ…
負けたら許さねぇからな

ンァ!

スパァン!!!

審:ットライク

春:インコース…

拓:いいリード…

○○:御幸先輩が言うなんて珍しいっすね

拓:そうか?

○○:初めて聞きましたよ

拓:キャッチャーはピッチャーの使い物ではないし、逆に支配者でもない。
どちらとも対等でなくてはいけないんだ

○○:…

拓:そのバランスが崩れるとチームがダメになる
それにキャッチャーはチームの要とか言われるだろ?

○○:そうっすね

拓:野球は投げないと始まらないし、それを取る人がいないと成り立たない
キャッチャーはチームの中で一番野球に詳しくないといけないんだ
だってキャッチャーは唯一投手、野手全員に向いてプレーしているから

○○:言われてみれば…

拓:だから誰よりもみんなの事を見ている
その選手の状態や試合の状況、相手選手の特徴など

どんな天才ピッチャーでもキャッチャーがいないと意味がない。天才ピッチャーという言葉はキャッチャーも含まれて言われていると俺は思う

”一心同体”

俺が目指すバッテリー像だ

だからお前も目指してほしい

○○:わかりました


拓:この試合、1点勝負になるな


カーン!

ジャッジ:パシッ

審:アウト

実況:最後はサードフライとなりスリーアウト
スクバーは3人で打ち取りました

スクバー母:最後のはよかったわねコホコホ

スクバー父:そうだな
ママ、あまり無理はするなよ

スクバー母:この試合くらいは無理させて
だって久しぶりの試合観戦だもん

スクバー父:楽しみにしてたもんな

スクバー母:うん
あと相手のピッチャーの子、あの子凄いわね

スクバー父:スクバーが前言ってた子かもな
大谷翔平に認められた高校生っていうのは

スクバー母:それはすごいわね
もしかしたらあの子が息子を救ってくれるラストピースになるのかも
この試合観に来れてホントよかったわ


阿部:ナイスピッチ!

スクバー:言われなくてもいつもしてるわ

阿部:そうだったな

さぁ相手投手打ち崩すぞ

東峰ナ:しゃぁ!!!

スクバー:クソ…なんだこの感じ…気持ち悪い…

ジャッジ:……


2・3回は両チームとも三者凡退となった

そして4回

ウ:3番、センター、古川君

拓:前の打席しっかり運ばれてる
ここはじっくり攻めよう

○○:コク

古川:全員が振り遅れている
あのジャッジにスクバーが三振はおかしい
前の打席のは無かったことにした方がいいな

拓:スリーシームをアウトコースへ

○○:ンァ!

シューーーーーーーーーー

ギュン↖

スカっ

審:ットライク

古川:ストレートだよな?
手元でいきなり伸びてきた


美馬:あれは初見ではまず無理
あのボールは見逃してもゾーンに入っているからストライクになる
あのボールがあるからストレートが生きるんだよな

ジャッジ:ぶっ飛ばす…

○○:そんな睨みつけなくてもいいって

拓:その打者が打てないと思わせるようなボールを

○○:俺に残された回数はあと一回
やれることをやり切れ

自分で決めたんだろ?

史緒里には謝りたいけど直接謝ることはできそうにないな
ごめんな…

その分プレーで…


俺の覚悟を見届けてくれ


ふっ


俺の身体、最後までもってくれよ…


○○はわかっているようでなにもわかっていない…
誰もその結末を望んでなどいないのに…
その時まで刻一刻と迫る…


史:はぁはぁ



カーン!

○○:春いっち!

春:パシッ、シュッ

小笠原:パシッ

審:アウト

○○:1アウト!!!

実況:初回に塁を出して以降、誰も出していません
そしてこの対決
誰もが注目しているであろう
ジャッジ選手との2度目の対戦
初回は三振でした
次はどちらに軍配が上がるのでしょうか

拓:甘いところは運ばれる
あのストレート、ファールにはなったけど軽く運んでたしな
そしてチェンジアップ改
これは向こうも頭にあるはず
どう使うか…


一也:ここっすね

翔平:なにが?

