パヤとバーシーのほんとうにあった怖い話
*このお話は、Stand FM 8/31配信のパヤとバーシーのほんとうにあった怖い話で音声で聞くことができます。https://stand.fm/episodes/66d2baa2656588d66424a58f
人口800人の村で誘拐事件が起きました。
私(バーシー)の住む村は、街から車で20分近く深い山の峠を越えた盆地にある、小さな村です。
ある日、私が小学校低学年の頃、隣の家に住む女の子と近くのお菓子を買いに行こうと、100円玉を握りしめ、歩いてうちから20分くらいにあるスーパーに向かいました。
スーパーの前についたとき、入り口付近で、男性が大きな声で何かを叫んでいました。彼は歯のない痩せ型の男性でボロボロの服とボロボロの靴を履いていました。
その男は、私たちを見つけると、大声で私たちを呼びました!
おおおおい、こっちに来い!💢💢💢
この人が犯人です。さて、この人は誰だったのでしょう。
A 村で有名な精神疾患の男
B 全く縁もゆかりもない、愉快犯
私たちは怖くて、動けないでいると、再度呼ばれます。
おまえだよっっぉぉぉ!💢💢💢💢
断れない勢いで叫ばれ、男に近づくと、お前ら俺についてこい!と呂律の回らない声で怒鳴られました。
スーパーの中には店員のおばちゃんがいて、あと30cmというほどのところでした。
その時、周りには誰もいませんでした。
私たちは近くにある使われていない小屋に連れて行かれました。
中に入ると、なんとクラスメイトの女の子れいこちゃんが泣いて座っていました。
私はその時にピンと気づきました。
あぁレイコちゃんも捕まってしまったのだなと。
冷たいコンクリートの土間にある部屋の隅に座らせられた私たち子供が3人と、犯人の男。
電気もない暗闇で男は酒を飲みながらブツブツと何かを言っていたと思います。
しかし、私は気づきました。
入り口が木の横開きの扉で、少し隙間が空いていたんです。
そこをたまたま、運悪く通りかかった男が、何を思ったのか、隙間から覗いてきたんです。
クラスメイトの男子、かっちゃんでした。
その後、かっちゃんがとった行動は?
A 警察を呼んでくれた
B 一緒に捕まった
かっちゃんはバーシーのことが大好きな男の子で、たまたまこの小屋のすぐそばに家があったので、自転車でフラフラしていたようです。
犯人はそれに気付き、また声を荒げました!
おおおい!お前、何やっとんじゃ!こっちに来い!!
いつからかっちゃんが私たちの存在に気づいていたのかわからないけれど、もしかしたら連れ去られるところを目撃していたのかもしれません。
一緒に捕まることになったかっちゃんと、レイコちゃんとみっことわたし、犯人と。
どのくらいの時間そこにいたのか覚えていないのですが、
突然、犯人が、かっちゃんに向かって怒鳴りました。
酒を買ってこい!!もしくは家から焼酎もってこい!!!
かっちゃんは、言われた通り、小屋から出て行きました。
しかし、かっちゃんはその後、いつまで経っても帰ってきませんでした。
帰ってこないかっちゃんに大激昂した犯人
酒の瓶などを床に投げつけていたと思います。
外が暗くなり始めた頃、
友達のレイコちゃんが犯人に手を引かれ奥へ連れて行かれました。
幼心にも、殺されるかも!と感じた私は、
みっこに小さな声で伝えました。
3.2.1 で、逃げよう!
そして、私たちは犯人がレイコちゃんに気を取られている間に、私たちは、3.2.1 で駆け出しました。
重い木の扉をふたりでひいて。
私たちは、小屋を出た瞬間走り出しました。
こっちだ!と私がみっこを誘導して、山の中へ続く道を無我夢中で走り続けました。
扉の音にきづいた犯人は、かっちゃんが来た時に置いて行った自転車に乗って、猛スピードで私たちを追いかけてきました。
私たちが走っていたのは、山の中の50cm獣道(獣が歩いてできた道、片方は崖)。
みっこと二人で声も出ない恐怖と共に、泣きながら走り続けました。
わずか50cmほどの獣道では、酔っぱらった犯人はスピードが出せず、次第に失速していきました。それでも私たちはスピードを緩めることなく、後ろを振り返ることなく走り続けました。
走って走って走って、
家の近くまでいったときに、姉の姿が見えました。
帰りが遅い私たちを母や姉たちが心配して探しにきてくれていました。
姉の姿をみた、私たちは、安堵で大声で泣きました。
そして、はやく小屋の中にいる、レイコちゃんを助けて欲しいとお願いしました。
警察が動き、いつも静かだった村はパトカーが何台も来て、騒然としました。
その後の話によると、れいこちゃんも無事救出されたようですが、何日も学校には来なかったと記憶しています。
後日、新聞に載った話によると、れいこちゃんは奥の部屋でお尻に注射をされたようです。
成分がなんだったのかは昔の記憶なので、覚えていないのですが、彼女は今も元気に過ごしているので大事には至らなかったのだと思います。
その後犯人は、精神疾患を理由に逮捕はされなかったものの、精神病院的なところに収容されたのか、しばらくの間姿を見ることはありませんでした。
それから20年後くらい経った頃、私が実家に帰省した時に、母から衝撃的な話を聞きました。
彼が村と町をつなぐ峠で車に轢かれて亡くなった
その時、私は、ようやく長い呪縛から解放された気がしました。
峠には満開の桜が咲き乱れ、トンネルをつくっていました。