遅延測定器で"業務用"鉄拳7、VFe-sports/VF5FSの遅延を計測する
はじめに
トライアングル・サービスさんのユニバーサル遅延測定器を使っての遅延測定シリーズです。今回は業務用の鉄拳7 (鉄拳7 FATED RETRIBUTION ROUND 2)と、おなじく業務用のVirtua Fighter e-sports/Virtua Fighter5 Final Showdown、その他いくつかの業務用ゲームについて遅延を測定してきました。
この測定方法ではコンパネを開く必要があるため、ゲームセンターに相談を持ち込み、ご協力いただきました。対応してくださった店員さんに深く感謝いたします。
注意事項
あくまで自分の調査結果なので、機材などによって異なる結果が出る可能性も高いです。また気をつけてはいますが、何らかのミスがあったりする可能性も否定できません。ご了承ください。
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家庭用鉄拳7(PS4、Steam)の結果です。機材セッティングの詳細などもこちらを参照してください。
計測したゲーム
鉄拳7 FATED RETRIBUTION ROUND 2
Virtua Fighter5 Final Showdown(VF5FS)
Virtua Fighter e-sports (VFes) ※アーケード版
(参考値)ケツイ ~絆地獄たち~ ※テストモード
(参考値)テトリス ザ・グランドマスター3 -Terror Instinct- ※テストモード
(参考値)機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 クロスブースト ※テストモード
ゲームタイトルよりは使っている筐体≒ハードウェア(特にI/O)による遅延の差を見たかったということもあり、測定条件は様々です。以下、もろもろ記載していきますが「どの筐体に入っていた時の数値か」という点には注意してください。
結果
結果をまとめると、下記のようになりました。
鉄拳7
Virtua Fighter 5
(参考値)アストロシティ vs ネットシティ
別ゲーム・テストモードでの計測なので、あくまで参考値としてください。
(参考値)機動戦士ガンダムEXVS.2 XB
いわゆる「青ノアール」などと呼ばれている筐体です。
計測風景
持ち込んだ三脚とiPadを使ってこんな感じで撮影しました。
鉄拳7は練習モードのキー履歴表示機能を使用。表示と実入力がズレたりしていないことは確認済みです。
営業の邪魔にもなるので、最初は鉄拳7のみ計測してササッと引き上げる予定だったのですが、店員さんのご厚意で他のゲームも測らせてもらえることになりました。
VFesは左下の入力表示でチェックしようとしたのですが、ボタン部分にアニメーションがついていてどこで入力があったのか分かりづらかったので、結局Pのヒットフレームから逆算しました。家庭用とおなじようなフレームごとのキー履歴表示も出せたりするんですかね? VF5FSには練習モードがついていないので、普通の対戦、Pのヒットフレームからの逆算です。
ケツイはテストモードで計測しました。それまでの計測時とくらべて明らかにレスポンスが良く、「こ、こんなに違うのか……」店員さんと二人でビビり散らかしました。
計測回数はいつも通り10回平均の数値です。やや試行回数が少なめです。
所感
鉄拳7
ざっくり「業務用はPS4版より1F程度遅延が大きい」と言えそうです。Steam版と比べるとかなり差が大きいので、もし「業務用の大会に出るんじゃ!」ということがあったら、業務用か、せめてPS4版で練習しておいた方が良いでしょう。
なお鉄拳7には88セットと呼ばれる限定発売された筐体があり、これには良いディスプレイが使われていて、32インチ液晶モニタに1080pの解像度でそのまま出力できています(通常版は引き延ばして表示)。このためなんらか差があるかもと思っていたのですが、今回の測定結果からすると、ほぼ変わらないようです。
Virtua Fighter e-sports / Virtua Fighter 5 Final Showdown
VF5esについては事前に色々と噂を聞いており、今回調査する意味も大きいかなと思っていました。
※自分自身はほとんどVFシリーズはプレイしないので体感での違いは分かりません
このお店は店内でVFesとVF5FSが同時に稼働しているという珍しいゲーセンで、店員さんもハードウェアまわりに詳しい方だったので測定前に色々聞いたのですが、「VFesとVF5FSでは2Fほど差がある」と言っていました。また今回の測定とは関係ありませんが、「VFesはオンラインマッチングの際にマッチングサーバを必ず経由する仕様になっているのも良くない」とのお話でした。
実際に計測してみると、たしかにVFesよりVF5FSの方が遅延が少なく、2Fほどの差があることが分かりました。
これは極めて短時間にヒット/カウンター確認を繰り返しながらの攻防が続くバーチャファイターのゲーム性を考えると致命的な差でしょう。まずVFesとVF5FSの反復横跳びは現実的ではありませんし、VFesのPS4版と業務用の行ったり来たりもツラいと思います。そもそも6.6F程度の遅延となるとかなり大きい、という見方もあるでしょう。一方、PS4版を一般的なアケコンでプレイしている場合、VF5FSとはあまり差を感じないかもしれません。
店員さんからは「キャサ夫が14F確反をミスっていて目を疑った」などといった話も聞きましたし、2Fも差があるとヒット確認、コンボ、投げ抜け、目押しなどあらゆるところに影響してくるため、かなり厳しそうだなという印象を受けました。