一也:ここの結果次第で勝つか負けるかが決まりますね

翔平:ほぉ

一也:拓也はどうリードするか

翔平:お前ならどうリードすんだ?

一也:俺なら…



ジャッジ:!?

グワン…


スクバー:チェンジアップ

ガッ

審:ファール

監:当ててきたか

拓:アジャストが早いな…

ジャッジ:もっと溜めないとな
ふーっ
でも次は打てる


○○:ンァ


グワン…

観客:もう一球!?


ジャッジ:ん!!!!


ガキン!

小笠原:!?

ザーッ


審:ファール!!!!!

観客:うお~あぶね~

麻:さっきよりも低め

ジャッジ:チっ
早く打ち過ぎた


スクバー:ジャッジ、お前…

美馬・成宮:

やりやがった…



ルイ:どういうことだ秀?

成宮:もうこのバッター終わったよ

神城ナ:!?

優磨:あの助っ人は当ててるだろ?
なら次は…

成宮:拓也はそれを狙ってたんだ
今のチェンジアップをとらえられてたら雷道は負けてた
でもファールになった

この時点で拓也は3球目、どの選択肢でもアウトを取れることが証明されたんだ
こいつらのチェンジアップは2種類
曲がりのないチェンジアップはこいつは見てないからな
それにストレートを選択しても今バッターのタイミングは溜めること。ということは?

優磨:振り遅れる

成宮:そうだね
それに1打席目、ストレートとチェンジアップしか見ていない相手に他の変化球は頭にない

だから2球目までが勝負だった


ルイ:そこまで拓也は考えているのか?

成宮:アイツはそういうやつだろ?


一也:なんか拓也、俺に似てきましたかね?

翔平:そうかもな
嫌らしいリード
ちゃんと血を受け継いでんだな

一也:褒めてくださってありがとうございます

翔平:ほめてねぇし


スクバー:あのキャッチャー…いや、それに応えた○○もか…

○○:どんな選択肢であろうと俺はあの人のミットに投げ込むだけ

ザーッ(脚を高く上げる)

ギュッ(右手の壁)

ダン(右足をホームに踏み込む)

グググッ(溜めた力を)


指先へ



俺がこの高校に入って一番最初に覚えた変化球

原点回帰


拓:綺麗なスピンの効いた


2人:フォーシーム



シューーーーーーーーーーーーー

ジャッジ:来た!真っすぐ…


ジュッ…


スパァーーーーーーーーーン


ジャッジ:………

審:ットラックアウト!!!!

○○:しゃあ!!!!!!!!

観客:うぉおおおおおおお

雷道ナ:しゃぁああああああ


ジャッジ:くそっ…


○○:お前は俺を怒らせた…
俺が

No.1だ


実況:2打席目も三振
2球チェンジアップ続けてからの最後ど真ん中

相手チームというか正に全国のチームに魅せ付けるようなピッチング

ジャッジ:fuck

スクバー:お前の負けだジャッジ…

ジャッジ:!?

スクバー:もうお前は打てないよ…

ジャッジ:俺が負ける…


ガァン!!!!

ジャッジ:fuck!!

東峰の他の選手もまさかジャッジが負けるとは誰も予想していなかった
この結果はかなりのダメージとなっていた

○○:スクバー、お前…いつまで自惚れてんだよ
俺と本気で投げ合おうぜ
生きるか死ぬかの本気の勝負を

スクバー:いいだろう
その代わり逃げんなよ…


○○:それはこっちのセリフだよ…


ここからは投手二人の投げ合いが繰り広げられた

スクバーは6回まで打者20人に対して2安打0四球6奪三振0失点
○○は7回まで打者23人に対して2安打0四球11奪三振0失点

そして7回裏の雷道の攻撃

ウ:3番、ライト、橋本君

橋:ここまでの2打席悪くはない
ボールも見えてるし、ついていけてる
あとは結果のみ

それにしても○○がヤバすぎる

初回以降誰も出していないし、何といっても三振の数
11個
正直ノーノーの時よりも凄いと思う

1点でいい

アイツに少しでも楽に…


静哉が思っていることは全員が思っていた
そして○○は限界が近づいていた

○○:やべぇな…
思ったよりも体力の消耗が激しいし、それに手も震え始めた
あと6人
ここまで来たからには最後まで投げ切って終わりたい

○○は深い深呼吸をする

佑美:大丈夫?

○○:あ、大丈夫ですよ

佑美:すごい汗だけど…

○○:これだけ飛ばせばそうなりますよね
あと2回投げ切れば休めますから

佑美:無理したらダメだからね

○○:うっす

ズキン!!!

○○:!?
ウッ…
やべぇな…

ここで倒れたら自分を一生恨むからな

これはこの人にも

ズキン!!!

史:ウッ…

梅:どうしたの?

史:大丈夫大丈夫
思いつめすぎてなっちゃっただけだから

岩:座って応援したら?

史:本当に大丈夫だから
(これは嫌な予感がする)

スクバー:ンァ!

ビュン!!

橋:!?

バシッ

審:ボール

橋:ふぅ…危なかった…
もう少し遅れて曲がっていたら振るところだった
スクバーも疲れているんだ

スクバー:くそっ
いつもより疲労がすごい
俺こんなに体力なかったか?
このくらいで…

阿部:相手はスライダーを見極め始めている
ここはストレートで押していこう

スクバー:ふっ

ンァ!

シューーーーーーーー


橋:ここから…

!?

ボゴッ

橋:ウッ

審:デッドボールーーーーー

実況:あ~~~ここでデッドボール
今日初めての四死球ですね
これは疲労からでしょうか

解説:そうでしょうね
いつもよりもハイペースだとは思いましたから

阿部:次々!!

スクバー:パシッ


ウ:4番、キャッチャー、御幸君

阿部:来たか…
塁に出してからのこいつは危ないんだよな
前までの2打席は打ち取れてはいるけどいい当たりは飛ばされているからな

スクバー:こいつ嫌だわ

拓:俺の苦手なタイプ


2人とも同じ気持ち

拓:さくら達が教えてくれた攻略法、腕の高さ
静哉の打席を見て気づいたことがある

疲労からか以前よりもわかりやすくなったこと

そこが狙い目

美月:拓也、お願い…


拓:ふぅ~

スクバー:コイツには徹底してインコース
ンァ!

拓:少し低い
ストレート!!

!?

バシッ

実況:顔の近く

拓:あっぶねぇ

阿部:落ち着け

スクバー:…

拓:親父から聞いたことがある
向こうの人たちは相手の弱点を徹底的に攻めてくる
潰すまで

俺はインコース嫌いではないけど1塁にいるときにインコースは苦手だ
引っ張りすぎてゲッツーになったりよくやらかすから

でもここはゴロよりもライナーで内野の頭を越したい

そうなると叩きつけるよりもしっかりアジャストさせること

スライダー、シュート、スクリュー、フォーク

この中から変化球を絞り込む

でもこいつはストレートの三振を好んでいるようにも感じる

どうであれ後ろに回せばいい


さぁ最高の勝負をしようぜ


スクバー:俺はお母さんが観てくれるまで負けちゃならない

??:私はそんな行き詰った約束してないわよ?

スクバー:えっ…

スクバーはふとそんな声が聞こえ、上の方を見ると
車いすに乗って試合を観ているお母さんがいた

スクバー:お母さん…

スクバー母:気づいたわね

スクバー父:そうだな

スクバー:観に来てくれたんだ…

スクバー母:スクバー?私との約束は忘れたのかしら?

スクバー、あなたが勝っても負けても楽しかったと思えるようなそんな試合を私にみせて欲しいの
そのうえで私が観に来るまで負けないでねと…
ただの自己満足の試合を私は観たいとは思わないわ
あなたは野球が好きなんでしょ?
それなら誰よりも楽しみなさい

とね?