もしこれが筐体由来の問題で、ソフトウェア側で対応できることがないのであれば、解決は難しいかもしれません。ただ、このSEGA最新汎用筐体(ALL.Net P-ras MULTI Ver.3)のどこに問題があるのかはよく分かりません。これは別のオペレーターの方から聞いた話ですが、液晶の応答速度などはべつに悪くないらしく、I/Oに弱点があるのかもしれませんし、ソフト側に問題がある可能性も残っています。このあたりは残念ながらこれ以上のことは分かりそうもありません。
(参考値)アストロシティ vs ネットシティ
アストロシティとネットシティは、どちらもブラウン管筐体ですが、I/Oの規格が異なります。前者はJAMMA、後者はJVS(新JAMMA)です。
※I/OはIN/OUTの略ですが、一般にゲームの場合、コンパネやコントローラなどからの入力や入力制御のことを意味します
見た目的には、入出力部分をハーネスで直接繋いでいたらJAMMA、USBコネクタみたいなので繋いでいたらJVSです(見た目はUSBとおなじだが中身はまったく異なる)。
過渡期の製品は両対応のものがあり、たとえばナムコの基板、SYSTEM12はJAMMA、JVSどちらでも繋ぐことができます。
ただ稼働時期にもよりますが、JAMMAで繋げる筐体なら「じゃあ、それで……」となるので、JVSはあまり使われなかったような気もしますね。その後のナムコの基板、SYSTEM246~256(鉄拳4、5、5DR、ソウルキャリバー2、3など)からはJVSのみで、JAMMA入力しかない筐体に接続するには変換基板が必要となります。
あんまり自信がないのですが、だいたい合っていると思います。過渡期の筐体は両対応のものもあって、サイバーリードシリーズやイーグレット3がそれに当たりますが、両対応と言っても、基本的にJAMMA接続する際には専用の変換基板を挟む必要があると思います。その際、遅延がどんな案配になるのかが分からなかったので、いったんJVS側に分類しています。
さて、JVS規格は、JAMMA規格とくらべてわずかながら入力遅延がある(大きい)ことが一般に知られています。この遅延に関しては格闘ゲーム界隈よりはSTG界隈で問題になることが多く、たとえばCAVEシューなどは最近のタイトルでもほぼJAMMA規格のみの基板で制作されていますが、NAOMI基板のタイトル(斑鳩、式神の城、ギガウイングetc.)は遅延が大きくてストレスだ……といったことが言われます。ただ実際には環境をまたいで同一のSTGタイトルをプレイする機会はほとんどないため、遅延の差を感知できるのはかなり敏感な人に限られるのかな?という気はします。
※ド密着からの接射やきわどい弾避け/切り返しなど、差を感じ得るプレイ状況は存在します
店員さんも「最近、テトリス常連が増えて盛り上がってきているが、アストロシティが足りなくてネットシティでの稼働だから(JVSでの接続になってしまい遅延があって)可哀想だ」と言ってました。実プレイがテストモードよりレスポンスが良いということも考えにくいので、約4.7Fかそれ以上の遅延があるとすれば、せっかくのブラウン管筐体なのにちょっと数値が悪いかな、という気はします。実際、常連さんたちもアストロシティ環境との差からストレスを感じているということでした(それでもお客さんはついてましたが)。
「JAMMAとJVSの遅延に差があると言っても、どのくらいなのだろう?」というのは以前から興味があったので今回ちらっと調べた形ですが、正直、今回の結果をもって結論を出すのは困難です。
テストモードと実プレイで差があるのかないのか分かりませんし、異なるタイトルで計測したので、筐体の違いが測れているとも言えません。なんとなく言えるのは、「アストロシティに入れたケツイのテストモードは遅延がくっっそ少ない」「ネットシティに入れたテトリスのテストモードの結果はかなり悪い感じがするので、これはやはりJVSのせいなんじゃないのか?」くらいです。もっとも、これを敷衍すると「遅延においてはどう考えてもアストロシティが最強」という結論にもなるのですが……。
これも後日べつのオペレーターの人と話をしたのですが、結局、同一タイトルでJAMMA vs JVS、実プレイとテストモードでそれぞれ(1タイトルあたり2x2の4通り)計測する必要があるね、という結論に落ち着きました。
またいずれもJAMMA規格であるCAVEのSTG基板でも、CV1000以降(≒虫姫さま以降)のタイトルは若干の入力遅延があるらしく、それ以前のPGMベースの基板(怒首領蜂大往生、ケツイ、エスプガルーダ)よりレスポンスがわずかに悪いらしいです。自分は今回、ケツイの結果をふまえて、自宅環境でエスプガルーダⅡの基板(CV1000-B)を動かして遅延を測定したところ、思っていたより数値が悪く、すこし落ち込んだのですが、それも単に筐体/自宅環境だけの違いではないようです。
今後、機会があれば同一タイトルでのJAMMA/JVSを比較することで、なんとなく差を見極めたいです(それでもタイトルによって異なる可能性が残りますが……)。
※もし調べた方がいらっしゃったら教えてください → Twitter
またCAVEシューのCV1000以前/以降については、今回お邪魔したお店でCV1000の怒首領蜂最大往生がアストロシティで稼働していたので、それを調べさせてもらってPGM基板のケツイと比較すれば、すこし見通しが立ちそうな気がします。
(参考値)機動戦士ガンダムEXVS.2 XB
あくまでテストモードでの計測なので、あまりハッキリしたことは言えません。鉄拳7が7F前後だったことを考えると、青ノアールだからなのか、EXVSのソフトだからなのか、1Fほど遅延が少なくて良好なのかもしれません(断言はできません)。
今後の予定
最近忙しくしておりまして、前回記事に書いた予定やリクエストいただいた垂直同期での計測など、全然消化できていないのですが、少しずつ進めていきたいと思います……。
とりあえずBrook UFBのアケコンを制作したので、リフレッシュレートごとの比較からでしょうか。
なお自宅の基板環境についてもまとめるつもりで、その際、遅延もあれこれ調べる予定をしています。
今回は以上となります。お疲れ様でした。