スクバー:俺はずっと間違えていたのか…
ただ勝つことが正義だと考えて勝てばお母さんが喜んでくれる
そのために野球をやってきたけど…

阿部:すみません!タイムを

審:タイム

実況:どうしたのでしょうか?
1ボール1ストライクの場面でタイムを取りました

阿部:どうしたんだ?
サインも見ずにただずっと立って

スクバー:俺はバカだったって思ってな

ジャッジ:どうした?

スクバー:ジャッジ…今楽しいか?

ジャッジ:どうかな?

スクバー:強がっても無駄だぜ
楽しいだろ?

ジャッジ:そうだな
今までの試合で一番楽しいのは確かだ

阿部:お前らいきなりどうしたんだよ
らしくない言葉言いやがって

スクバー:俺たちはただお前らに嫉妬していたのかもしれない

稲本:なんだよ

スクバー:ずっとお前らの事バカだと思っていた
上手くもないのになんでそんなに楽しそうに野球をやれるのか

阿部:ディスってんじゃん

スクバー:でもその野球に対する情熱がここまであるから俺たちに何言われようがやってきたんだな

俺はいつしかその情熱を忘れていた

どれだけやめろと言われても練習する
負けたら悔しい
勝ったら嬉しい

今この瞬間も相手との本気の勝負
0-0
1点取られたら負け

悔しいけどあいつらは強い

俺やジャッジより強い

ジャッジ:俺はそんなこと思ってないぞ

スクバー:ふふっ

もうっここまで来ちまったけど言わせてくれ


今までごめん



東峰ナ:!?

阿部:ははっ

2人:!?

阿部:なんだよ気持ち悪いな
今はまだ試合中だろ
終わってからいくらでも言ってくれ
というか言え
土下座してほしいけどな

でも今は相手との本気の勝負
この先どんな結果が来ようとも楽しかったで終えようぜ

あとこっちの攻撃は2回ある
絶対に打つ

延長に行こうが俺たちは負けない
メンタルは嫌程お前ら2人に鍛えられたからな

絶対勝つぞ


勝って優勝いただきに行こうや


東峰ナ:しゃぁああああああ

実況:何か気合が入ったようですね

阿部:待たせしてごめん

拓:大丈夫だよ
それにここからがお前らとの本当の勝負だな

阿部:そうだな

拓:よろしく

阿部:こちらこそ

実況:さぁ再開です
1ボール1ストライク


スクバー:ンァ!

シューーーーーーーーー

拓:低い!

真っすぐ…

ギュン

拓:!?

スパァン

雷道ナ:!?

さくら:変化球!?

麻:ここにきて戻ってきたのね

拓:マジか…(これはやべぇな)


スクバー:絶対に抑える

○○:ここからか…


拓:情報をなしにしてやるしかないか
このチャンスはもう来ないかもしれない
俺は何としてでも打つ

ンァ!

ギュン

ガッ

審:ファール

拓:ふぅ~
集中しろ…


去年の卒業試合
結城:御幸、完全に相手ペースの時、お前ならどうする?

拓:打って変えるしかないですね

結城:そうだな
でもそれで打てると思うか?

拓:いや打てないです

結城:ならどうする?

拓:難しいですね

結城:俺は永遠の課題だと思っている

でもその状況になったら自然と適応するんじゃないかなとは思ってる

拓:それは哲人さんだからでしょ?
俺には無理ですよ

結城:そうかな…
俺はお前のことをかっている
正直俺よりもいい打者だと思ってる

拓:そうですかね?

結城:その状況が来たら今までの経験すべて使って立ち向かえ
お前はキャッチャーだろ?
お前なら相手の思考を読めるんじゃないのか?


拓:急に出てきた…

今完全に向こうに流れがある
ピッチャーもまた一段階ギアを上げてきた

今までの経験をすべて使って…



スーッ…




この打席に没頭しろ


スクバー:これで三振だぜ…

ジュッ


拓:…


九条:ん!!!

菅野:ブッシュ!

涌井:ン!!!

天宮:んら!

大:ん!!!!

正宗:んぁらっ!!!!

成宮:ンァ!!!



○○:ンァら!!!


結城:経験がお前を強くする…


ギュン

スクバー:とった…
阿部:最高の落…

スーッ


阿部:!?

ガギィン!!!!!!!!!


スクバー:!?


〇〇:えっ…

実況:高々と上がった打球は~~~~~




ダンッ…




実況:入ったーーーーーーーーーーー

4番キャプテン御幸の先制2ランホームランーーーー

キャプテンが風穴を開ける特大のホームラン

観客:うぁあああああああああああああああ


成宮:気持ち悪いくらい打つな…


拓:遠くからでも聞こえてるぜ


実況:ホームイン!!!!
2-0

小笠原:しゃらああああああ

橋:流石だな…

拓:あんまり覚えてないけどな

佑美:よく打った

拓:哲さんのおかげっすね

監:そうか…

結城:打ち過ぎだ…


スクバー:なんか清々しいわ
久しぶりにぶん殴られた気分

これか…

スクバー母:なんか打たれてるのに嬉しそう

スクバー父:偶には打たれていいんだよ

スクバー母:そうだわね


その後スクバーは打たれたのか分からないほど後続を簡単に三振に打ち取りチェンジ

ジャッジ:何打たれてんだよ(笑)

スクバー:ごめんごめん!
すげぇ、悔しいわ

東峰監:まだまだこれからだ
あと二回で追いつけばいい

東峰ナ:はい


○○:御幸先輩、俺の時よく打ってくれますよね

拓:打たない方がよかったか?

○○:いやいや感謝してます

拓:俺が打てるのはお前ら投手が頑張ってるからだろ

○○:うれしいっすね
あと2回、何があっても守り抜きます

拓:頼むぞ

○○:うっす


8回、何としてでも点数を取りたい東峰は
6番阿部からの攻撃

流石の○○も疲労で制球に苦しみ
この試合初めてのフォアボール

○○:力入りすぎた

春:打たせていこう

○○:コク

続く7番川島には真カットボールで三振

8番馬場にはスプリームでゴロを打たせるがゲッツーは取れず

そして2アウトランナー1塁で

9番横島を迎える

○○:汗が止まんねぇな
それにアウト取りづらくなってきた

少しボールも浮き始めた…

史:しんどそう…代わりたいけど
(○○:お前になにができんだよ!!)
私は女だから代われないし、同じチームメイトでもない


さくら:止めたい

遥香:それは私も同じ気持ち


○○:はぁ…はぁ…


辛い時こそ笑顔でいろ
後悔はあとで死ぬほどでき…
あぁ…そうか…それもできな…

拓:ドン!!!

○○:!?

拓:俺がいる
俺のミットに投げてこい

○○:ふっ

横島:繋ぐ

○○:んぁらっ

シューーーーーーーー


グイ


ガッ

横島:詰まった…

実況:あーピッチャー正面

○○:パシッ、シュッ


小笠原:パシッ

審:アウト

実況:スリーアウトーーーー
8回も得点奪えず

横島:クッソ…


拓:何とか抑えれたな

○○:流石にきついっすね

監:交代するか?

大:代わりますよ
いや、代わります

○○:俺なんも言ってないし
健吾ふざけんな!
ボス!!最後まで行かせてください

監:本当に大丈夫か?

○○:はい、行かせてください
最終回

監:わかった
エースであるお前が締めてこい

○○:はい

監:大谷、いつでも行けるな

大:俺は投げたくて仕方ないんですから

監:もし延長に行けば大谷に交代だ

○○:そんなことにはなりませんから

監:俺もそうであってほしい


スクバー:次の攻撃に繋げるためにここは3人で抑える


さくら:かっきー、もしかしてあの話嘘ってことあったりするかなぁ

遥香:それなら逆に嬉しいよ
でも嘘じゃない気がする
8回のピッチングもキツそうだったし

さくら:そうだよね…
でも、なんでそこまでしたいのかずっと考えてたの…

遥香:それで?

さくら:私も勝手な思い込みかもしれないけど問題はもう一人の○○君じゃないような気がするの

遥香:どういうこと?

さくら:それは…

カキーン


遥香:えっ…

パシッ

実況:センターの古川が捕ってスリーアウト
スクバー、8回を一人で投げ抜きました

スクバー:YES!!

○○:マジで打てねぇ

ムカつくぜ


監:さぁ最終回だ
最後まで気を抜くなよ
相手は全力で来るだろう
それでもお前たちはいつも通りプレーしろ
変わったことはしなくていい
ドンと構えておけ

雷道らしく
ゲームセットを聴くまでが野球だ
全員でこの2点守り抜いてこい!!!!!!


雷道ナ:しゃぁあああああああ

拓:行くぞーーーーー

雷道ナ:らあ!!!!


ウ:9回の表、東峰高校の攻撃は
1番、ファースト、稲本君

稲本:しゃっす

○○:もう最初から決めてた
最後の1回使うよ…

これが尽きたら皆さらばだ


○○2!!!!!!


○○2:いいんだな

○○:おう…

勝てればそれでいい

○○2:わかった…


行こう…雷道を送り届けるために

スーッ

○○:よっし


史:今…もう一人の○○がいたような…

しかし、もう遅い

○○は最後の決断をしたのだ


これが森田○○

人生最後のピッチングとなる


ッー😢


○○:ンァ!!!


スパァン

審:ットライクーーーーー

151km/h


○○は最後の力を使った

○○と○○2には初めて会ったあの時、誰も知らない1つの制約が結ばれていた

○○2:「この力は5回しか使えない」

使う度に身体はダメージを受ける
これを守れなかったり、使い切ると本人は…

○○:わかった。1つだけだな。約束する。

○○2:最後まで聞けよな。
まぁ使い切らないことを願っているよ…

○○は今まで使ったのは
復帰してからの最初の紅白戦、健吾や拓也との勝負これが最初

そして2回目は西東京大会、決勝神城実業戦

3回目は凪高校戦の美馬との勝負

そして、4回目はこの試合の初回のジャッジとの勝負

今、5回目を使ったということだ

○○は甲子園に入ってから使い切ることを決めてた
最初は飛鳥に使うつもりだったがジャッジとスクバーが現れたことで早まった
でも後悔などしていない

そしてこのことは史緒里には言わないことも最初から決めていた

なぜならこの制約は史緒里への禊だから



この力は決して最強ではない
使えば使うほど退化していく
それに5回目使用時には4回分のダメージを受けている
それに加え、○○の身体はすでにボロボロの状態だから
身体も勿論だが、一番はメンタルだった

エースとしての重圧
周りからの期待
野球に対する想い

そして一番は…

史緒里への想い


全てを抱えた一人の高校生には限界だった…


実況:よく見ました。フォアボール

そして遂にその時が来る

○○:はぁ…はぁ…


実況:1アウト、1・2塁でこの男に回ってきました

ウ:4番、サード、ジャッジ君

ジャッジ:最後まで楽しませてくれよ
俺がここまでやられてただで帰すわけないだろ

○○:最後の試練か…

5回目となると制御も難しい
身体も言うこと聞いてくれなくなってきた


でも譲れるわけねぇ

最後に相応しい

御幸先輩と最後のバッテリーだから最高のボールを届けたい

あのミットに向かって…


ンァ!

ビューーーーーーーーーー

ジャッジ:んん!!!!

ガギン!!!


ガシャン

審:ファール

実況:初球は147㎞/hのストレート

○○:ん!

シューーーーーーーーーーーーーー


ギュン

ジャッジ:ピクッ

スパァン

審:ボール

実況:インコース厳しいところよく見ました

ジャッジ:イメージイメージ

拓:よく見てる
流石に4打席目ともなるとわかってくるよな
でもまだまだいける
引き出しはある

○○:コク

スクバー:狙え…

ジャッジ:頭がさえてる…
どんな球が来ようとも…

ンァ!
ジュッ


ジャッジ:ここからなら…

こうだろ!!!!


ガッ



拓・○○:!?


実況:えっ

この当たりは…もしかして…

橋:うそだろ…


実況:ポール際だーーー
逆転のホームランかーーーー
ライト橋本追うーーー

どっちだーーーーー

東峰ナ:いけーーーーーーーー

ダン


○○:………






審:

ファーーーール



観客:うぉーーーーーー

おっしいーーーー

ボール1個分か~~~

ジャッジ:what!?

ジャッジは指を回す

審:ファールだ


○○:ふぅーーーーー

拓:あんな無茶な振り方で合わせただけであそこまで飛ばすか…

焦るな俺…

最善の策を練ろ!


シューーーーーーーーーーー


バシッ

審:ボール

実況:流石に1球外しましたね

次が4球目

○○:はぁ…

んぁらっ!

ジュッーーーーーーーー

ギュイン

ガギッ

審:ファール

ジャッジ:動く…

実況:両者、激しい火花が散っております
打たせてなるものかと抑えられてたまるものかと
甲子園にいる全員、いやこれを見ている人たちも含めた全員がこの結果の行く先を見届けるため、固唾を飲んで見守っています

○○:ンァ!

ジャッジ:ウァ!!

審:ファール

2人:はぁ…はぁ…はぁ…


観客:なんて勝負だよ
この2人だけ別世界にいるみたいだ…


そして9球目


○○:うぁらぁあああああああーーーーー

ジャッジ:がぁああーーーーーー


ガッシャァン!!!!!!!!


パチパチパチパチ👏


実況:観客たちからも拍手が生まれます


○○:楽しいな…

ジャッジ:あぁ…

そして遂に決着がつく…

この10球にも及ぶ両者の死闘はのちに白球の記憶として後世に語り継がれた


○○:ジャッジ…これが最後だ…

どっちが上なのか…

ジャッジ:オーケー…


拓:最後は…

○○:🙂‍↔️

拓:!?
じゃあこれか…

○○:🙂‍↔️

拓:!?


○○:生意気なこと考えてすみません。でも最後は

ド真ん中


で真っ向勝負させてください

拓:はぁ…

わーったよ


その代わり最高のボールをよこせよ


○○:フフッ…

ありがとうございます…


ジャッジ:さぁこいよ…

実況:両者笑っているようにも感じます


○○:ラストだ…


ザーッ(脚を高く上げる)


ギュッ(右手の壁)


ドンッ(右足を強く踏み込む)


グググッ(溜めた勢いを最後)


指先へ


ココ!!!!!!



最高のボールをあのミットへ


んぁらぁああああああああああああああ


シュッーーーーーーーーーーーーーーーー




ジャッジ:Thank you for the best game.(最高の試合をありがとう)
Thank you,○○.(○○、ありがとう)



〇〇・ジャッジ:

うぉおあああああああああ





ガッジュッ




○○:ここまで色々あったなぁ…

最初、麻衣さんにスカウトされて、体験入部で御幸先輩に初めて捕ってもらい、雷道高校に入学して間もなく監督にはいらないとまで言われたな
そして紅白戦でデビューして何もわからない中ユニフォームを貰い、試合に出場、そこから甲子園までケガをして、去年の甲子園はサヨナラホームランを打たれて負けた
そこからエースになるために努力したけどまたケガ。
そのあと二重人格であることがわかったんだっけ?
そこからアメリカ…今は甲子園…

あれ?史緒里に告白して付き合ったのはいつだっけ…

もう何年だ?あのスカウトから考えたらもう2年か…
長いようであっという間だった…

濃ゆくて楽しい人生だった

お父さん、お母さん…17年間…


ありがとう…


親不孝の息子でごめんなさい…


ズッバァーーーーーーーーーン


実況:空振り三振ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


😊


バタッ…

To be continued…

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